そうだわ。誰にもすまないなんて思わない。 世の中には、星の数ほど人の出会いがあるというが、
これは、そのなかの、ほんのひとつの、些細な話である。
男は毎晩飲み歩いていた。
自暴自棄になっていたのかもしれない。
やりたいことが判らずに、この世には存在しない地図の上を彷徨っているようだった。
次から次へと場所を換え、あらゆる酒を浴びるほど飲んだ。
見栄っ張りのその男は、自分は普通ですよ、という顔をしつつも、
毎日、朝まで飲み歩き続けた。
女は忙しい毎日を送っていた。
家のことから、店のことまで、その仕事は本当に多岐にわたり、
休む間もないほどだった。
一人でジャズバーを経営していたが、酒のまったく飲めない女だった。
唯一飲める酒は、カシスウーロン。それも、カシスの量はかなり控えめだ。
男は、そんなカシスウーロンしか飲めない女が、なぜか気になった。
いつも店を換えながら飲む男が、珍しく1つの店に通い続けた。
女が気になったからだ。
女は、気品があり、 実直で、誠実な人柄だった。
星の数ほど店があるというのに、
男はそのジャズバーに一年間通った。
女に惹かれていたからだ。
言葉は必要なかった。
ただ、女が酒を作る姿をみていればよかった。
そんな二人だったが、
少しずつ会話を重ね、お互いの性格がわかってきた。
男は直情型で、自分の思っていることを憶測もなく相手に言う。
女は堅実で小心者だが、肝っ玉は据わっていた。
いつだったか、男が柄の悪い酔っ払いに絡まれたときなどは、
華奢な体の、細い腕をいっぱいに伸ばして男をかばった。
「殴るなら私を殴りなさい」
男は自分の思いを女に告げ、
女は、自分にはどうすることもできないと言った。
わかりきった返答だったが、男はそれで満足だった。
出逢えただけでも幸福だったからだ。
自分の人生には違ったシナリオもあったはずだ。
それでも女に出逢うことができた。
それだけでありがたかった。
自分は女にいろいろ救われた。
実際、それは事実だった。
男は自暴自棄になるのを止めた。
日ごとに膨らむ女への想いを、
男はそう思うことによって抑え込もうと決めた。
そして、それは苦痛な作業ではなかった。
今まで通り、酒を作る姿を眺めていよう。
願わくば、エピソードの詰まった白い服を着ながら、カクテルを作ってくれ。
願わくば、一人で、ジャズをBGMに、とびっきりのバーボンを作ってくれ。
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音楽を聞いていたら、何とな〜く若いころを思い出しました。
で、今度はサイモン&ガーファンクルの卒業のテーマを聞きたくなりました。
人の心は、繋がっているなぁ。。。。
台風は大丈夫でしたか?
秋になったので、さんまを食べて下さい(笑)
2011/9/5(月) 午後 9:12
gookoさん
卒業、懐かしいですねぇ。最後のシーンはいつ見ても心にグッときます。
台風はしぶとかったですね。こんなに動きの遅い台風って久々な気がします。
僕は、集中ゲリラ豪雨に遭ったくらいですかね。。
gookoさんの家のほうは大丈夫でしたか?
ちなみに、先週末にはさんまの塩焼き、昨日はさんま刺を食べましたよ^^
2011/9/6(火) 午後 11:55 [ npon0124 ]