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何のための導入か意味不明、納税者不在のグローバルホーク --- 清谷 信一 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180802-00010006-agora-soci “無人偵察機運用へ新部隊創設…陸海空自共同で(読売新聞)(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20180730-OYT1T50052.html) 政府は、2021年度から導入する無人偵察機「グローバルホーク」について、陸海空の3自衛隊で共同運用する方針を固めた。150人規模の共同部隊を創設し、中国や北朝鮮の軍事動向の監視などに活用する。今年末に策定する次期中期防衛力整備計画(19〜23年度)に明記する方針だ。” 納税者を馬鹿にした話です。 既に何年も前に調達を決定し予算化しているのに、今になっての運用部隊決定です。 ぼくは中谷大臣の時代だったと思いますが、予算要求時にどこの部隊でグローバルホークを運用するか、何機導入するか、大臣や予算担当者に何度か質問しましたが、答えは「導入してから考えます」でした。 つまり、何のために、どこの部隊が、どの程度の規模の部隊を運用するか決めずに予算を取ったわけです。 これは導入自体=アメリカ様に貢ぐことが目的だったと言われても仕方がないでしょう。 違うというのであれば防衛省、自衛隊は部隊の運用構想も軍事常識もないシロウトの集団だったということになります。 そういう連中が百億、千億円単位の税金を浪費しています。 そもそも何のための導入かも防衛省は説明していません北朝鮮の監視なのか、南西諸島海域の監視なのもわからない。仮に南西諸島であれば、三沢での運用であれば3機では週に数回、該当空域滞空は数時間程度です。 であれば最終的に何機必要か。例えば南西諸島海域の監視では12機が必要で、当面三機で運用を開始し、最終的には202X年に全機を揃えて運用するというプランを立てて、納税者と国会に提示し、その上で初年度の予算が認めあれるべきです。 またなんで三沢なのか。南西諸島がターゲットであればせめて九州に配備すれば、随分該当空域での滞空時間が延びたはずです。 またなんでグローバルホークなのか、プレデターと比較をしたとは言うが、グローバルホークの海洋型であるトライトンとの比較は言及されていません。また調査費用は殆ど無く、形だけの調査でお茶を濁しています。 ところがそのような説明は無く、なし崩し的に導入決定されて、多額の税金が既に投入されました。 要は「首相官邸の最高レベル」思いつきを防衛省に押しつけただけでしょう。かつてドイツ第三帝国で自称天才のちょび髭の総統閣下が、国防軍にあれこれ思いつきを押しつけたのと同じです。違うのはその目的が宗主国のご機嫌伺いのためであり、尚更問題です。 対してオーストリアはMQ-4Cトライトンを導入します。 “豪州がトライトン高高度無人機を採用(航空新聞)(http://www.jwing.net/news/2798) オーストラリア国防省は6月26日、ノースロップ・グラマン製「トライトン」高高度滞空無人機システムの調達計画を公式に発表した。トライトンは海洋情報収集・探査・偵察(ISR)のための自動化された無人航空機システムである。オーストラリアは世界でも有数のEEZ(経済専管水域)を保有する。ノースロップ・グラマンでは、トライトンを導入することで同国は未曾有の海洋状況認識(Maritime Domain Awarness)能力を持つことになるとしている。 なお、トライトンの運用はオーストラリア空軍が担当する。” 外国の記事では金額やさらなる詳細が紹介されています。 “Australia to buy 6 US-made Triton drones for $5.1 billion(The Seattle Times) ustralia has bought the first of six U.S.-manufactured long-range drones that will cost 6.9 billion Australian dollars ($5.1 billion) and significantly increase the nation’s military surveillance and reconnaissance capabilities, a government minister said Tuesday. The first MQ-4C Triton was purchased from Northrop Grumman for AU$1.4 billion ($1 billion), Defense Industry Minister Christopher Pyne told Parliament. Australia’s most important contributions to “Five Eyes” ー an intelligence gathering network that includes the United States, Britain, Canada and New Zealand ー were reconnaissance and surveillance over Southeast Asia and Antarctica, as well as the Indian and Pacific oceans. The Tritons will operate with 12 manned P-8 Poseidon surveillance planes that are replacing the aging P-3 Orion aircraft, he said.” JDW(ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー)の7月4日号のAustralia to acquire six MQ-4C Traiton UAVsという記事もあります。 ニュージーランドは哨戒機、ポセイドンを補完するために、6機のトライトンを約5600億円で導入、戦力化します。これは同国のエアー7000というプログラム一つで、オーストリアは19機のAP-3Cオライオンを12機のP-8Aポセインドンで更新します。オライオン2023年に全機リタイア予定です。ポセイドンは2,016年から調達が開始され、既に7機が調達されています。12機のポセインドンは2022年には完全戦力化される予定です。 最初の機体と運用施設の建設には約1200億円が見込まれています。 JDWに掲載された豪国防相のコメントによれば、トライトンはポセイドンを補完し、長距離のISRを担当し、また対潜、水上攻撃能力を強化する、とあります。 運用は空軍が担当し、エジンバラ基地で運用されます。 我が国と比べてどうでしょうか。 オーストリアは包括的なビジョンと調達計画のもと、広域海洋監視、哨戒機の補完という目的を明確にしております。このためオライオンから大幅にポセイドンの機数も減らしています。 またトライトンの調達機数、戦力化完了の次期も発表になっています。 対して我が国では現用のP−3Cを何機のP−1で更新するのか、政府も国会も知らずにP-1の調達が開始され、調達がいつ終わるか分からずに、遅れが生じて本来不要だったP-3C延命で余計な費用をかけています。 そしてご案内のようにグローバルホークを何のために、どのような目的で、何機調達して、総予算もわからず、しかも調達が始まってからかなりたった今になって、運用部隊をきめるといいます。 まったく自衛隊の全体戦力整備も考えず、導入ありきです。 果たしてこれがプロの仕事でしょうか。 これまたご案内の通りですが、グローバルホーク導入はまともな調査もされずに、官邸の思いつきで行われました。 恐らくは壮大な無駄使いとなるでしょう。当時防衛省では南西諸島用であればヘロンやプレデタークラスの機体に自国製のセンサーを搭載してより安価に、海上監視を行うという考え型もありました。 ところがそんな物をすっ飛ばして、まるでナチス第三帝国のような「偉大な主導者」の思いつきで、必要とされる手続きを端折ってグローバルホークを導入しました。 果たしてこれが民主国家のあるべき姿でしょうか。ぼくは大変疑問に思います。 Japan in Depth. に以下の記事を寄稿しました。 コマツの新型“8輪装甲車”差戻し(https://japan-indepth.jp/?p=41293) ■本日の市ヶ谷の噂■ 空自は救難ヘリ、UH-60Jの空中給油のため既存のC-130Hに給油機能を付加したが、給油装置の故障ばかりで殆ど使いものにならず、遠距離の海上で遭難事故が起きてもUH-60Jは救助に使えないという間抜けな状態になっているとの噂。 編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年7月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」(http://kiyotani.at.webry.info/)をご覧ください。 清谷 信一 海上監視が主任務としてはじめっからトライトンの導入を決めれば、海自主導になるから縄張りで話が進んだんだろうさww、P-3後継機数?そんな話をしてみろ、罪務症が削減話をやり始めるのは目に見えているだろう? |
国防論
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<海上自衛隊>最新鋭イージス艦「まや」進水 8隻態勢に https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180730-00000068-mai-soci 海上自衛隊の7隻目となるイージス艦(約8200トン)の進水式が30日、横浜市磯子区であり、「まや」と命名された。建造時から弾道ミサイル防衛(BMD)能力を持つ最新鋭艦で、装備などを取り付けた後の2020年3月に就役予定。21年に就役する建造中の同型艦と合わせ、海自のイージス艦は8隻態勢になる。 新イージス艦は全長170メートル、幅21メートルで、建造費は約1680億円。機関はガスタービンと電動モーターのハイブリッド方式で、敵ミサイルなどの位置情報を味方同士で共有する共同交戦能力などを備える。日米で共同開発中の弾道ミサイル用迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」も発射できる。 海自の歴代イージス艦は艦名に山の名前が付けられており、今回は神戸市の六甲山地にある摩耶山から取られた。これまでの6隻のうち、4隻はすでにBMD能力を持つよう改修されており、残る2隻も来年までに改修が終わる見込み。【前谷宏】 |
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自衛隊にも「軍法会議」が必要なこれだけの理由 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180529-00171103-diamond-soci 軍隊を持つ国であれば、当然のようにあるのが「軍法会議」。しかし憲法上、「軍を持たない」ことになっている日本の自衛隊には存在しない。そもそも軍法会議とは何なのか。現在の日本に軍法会議は必要ではないのか。著作『軍法会議のない「軍隊」』(慶應義塾大学出版会)がある、慶應義塾大学名誉教授の霞信彦氏に聞いた。(清談社 福田晃広) ● 戦闘に巻き込まれた自衛隊員に 殺人罪が適用される!? 「軍隊ではない」と定義されているがゆえに「軍法会議」を持たない日本の自衛隊は、世界的に見れば極めて“異常”な存在だ。自衛隊は、戦闘に巻き込まれる可能性がある海外に派遣されることもあるし、日本で有事が起きた際には国を守るために戦うことになるであろう組織。つまり、自衛隊は憲法上「軍隊ではない」が、実際に果たす機能としては「軍隊」なのだ。 自衛隊を律する法律として「自衛隊法」があるものの、憲法第76条第2項によって特別裁判所の設置が禁じられているため、裁判自体は一般の裁判所で行われている。 だが、軍法会議を含めた軍司法制度がないことによって、実はさまざまな不具合が生じる可能性があるという。まず懸念すべきなのは、海外派遣された自衛隊員が戦闘に巻き込まれ、民間人を射殺してしまったケースだと、霞氏は警鐘を鳴らす。 「軍司法制度がない現状では、もし自衛隊が銃を取って戦わざるを得なくなり、万が一、民間人を射殺してしまった場合、その自衛官をどう裁くのか、必ず議論になるでしょう。ある元軍人は、刑法第199条『人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する』が適用されて裁かれるほかないといいます」(霞氏、以下同) また、軍司法制度がないことで、本来の目的である自衛隊内の規律の維持にも悪影響がある。 「戦前の日本の軍刑法では、戦時における敵前逃亡は最高刑で死刑でした。しかし、現在の自衛隊法では『7年以上の懲役または禁錮』とかなり罪が軽くなっています。これはなぜかといえば、そもそも自衛隊法では戦闘行為を想定しておらず、あくまでも国家公務員としての自衛官の職責が果たされたかどうかが問われているわけなので、軍刑法と制定意義がまったく違うからなのです」 ● 軍法会議は なぜ必要なのか? 戦時の敵前逃亡が厳罰に処されないのであれば、規律が徹底されているとは言い難いだろう。また、自衛隊は、もともと戦うことを前提としていないため、仮に北朝鮮などと交戦状態になった場合、すべてが「超法規的措置」とされてしまう恐れもあるという。 そもそも軍法会議とは「軍刑法を適用して主に自国軍人を裁く法廷」のこと。日本に陸軍裁判所、海軍裁判所という、いわゆる軍法会議が初めて設置されたのは、建軍間もない1872年(明治5年)だが、敗戦後、日本軍の解体とともに、1946年(昭和21年)に廃止されて現在に至っている。 軍刑法は「一般の司法から独立して、軍内部の犯罪などを裁く法律」を指す。霞氏によれば、軍刑法の目的は大きく2つあるという。 「まずは軍隊そのものの規律を正すこと。そのため、一般の刑法よりも厳しく罰せられます。そうでなければ、国防を担う軍隊に対する国民の信頼も損なわれ、存在意義も失われるからです。次に、軍人が国民に対して銃を向けるといった、一般の刑法で想定していない事態を裁く、いわばストッパーの役目があります」 軍法会議を設置するには軍刑法に加えて、軍法会議法という法律も必要になる。 「軍刑法、軍法会議法、そして軍所属の法曹の存在。これらをまとめて、軍司法制度といいますが、軍法会議を設置しても、車の両輪の関係ともいえる軍刑法、軍法会議法がなければ機能しません。そのためこの3つの制度が同時に動くように進めなければいけないのです」 通常の司法制度にたとえると、まず刑法がある。次に、刑法によって定められた犯罪を犯したと疑わしき人間は刑事裁判にかけられる。その裁判の手続きは刑事訴訟法に基づいて行われている。この一連の流れを軍に対しても適用するというわけだ。 軍隊を持つ国では、一般の司法制度と独立した形で、特別な軍司法制度が存在しているのが決して珍しくはない。 ● 軍法会議を制定しようとすれば 憲法を2ヵ所も改正しなければならない 自衛隊は、諸外国から見れば明らかに「軍隊」である。ゆえに、軍司法制度を持たなければ、いろいろと不都合があるのだが、日本でも軍司法制度を制定しようとすれば、なんと憲法を2ヵ所も改正しなければならないのだという。 「憲法76条2項に特別裁判所の設置を禁じている条文があります。特別裁判所とは、一般の司法から独立した裁判所を指し、軍隊独自の司法権を行使する目的である軍法会議も該当します。そのため、憲法76条2項も改正しなければ整合性が取れませんので、解決しなければならない課題は、戦力不保持をうたう憲法9条2項だけではないのです」 現在の日本では、海上での事故を専門に扱う「海難審判所」や、公正かつ自由な企業間競争を促進する「公正取引委員会」など、高度な専門的知識が不可欠な分野に関しては、特別裁判所的な行政機関が存在している。 一部の専門家は、このような先例にならって軍法会議に類する機関をつくり、最終的な判断を一般の司法に委ねるという制度をつくるという案を提唱しているが、霞氏は懐疑的だ。 「もし仮に日本で軍法会議を設置するのであれば、まず憲法9条2項を改正して自衛隊を軍隊と位置づけた上で、憲法76条2項の改正が必要でしょう」 非常にハードルが高い憲法改正ではあるが、今のまま「自衛隊は軍隊ではない」とのタテマエを通すことによる弊害は大きい。自衛隊は「軍隊そのもの」と言っていい状況である以上、実態に即した制度づくりを真剣に議論すべきである。 |
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防衛費2%提言 周辺脅威に高額装備で対応 政府に転換促す https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180525-00000054-san-pol 防衛大綱への自民党提言には、1機100億円以上とされるF35Bや、多用途運用母艦など多くの高額装備品が並び、防衛費の目標を「国内総生産(GDP)比2%」と明記した。現在の防衛費は約5兆円で、GDP比は1%水準で推移している。2%となれば10兆円規模となり、党国防幹部会では「現実的ではない」との慎重論も出たが、最終的に周辺の安全保障情勢の厳しさを考慮した。 中国は30年間で国防費を50倍以上に増やし、国産空母や高いステルス性能を持つ第5世代戦闘機の開発などに血道を上げる。武装した公船による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での領海侵犯も相次ぎ、日本にとって重要なシーレーン(海上交通路)である南シナ海では軍事的プレゼンスを一方的に高めている。 北朝鮮は米朝首脳会談の中止を受け、一時的に停止していた核・ミサイル開発について、いつ強硬路線に回帰してもおかしくない。 北方領土の軍備増強を進めるロシアも23日、日本の領空まで約4キロの空域で哨戒機を飛行させ、特異な動きを見せた。 高まる脅威に対処し得る相応の防衛力を整備するためには、従来の延長線上での予算措置では間に合わないのが実情だ。厳しい財政事情を承知の上で、自民党があえて提言に「対GDP比2%」を明記したのは、政府に大胆な方向転換を促すためで、提言のまとめ役を務めた中谷元・元防衛相や若宮健嗣前防衛副大臣らが主導した。 安倍晋三政権は防衛費を毎年増額させているが、GDP比1%の枠は突破していない。主要国と比べ日本の防衛費のGDP比は低水準で、そもそも安全保障環境を考慮せずに「1%枠」にこだわる合理的な根拠はない。次期防衛大綱は過去のしがらみから脱却する好機となり得る。(石鍋圭) 別表の数量規制自体が防衛の足かせになっている。真っ先に見直すべきは別表も数量規制。そして、次が割高になる単年度ごとの調達。一括で5年10年の長期計画で一括購入しなよ。そうすれば装備単価だって下げられるよ。そうした改革をやって足りなければ、増やせばいい。そして、本当に今なのが足りないのかの精査も必要。単なるお買い物リストの風呂敷を広げるだけなら、1%枠撤廃などやらなくて良い |
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「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180328-00052667-jbpressz-pol 2017年末から、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」級を、F-35B戦闘機を搭載可能な「空母」として改修する話が相次いで報道されている。2018年3月2日の参議院予算委員会では、小野寺五典防衛大臣が「いずも」でF-35Bの運用が可能かどうかを調査していることを明らかにした。 しかし単刀直入に言って、いずもの空母化や空母建造は自衛隊を弱体化しかねない愚策である。以下ではその4つの理由について論じよう。 ■ (1)高額な改修費がかかる 第1の問題点は、高額な改修費である。この点に関して、「Defense News」誌で日本関連記事を数多く執筆していたカイル・ミゾカミ氏が、技術誌「Popular Mechanics」で具体的な論考を行っている。彼の主張は以下のとおりである。 いずも空母化を日本政府が決断した場合、(1)F-35Bの離着陸時の排気ガスの高熱に耐えうるための甲板の耐熱コーティング、(2)艦首の邪魔な近接防御火器システムの撤去、(3)F-35特有の部品管理システムALISの艦船版の組み込み、(4)1隻につき艦載機たるF-35B12機の導入などが必要になる。これらの改造費として、船舶の改修費が5億ドル、F-35Bが14億ドルかかる。 要するに「いずも」「かが」を空母化すれば、約38億ドル(約4000億円)の予算がかかるのである。これは日本の年間防衛費の7.7%に匹敵するコストである。装備品の調達コストで見れば14.6%を占めることになる。しかも、補修パーツ対空ミサイル・誘導爆弾・航空燃料等の積載増加により、艦内のスペースが食われることになり格納能力も低下すると指摘している。 いずもの空母化ですらこれなのだから、一説に言われている「おおすみ」級の後継艦でより本格的な「空母」(実態は強襲揚陸艦に過ぎないが)を建造すれば、コストは柔軟性と余裕に乏しい防衛費をさらに圧迫するだろう ■ (2)政治的効果が見込めない 第2の問題点は、その改修費に見合う政治的効果が見込めないことである。 政治的効果を発揮できないことは、隣国の中国の「遼寧」を見れば分かる。「遼寧」は24機の戦闘機を中心に艦載しているが、これに政治的な影響力があるだろうか。先日も台湾海峡を航行したが、何か具体的な影響をもたらしたのだろうか。我々は「遼寧」を脅威に感じているだろうか? 決してそんなことはない。 なぜか。それは第1に「遼寧」が米空母に比べるとあまりに小型であり、なおかつ中国の空母が「現在」は1隻しか存在しないからである。そして第2に、トータルの武力が劣るからだ。米空母が大きな政治的効果を発揮するのは、単体での巨大さや艦載機数や空母の数の多さもさりながら、その後の米軍の大規模な武力行使の先駆けとなる存在だからだ。だが、中国にはそのいずれもない。タイの空母「チャクリ・ナルエベト」、インドの空母「ヴィクラマーディティヤ」についても同様のことが言える。 日本も同様だ。「いずも」を空母化したところで、F-35Bとはいえせいぜい10機前後と米軍の強襲揚陸艦(ワスプ級は6〜20機搭載可能)以下の艦載機でしかない。しかも「いずも」「かが」のたった2隻である。「おおすみ」級の後継艦を入れても4隻では、常時1〜2隻の展開がやっとだろう。強襲揚陸艦の1隻や2隻に何の政治的効果があるのか。なお、米軍の強襲揚陸艦は世界中を移動しているが、その1隻の動向が注目されることはない。しかも、「いずも」空母化で海自のその他の戦力は予算・人員を吸収され弱体化するので抑止・対処力も低下する。 また、ネット上の一部では、日本の空母が東南アジア諸国との訓練や協力を図れば大きな政治的効果があるという声も聞かれるが、これについても、強襲揚陸艦でしかない“自称”空母である必然はない。政治的影響力を拡大させようとするならば、装備移転や能力構築の方がはるかに効果・効率的(経済成長も見込める)だろう。 その点で日本は中国、韓国の後塵を拝している。中国はタイ、ミャンマー、バングラデッシュなどに兵器を輸出している他、タイとの間では無人機を含む軍需製品の現地生産まで調整が進んでいる。韓国も、トラックや潜水艦をインドネシアに、インドにはK-9自走砲を、フィリピンにはFA-50戦闘機を輸出している。こうした武器輸出や能力構築は、維持整備や教育訓練もセットになっている。そのため、輸出先の軍事組織が輸出元のシステムで何十年も稼働し、教育担当の軍人を配置できるメリットがあるのである。 中国や韓国は既にそうした状況を作り上げつつあるのに、我が国は無縁である。現在はパプアニューギニアの軍楽隊支援、法律等の勉強会の開催、TC-90供与など、きわめてシャビーな活動しか行っていない。しかも、外務省と海保が巡視船をマレー、ベトナム、フィリピン等にODA等により供与していることを考えれば防衛省自衛隊の装備移転の遅れは際立っている。 こうした状況を考えれば、強襲揚陸艦が東南アジア諸国に短期間寄港するより、武器輸出や能力構築を進めた方が、はるかに持続的で高い影響を誇ることができるのは明白である。しかも、日本の経済的な利益にもつながる。つまり、「いずも」「かが」に約4200億円を充てるよりも、その予算を今後10年間の防衛装備品の移転や供与支援に充てる方がよほど効果的だろう。 ■ (3)軍事的効果が乏しい 第3の問題点は、軍事的効果が乏しいということだ。 まず、空母化した「いずも」は戦局が圧倒的に有利でなければ投入できない。例えばフォークランド紛争においてアルゼンチン軍は空母を前線に投入できなかった。あまりにも虎の子過ぎる戦力は活用できないのだ。もし日中紛争時にいずもが撃沈されれば国内外の世論がどうなるか想像してみほしい。もしくは温存しすぎた挙句、戦局が決定的に不利となり、その無策への批判を恐れて戦艦「大和」のように沖縄にでも特攻させるのがオチだろう。 費用対効果の悪さも問題である。ここで比較対象となるのは中国のA2/AD戦力だ。中国は米軍の地域における戦力と来援戦力を叩き潰すための戦力を重点的に整備している。内容は、対艦弾道ミサイル、巡航ミサイル、サイバー攻撃、ゲリラコマンド攻撃、潜水艦戦力等の強化である。 中国の対艦弾道ミサイルDF-21は、1ユニット6〜12億円。それに対していずもは1隻1200億円であり、空母化すれば3300億円である。つまり中国にとっては、いずもにDF-21を225〜550発撃ち込んでもお釣りがくる計算である。たしかにDF-21対艦弾道ミサイルの命中率には議論があるが、大量の発射でカバーできるし、母港に停泊中であれば命中率は問題ではなくなる。そもそも自衛隊はドローン攻撃に対して110番通報しかできない現状では、「いずも」もドローンで一部機能を無力化されかねない。甲板上のF-35Bを破壊されれば目も当てられないことになる。 他方、南西諸島の島々は、下地島をはじめ滑走路(弾道ミサイルを吸引するおとりとしても)として活用できる余地がある。また、民間空港の有事転用の訓練や装備は空自にはほとんどなく、これも改善の余地がある。そして、米軍や自衛隊の保有する空中給油機を使えば、海上基地がなくとも展開可能である。KC-767空中給油機(1機223億円)を増勢する方が効果的であろう。 ■ (4)海自をさらに疲弊させる 第4の問題は海上自衛隊の疲弊を加速化させかねないことだ。 海自ではダメージコントロールを中心に省力化が進まないのに、艦艇を大型化し、艦艇を増勢し、様々な任務を増やした結果、充足率は危機的な状況である。しかも、予算要求上の都合から艦艇不適の人間も艦艇の充足率に含めてしまっており、見かけ上の充足率より実は低くなっている。そして、それはさらなるブラック化、充足率の悪化を招くという悪循環に陥っているのである。そのため近年の一部艦艇では、地方総監部が行うべき事務業務を艦艇でも行うという中世のような勤務が行われている。 このような現状で空母化や空母の導入を行い、海外への展開を増加させるというのは、自衛隊を破滅に追い込むだけである。 ■ 「個別の装備品」議論から脱却せよ そもそも、個別の装備品の導入が最初に議論されるというところに、日本の安全保障論議の欠陥がある。例えば、治水行政を語る際に「このブルドーザーやダムを導入すれば良い」というような議論があるだろうか。医療行政を語る際に「このレントゲン機器を導入すべきだ」といような議論があるだろうか。企業の経営戦略を論じる際に「この工作機械を導入するべきだ」で始まる議論があるだろうか。どの分野の政策議論でも、個別の装備の導入が議論の入口になることはない。ところが防衛分野だけがその種のいきなり手段から議論に入って、目的や目標を後付けで語るか無視するような議論を繰り広げている。要するに空母導入の政治的・軍事的意味を単独で云々すること自体が児戯に等しいのだ。 諸外国では、現在の戦略環境や作戦環境を議論した上で、戦略と作戦構想を設計し、その上でいかなるドクトリンを採用し、それに見合った装備は何かという議論をしている。だが、我が国だけはなぜか個別の議論が必要か否かが最初に出てきてしまう。だが、それは日本の戦略・作戦環境に最適な戦略と作戦構想とその延長のドクトリンを整理・議論した上で行われてしかるべきものである。 不毛ないずも空母化論争は打ち止めにして、そろそろ、兵器評論や論争ではなく、戦争指導も含めた戦争全般に関する議論こそ始めるべきだろう。兵器評論はその後だ。 部谷 直亮 |



