ぬくぬくの小部屋

う〜ん、ブレーキは難しい。

ヒカルの碁

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予定は未定。

一応二次小説に挑戦。
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門脇さんのニヤニヤに耐えかねた俺は、早々に和谷の部屋から退散した。
どうせ、今日の研究会は合コンまでの暇つぶしが目的なんだから、俺が居ても居なくても構わない。
そうかと言って今日は塔矢と打つ日でもない。他にやることも無いから家に帰る事にした。
「お帰りなさい。早かったねヒカル」
台所を覗いたら、声をかけてきたのは母さんではなく、あかりだった。
散々門脇さんに嫁だ嫁だと言われてついつい意識してしまう。
「母さんは?」
台所にはあかりだけで母さんの姿が無い。てか、これじゃまるで・・・
「何?あら、もう帰ってきたの?」
後ろから現れた。
ビックリしているとなぜかクスリと笑われてしまった。
「あ、ヒカル、羊羹食べる?田舎から送ってきたからおすそ分け」
あかりがそう言って俺に羊羹の包みを見せて一緒に座るように勧める。それじゃまるで家族じゃん・・・
「いいよ」
それだけ言って俺は部屋へと向かった。
「じゃあ、後で持って行ってあげるね」
あかりの声が追いかけてきた。なんか、門脇さんの言葉がそのまま現実化してるようで怖くなってきた。
とりあえず部屋で気持ちを落ち着かせようと碁盤の前に座った。
どれくらい経っただろう。棋譜並べをしていたらあかりが部屋へやってきた。
「はい、羊羹とお茶だよ」
お盆に乗せた羊羹とお茶を俺に見せて微笑んでいる。
そんなあかりをまじまじと見てしまう。こいつって俺が好きなの?これがそういう顔なのか?
「何?私の顔に何か付いてる?」
あかりがそういって口の周りやほっぺたを気にしている。
「付いてねぇよ」
そう言って俺はまた棋譜並べに集中する事にした。
一通り棋譜並べが終わって一息つくと目の前にあかりが居た。
「うわ、お前まだ居たのか」
「うん、棋譜並べって勉強になるんでしょ?私も勉強になるかと思って」
そう言ってまた微笑みやがった。
ダメだ、何かダメな気がする。
「ヒカル、顔が赤いよ?」
あかりにそう言われた。自分でも気づいてた、今日はなんだかあかりと居るのが恥ずかしい。
恥ずかしいんだけど、出て行って欲しくも無い。もう、自分でどうしたいのかもわからない。クソ、門脇さんの所為だ。
「別に。それより、棋譜並べを見て勉強になったんなら、一局打ってみようぜ。成果見せてみろよ」
「いいの?うん、打つ打つ」
そんなつもりはなかった。なにがそんなつもりかってよく分からないけど、今日一番のあかりの笑顔を見てしまった。
出来るだけ気付かれないように、俺は平静を装ってあかりに碁笥を渡した。
指導碁を打ち終えて、検討をして。
「やっぱりヒカルは凄いなぁ〜」
といういつものあかりのセリフを聞いた。
「でも、ヒカル、今日は変だよ?具合でも悪いの?」
あかりが顔を近づけてくる。俺は動く事すらできない。ただアタフタするのが精いっぱいだった。
おでこに手を当てるあかり、心配そうにのぞきこむあかり。なんか、やっぱり色々ダメだ。門脇さんの所為であかりを変に意識しちまう。
「何が嫁だよ、嫁じゃねぇし」
「嫁?」
あかりが動きを止めた。声に出していたらしい。
「いや、何でもない、何でもないんだ。門脇さんがさ、ちょっと・・・」
俺は動揺してしまった。聞かれたらまずいことを聞かれた気がして、どうしていいか分からなくなった。
何故かあかりまで顔を真っ赤にして俺を見ている。
「な、何真っ赤になってんだよ。俺が言ったんじゃねぇぞ、俺は合コンに行きたくなかっただけだ。門脇さんが悪いんだからな。あかりの話したら嫁だった。ほら、中学の時にからかうの居たろ、ホント、いやになるよな」
そう言って笑った。
あかりはますます赤くなり、顔を伏せてしまった。泣かれるんじゃないかと焦ったからだろう。
「べ、別に変な事と言った訳じゃないぞ。アイドルよりお前が可愛いとか、お前と打てば心が落ち着くとか、そんなありきたりの事しか言ってねぇぞ、あ、いや、お前の料理は旨いけど、嫌いなもの出すってのは言ったかな・・・」
もう、自分が何を言ってるのかすらわからなかった。
「そんなこと言うから、嫁だって言われるんだよ」
ようやく聞き取れるくらいの声であかりがそう言った。いや、そう聞こえた。
「仕方ねぇだろ、合コンなんてめんどくさいし、そんな時間があったら棋譜並べかお前と打ってる方がよほどましなんだからさ」
チラッとあかりが俺を見る。
「合コン行くより私と居る方が良いの?」
それがどういう意味か、俺にはよく分からなかった。分かっていたらただ逃げたかもしれない。気の利いた言葉なんかかける自信はなったし、なにより、これから自分の言うセリフが告白だなんて俺自身は思いもしなかった。
「そんなの、囲碁も打てるし料理もうまいし、一緒に居るだけで落ち着く奴なんて他に居ねぇもん。わざわざ気を使ってまで他の女と居ようなんて思わなねぇよ。あかりと居る方が良いに決まってんじゃん」
それを聞いたあかりが泣き出してしまった。
俺はどうしていいか分からない、下には母さんが居るからこのまま部屋を飛び出されたら後で何言われるか分かったもんじゃない。
「泣くなって、ほら、えっと・・・」
何を言って良いのか分からず、ただただ狼狽して、そう、気の迷いだと思う。あかりを抱きしめていた。


結論から言うとあかりを怒らせた。これまでで一番怒っていたと思う。
で、なぜかあかりのどこが好きか答えるように強要された。いや、もう意味が分からないですよ、あかりさん。
適当に「笑顔」と言うと喜んでいたけど
「じゃあ、今度会う時までになんで私の笑顔が好きか、ちゃんと説明できるようにしていてね」
と言われた。目が笑っていない。今までで一番の恐怖を覚えた。蛇に睨まれたネズミだっけ?何か恐怖を表す比喩ってあったよな。まさにそれ、悪寒を覚えるとか脂汗を流すとか?ホント、逃げ出したくなるほど怖かった。
数日後、門脇さんにその話をしたら本気で呆れられた。
「夫婦げんかに俺を巻き込むな」
だから、それってどういう意味だよ!!!

おかしい、恋が始まってないじゃなイカ!!!
字数制限がどこまでか分からんのは不便だね

「で、どんな子なんだ?あ、そうだ、まず名前を聞こうか」
門脇さんはニヤニヤとそんなことを聞いて来る。多分、ウソだと思ってる。本気にしてる感じはない。でも、これから言う事に嘘は殆ど無いんだから信じるしかなくなるんだけど。
「あかり」
自信たっぷりにそう答えた。
「あかりちゃんね、で、苗字は?」
ほら、疑いの目だ。どこかでぼろを出すと思ってる。
「藤崎。藤崎あかり」
「藤崎あかりちゃんね」
すらすら答える俺がどこか不審らしい。そのうちボロを出すと思ってるだろう。
「その子、どんな感じの子」
「どんな感じって?」
「アイドルの誰に似てるとか、ああ、さっきの・・・」
そう言って門脇さんが笑った。
「全然似てない、アレより断然かわいいし、アイドル・・・、俺が教えてる連中より可愛いかも・・・、それに囲碁もあいつらより上だぜ」
そう自信たっぷりに言うとびっくりしていた。たぶん、完全に嘘だと思ってたんだろう。でも、あかりは実際に居るし、囲碁だって教えてるアイドル連中より断然上。可愛いかどうかはよく分からないけど、あかりの笑顔がアイドルの営業スマイルより良いのは間違いない。
「マジかよ・・・」
言葉に詰まる門脇さん。これでさすがに信じただろうな。
しばらくうなっていたけど
「アイドルより上手いって、お前、教えてんのか?」
「ああ、教えてるよ。時々だけど打ってやってる。それに、あいつと打つと落ち着くんだよな。だから、ここぞって手合いの前にさ、あかり呼んで打ったりしてる」
ほらほら、実際の話を付け加えてるからもう信じるしかないだろ、門脇さん。
「なるほどな」
門脇さんが納得したように頷いてる。もう、こっちのもんだろ。
「で、その子って料理上手かったりする?」
またよく分からない話をはじめるなぁ〜、まさか、まだ疑ってんのかな?そうか、囲碁の話だけじゃ作り話だと思われても仕方ないかもな。
「結構上手いよ、塔矢に勧められて親に旅行プレゼントしたらさ、癖になったみたいによく出かけてさ、そんな時にあかりが夕飯作ってくれるんだよ。マジ旨いぜ」
ウソはどこにもない。これぞ完璧。
「夕飯作ってくれるなんて羨ましいな、おい。親も知ってんのか?それ」
「ああ、だって、俺が何もできないからって母さんが呼んでんだし」
「おいおい、家族公認かよ」
門脇さんがそう言ってあきれ返ってる。これは完全に信じてる、だってどこにもウソはないし。いや、そうは言ってもあかりに会わせる訳には行けないけど。
「じゃあ、結構なんでも我儘聞いてくれるんだろうな、夕飯はお前の好物ばっかとかさ」
投げやり気味に門脇さんがそう畳み掛けてくる。ここでそうだとか言ったらウソだ。いや、ウソがばれる。
「そんな訳ないじゃん、あかりの奴、『いつもラーメンやハンバーガーばっかりなんだから、たまには野菜も食べなきゃね』とか言ってさ、嫌いなの知っててピ−マンとかカボチャとか出すんだぜ」
これで信じないわけにはいかないんじゃない?ねえ、門脇さん。俺は何もウソ言ってないし。
「そうなのか?てっきりわがまま言わない優し子で、進藤の言う事なら何でも聞くような子だと思ったんだけどなぁ〜」
と、白けてる。
「あかりって人当たりが良いし、友達も多いし、優しいっ評判だけどさ、そんなの外面だって。俺の前じゃ意地っ張りですぐ怒るし、ちょっと嫌味言ったらすぐ泣き出すし、絶対俺の言う事なんか聞かないし。でも、最近、母さんより怖いって思うんだよなぁ〜」
それを聞いて門脇さんが笑い出した。
「進藤、お前、自分で何言ってるか分かってるか?とっくに嘘だってばれてるのによ」
そう言って余計に笑い出した。
「ウソなんかじゃねぇよ、何ならあかりと話してみるか!?」
俺はそう言って携帯を取りだした。
「そのあかりちゃんが居るのは事実だろ。お前の話も殆ど本当の事だと思う。けど、お前自身は自分がその子を好きだって気が付いてないんじゃないか?」
門脇さんの言葉に意表を突かれた。なんでバレてんだ?てか、俺があかりを好き?
「そんなことねぇよ」
俺は強がって見せるけど
「だって、お前の話、好きな子の話ってんじゃなくて、後半なんか、嫁の愚痴になってるぞ。相当付き合い長いんだろう?小学校からずっととか。そりゃあ、そんだけ長く居ると一緒に居るのが当たり前で、好きとか思う暇もないんだろうな」
「でも、話してるお前の顔はその子が好きでたまらないって顔してんだから、こんな面白い話は無いよな」
なんだか見透かされているようで恥ずかしかった。
「別に俺は・・・」
「付き合ってはいないけど嫁感覚ってか?」
門脇さんがそう言って笑った。どこで何を間違ったんだろう。思い返してみてもよく分からない。
「何でそう思うんだよ・・・」
俺はあまりの事に思い余ってそう聞いてしまった。
「なんでって、お前はじめっから自信たっぷり過ぎ。どっかの漫画や小説から名前拾ってきて適当にごまかしてるのかとも思ったけどさ。『あいつと打つと心が落ち着く』って、もろに顔に出てたぞ」
そう言って俺の顔を覗き込んできた。
「何がだよ・・」
俺が耐えかねてそっぽ向くと
「好きで好きでたまらないって。もう、その後の話なんか、完全に嘘をつこうって気も無しに喋ってたろ。呆れかえるくらいの顔して何言ってんだよ、お前。そりゃあ、そんだけ大好きな嫁の手料理は旨いだろうよ」
「だから、あかりは嫁じゃねぇし」
俺がそう突っ込むと、ほらとばかりに
「認めやがった。今までの話は嘘なんだろ?」
俺は黙り込むしかなかった。
「凄いよな、ウソをつくつもりがここまで事実をバラしちまうなんてな。そのあかりって子も進藤が好きでたまらないんだろうけどな」
「そんなのわかんねぇじゃん、ただの友達なんだから」
そう言うと門脇さんは本当にびっくりしていた。
「おい、それ本気か?わざわざ夕飯作ってくれるような嫁を見て好きかどうかわからないのかよ、お前は」
「だから、嫁じゃねぇし、昔からだって」
もう、俺自身、もしかしたらと思っていた。あかりって俺が好きなのかも?
門脇さんもそんな俺を見てニヤニヤしているだけでそれ以上何も言ってこなかった。
1年があっという間だなぁ〜
なかなか書けません。

まだ暑くなる少し前の時間帯、通勤ラッシュは終わって少しゆとりを持って電車に乗れる時間。
俺にとってはこの時間からが活動時間だ。
あれ?そんな時間帯に見つけた後姿。
「あかり?」
振り向く前からそうだという確信はあったんだけど
「ヒカル」
ビックリしたように振り向くあかり。
「お前、学校は?」
時間的に自然と気になる訳だが、そう言うとあかりは一瞬呆れて、そして笑い出した。
「ヒカル、今何月?」
あかりはわざとらしくそんなことをきいて来る。俺だってそのくらいは分かってる。
「バカにすんなよ、8月だろ・・・、あ、夏休みか」
あかりはまた笑い出した。ホント、腹立つなぁ〜
「学校行ってないから夏休みがあるの忘れちゃった?でも、仕方ないよね、ヒカルはそんなの関係なしだもんね」
そう言って、どこかさびしそうに俺を見る。
「ああ、おれは夏休みなんて無いからな、手合いにイベントに研究会・・・」
「頑張ってるね、ヒカル」
人の言葉を半ば遮るようにあかりがそう言った。
「ああ、そりゃ当然」
「今日も研究会?」
あかりがそう聞いてきた。
「ああ、和谷んところ」
「大変だね」
「お前は何やってんの?」
少し話題を変えたくて、あかりに聞いてみた。
「私はお買い物」
どこか寂しそうだった顔に笑顔が戻った。
「そっか、って、俺そろそろいかないと遅れる。またいつでも声かけろよ、指導碁ならいつでも打ってやるから」
うんと笑顔でうなずくあかりをみて俺は駅へと走った。


ギリギリに家を出て、途中であかりと話をしてたんだから遅れるのは当然だ。
だけど、なんだか今日は集まりが悪い。
本田さんと伊角さんが打ってるだけだった。
「よう、進藤」
家主の和谷がニコニコやってきて。
「今日はこれだけ?」
「いや、もう少し来ると思うけど、それよりさ、お前も参加な」
何の話かよく分からない。
「なにが?」
「何も言わずについてくればいいんだって」
和谷はなにかよく分からないが強引にそう誘ってくる。
「はいはい」
そのまま付き合ってもどうしようもなさそうだったので俺は本田さんと伊角さんの対局を観戦する事にした。
しばらくして肩を叩かれた。相手は門脇さんで、俺が振り向くと手招きされた。
「門脇さん?」
対局する二人から離れた場所へ呼ばれた俺は
「お前、合コン来るんだって?珍しいな」
と言う爆弾発言を聞かされた。もちろん、すぐさま和谷を睨めつけた。気付いた和谷はイタズラがばれた子供みたいな顔をしやがった。
「ああ、やっぱり騙されてたか」
それを見た門脇さんも呆れていた。
「でも、なんで来ないんだ?」
「めんどくさいし」
俺はいつものようにそう言った。実際、めんどくさい。
「そりゃあ、アイドルとテレビ出演なさってるような人気者の進藤君には、その辺の女子大生はおめがねに適わないってか?あ、それとも、年上は嫌いか?」
門脇さんはおどけたようにそう言った。
北斗杯の人気が出て今年で3回目、メンバー3人は3大会とも変わらず、もちろん、そんなこともあって俺達3人はテレビや雑誌でも取り上げられている。俺と塔矢はテレビ番組に出演してアイドルグループに囲碁を教えていた。
俺は門脇さんの疑問のどっちでもなかった。ただ、めんどくさい。けど
「そうかも」
そう言って笑ってあげた。するとなぜか真剣に考え始めてしまった。
「なあ、お前、全然そう思ってないだろ。囲碁で頭いっぱいなのは分かるけどさ、あんまりよくないぞ、そういうの。楽しいから一回来てみろって」
前にも言われた。アイドルだと何だかんだと周りに居るから無理だろとか、でも、そもそもそういう事に興味が無いんだけど・・・
「いいって、興味ないし」
和谷だったらそこで呆れて引き下がるんだけど、門脇さんはそうはいかなかった。
「興味が無い?」
ニヤニヤとした顔で俺を見ている。
「この間持って来たのに興味津々だったよな、お前」
そうだった、少し前に門脇さんがDVDを持って来たんだ。特に検討する材料が無い時、奈瀬が居ない時によく持ってきている。たいていは興味を示さないけど、この間はちょっと声があかりに似ていたので見てしまった・・・
でも、あかりに声が似ていたなんてさすがに言えない。
「別にいいだろ」
そう言ってそっぽ向くと、何か得心したように
「ああ、そうか、進藤の好みはああいう子か」
勝手にそう納得して。
「流石に高校生ってのは俺の守備範囲外だが、ああいうタイプが良いなら年上ならなんとかするぞ?」
と言ってきた。
「別に好みじゃないし、合コンなんか行かない」
俺はとにかく突っぱねた。しかし、それをどう受け取ったのか
「なんだ、そっかそっか。別に好きな子が居るってんならワザワザ誘ったりしないから、正直に言ってみろ」
門脇さんは楽しそうにそう言ってきた。
これってもしかしてチャンス?俺はそう思った。ここで好きな子がいる事にしてしまえば今後、合コンに誘われることはないかもしれない。それに、ここであかりの事をしゃべれば、好きってのは嘘でも、あかりは本当に居るんだから、あかりにさえ合わさなければバレる事は絶対にない。
「居るよ。好きな子なら」
「お、正直になったな」
門脇さんはニヤニヤしている。俺も絶対バレない嘘だから自信たっぷりだ。

5月5日

少し早いですが、佐為が消えた日の後日談。

何年振りかに一人の時間を作れた。
佐為が消えて毎年北斗杯があったから、この日一人でいるなんて全然なかった。

今年はとうとう北斗杯の会場が日本を離れ、海外へと進出している。
海外に会場がある。それに、いつまでも俺たちが選手のサポートしてたって、彼らのためにもならない。塔矢のその意見が採用されて、俺は派遣団には入っていない。結局、塔矢は付いて行くことになったけど。
和谷や伊角さんも国内での解説で忙しそうにしてる。

そうして訪れた久しぶりの一人の時間。
昨日はじいちゃん家の碁盤を見に行って、今日は部屋に居る。
都内か、京都か、因島か。そんなことも考えたけど、佐為が消えたのは俺の部屋だから、今日は部屋であの時の棋譜を並べている。

なあ、佐為。お前はこの後どこに打つ気だったんだ?
朝からずっとそればかり考えている。
佐為が居なくなって、俺の並べる棋譜の中に確かに居る事が分かって。
ずっと今日まで前だけを向いてやってきた。
立ち止まることはあっても、こうやって佐為のことを考える事は無かった。
後ろを向くべきじゃないと思ってたから。
でも、あいつが消えた5月5日の今日くらい、そういう日を作ってみたかった。

「ヒカル?」
「なんであかりが居るんだ?」
目を開けて見えたのはあかりだった。
どうやら俺は寝ていたらしい。
「なんでって、連休はずっと居るからいつでも打ってやるって言ったのヒカルだよ」
少し怒った風にあかりがそう言う。
いつそんなことを言ったのか思い出してみたけど、よく分からなかった。あかりと会うのは一か月ぶりくらいな気がするから、その時だろう。
「そうだっけ?」
俺は冗談ぽくそう返してやった。
「もう、覚えてないんでしょ」
あかりがいつ約束したかを言い出す前に、俺は碁盤の石を片づけてあかりの前へ碁笥を差し出してやった。
「打つんだろ。ほら」
何かまだ言いたそうにしてたけど、碁笥を受け取って、いつものように碁盤に石を並べている。
あかりが来ればいつも同じ、こうやって打っている。
「ありがとうございました」
打ち終わって、検討して。
そう、いつもこうやってる。

「ヒカル、なんでヒカルは私なんかと打ってくれるの?」
そんなことを言われたのは初めてだった。
「なんでって・・・」
なぜかはよく分からなかった。
「私なんかと打つより、塔矢君と打った方がヒカルは楽しいでしょ?」
確かに、塔矢と打つ方が楽しいとは思う。でも、そういうんじゃない。よく分からないけど。
「どうしたんだよ、いきなり」
俺はあかりの質問には答えず、質問で返した。
だって、いきなりなぜそんなことをきいて来るのか、その事に戸惑ったから。
「いきなりじゃないよ、私はずっと思ってたよ?なんで私と打ってくれるのかなって」
中学の卒業式での約束。結局俺は果たせていない。
あかりが行った高校に囲碁部はあった。
北斗杯の人気が出て、囲碁に注目が集まった事もあって囲碁部は部員の確保が出来たと聞いた。
でも、俺自身は忙しくて囲碁部へ行くことなんか忘れてたし、あかりも何も言わなかった。
そう言えば、この前あったときはじめてそんな話をしたんだっけ?
その間、あかりとは時々会ってたし、指導碁も打っていた。
いつかの塔矢戦みたいに、余裕を作りたくてあかりを呼んだこともある。
「お前と打ったらピリピリしてたのが落ち着くって、前も言ったろ?」
はじめに言ったのは佐為で、塔矢戦の前に俺が真似をして言った。
あれから俺自身そんな気がしているのは確かだ。確信がある訳じゃないけど。

こういえば何事も無かったかのように終わると思ってた。
でも、今日はそうならなかった。
いや、俺には何が何だかはじめは分からなかった。
あかりは納得できない顔で俺を見て、そして、なぜか赤くなって、そして泣きそうな顔で俺を見ている。
いつもの俺ならここでイライラして怒鳴り散らしてたかもしれない。
でも、俺は疑問に思った。
何でこいつ、ここに居んの?もし、塔矢や和谷だったら見た瞬間に追い出してるかもしれない。
なんで、追い出さずに指導碁なんか打ったんだ?
俺、もしかして「ばかじゃねぇの・・・」

「どうせ私はバカよ!ずっとヒカルを追いかけて、振り向かないのが分かってるのに、それでも追いかけて!!なんで・・・」
そう言って本当に泣き崩れてしまった。
なあ、佐為、お前が今日、あかりを呼んだのか??
そんな気がしてならなかった。佐為は来れない。じゃあ、誰が来たら良いんだろうか?
「お前、ホントにばかだな」
なんて言えばいのか分からない。でも、何か分かった気がした。それが分かったらあかりを抱きしめていた。
「なんで大事な対局前に、どうでもいい奴とわざわざ打つんだよ」
「え?」
あかりがなんとか泣き止んだらしい。
「それじゃあ、ヒカルは私の事どう思ってるの?」
分かった気がしただけで、言葉に出来るほど何かを理解してる訳じゃない。
「どうって、そんなのわけんねえ」
俺は正直にそう答えた。
「わからないの?」
「ああ」
あかりはなにか安心したように問いかけ、
「じゃあ、キスしてみて」
「ハァ?」
「いいから」
そういって目をつぶるあかりを拒否する理由なんかなかった。
ちょっと唇に触れただけの軽いキス。だって、それで良いんだろ?キスって。

あかりはなぜか笑顔で、何かを確信したみたいに
「ヒカルはファーストキス?」
「ああ」
「私は違うよ」
なぜか、笑顔でそんなことを言う。そして
「ファーストキスは、小学校1年のクリスマス会でヒカルとしたキスだもん」
と言って笑った。
「お前な!!」
「ほら、ヒカルは私が好き、私もヒカルが好き」
そう言って笑顔で居るあかりには勝てる気がしない。
「負けました」
俺の完敗。だけど、負けてもなぜか悔しくは無い。ものすごく幸せな気分なのはなぜだろう。

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声優の川上とも子さんが卵巣がんで死去 『ヒカルの碁』主人公役
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110610-00000319-oric-ent
 声優の川上とも子さんが9日午後4時45分、卵巣がんのため都内病院で死去した。41歳だった。所属事務所が10日、公式サイトで「誠に残念ながら薬石効なく急逝いたしました。生前中は皆様に多大な応援を頂き心から感謝申し上げます。ありがとうございました」と発表した。川上さんは3年ほど前から体調を崩していたという。

 川上さんは『少女革命ウテナ』の天上ウテナ役、『ヒカルの碁』の進藤ヒカル役、『遙かなる時空の中で』の元宮あかね役、『ケロロ軍曹』の日向冬樹役などで知られる。


ご冥福をお祈りいたします


川上さんと言えば、ずいぶん色々なアニメでよく見かけましたね。
ヒカル以外の画像ばかりですが、すべて彼女が声を担当したキャラクターです。

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