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「おい!起きろー!!いつまで寝てんだ!!ケイト!!!」
「お父さん!ごめんなさい!!!」
叫ぶと同時に、私はベッドから飛び起きた。
「・・・あれ?」
寝癖だらけの細い髪の毛が、顔に貼りつく。
寝ぼけまなこのまま、私はベッドの上に体を起こしていた。
寝覚め早々、あれ?と言った理由は、至極簡単。
だってそこは、いつもの見慣れた自分の部屋ではなかったから。
ベージュ色だったの部屋の壁は、白い土壁になっている。
花柄のカーテンがかかっていた窓に至っては、カーテンどころか窓ガラスすら入っていない。
壁を四角くくりぬいた形の簡素な窓が、そこにあった。
「・・・おや?」
首を傾げた瞬間に、再び脳天を割る声が、落ちてきた。
「お前はどんだけ寝たら気がすむんだ!もう昼だぞ!」
耳を押さえたまま、私は恨みがましく、その声の主を見上げる。
そこには、怒り心頭の様相を表すビーダが、腕をわなわなと震わせながら怒っていた。
昔から、朝が苦手でなかなか起きられない私の眠りを妨げるのは、常に父親の怒鳴り声だった。
まるで雷と地震が同時にやってきたような怒鳴り声。
反射的に飛び起きると、いつも父親が、ベッドの脇に仁王立ちしていた。
見た瞬間に子供が大泣きするような、鬼のような顔とゴツイ体躯に、『篠崎手芸店』と刺繍されたウサギのエプロンを着た父親だ。
私は小さな頃から、そんな恐ろしい体験を、毎朝してきた。
その怖さに比べたら、他の人間の怒鳴り声など、何ともない。
目の前の人間は、この前突然私の前に現れた、ただの変態おかっぱ男である。
驚いて起きちゃって、損したってものだ。
「・・・、ち、ビーダか」
「・・・、舌打ちするな・・・。」
ビーダの緑色の瞳が、ジロリと、私を根性悪そうに見下ろす。
真っ白な肌に、顎にかかるサラサラのハニーブロンド。
腕組みをするその体は、細くしなやかである。
見た目はウチのお父さんとは全然違うけれど、口の悪さに関しては、似ているところがあるかもしれない。
しかし、身内を擁護するようでなんだけど、ウチのお父さんは、こんなに根性悪じゃない。
口は悪くて恐ろしい形相をしているけれど、段々とさびれていく商店街のことをいつも考えていて心配している。
店の片隅で、あの大きな背中を丸めて、商店街のチラシづくりをしている姿が、私は小さな頃から大好きだったんだ。
ぼんやりとそんなことを思っていたら、ようやく目が覚めてきた。
そう、ここは、私が生まれ育った場所から、遠く遠く、離れた場所なんだ。
はるか海の底の、そのまた底に来てしまった。
四角く切り取られた壁の窓から、明るい光が差し込んでいる。
お父さん、海の底の世界にも、太陽ってあるんだね。
この見知らぬ場所で初めての朝を迎えた私は、ぼんやりと、そんなことを思っていた。
さっきまで見ていた、夢のことなど、すっかり忘れて。
そこは、砂漠のオアシスだった。
海の底を抜けてたどり着いたその場所は、見渡す限りの砂漠が広がっていた。
私たちは、海を抜けてきた船を、その細かな砂に埋めて、歩いた。
そうそう、砂漠の砂がローファーの隙間に入ってきて、歩くのが大変だったんだ。
おまけに、ジリジリと照りつける太陽の熱に、私は着ていた制服のジャケットを脱いで、ひたすら歩いた。
やがて、海の底の大地を照らす太陽が沈み、この場所にも、夜がやってきた。
そこは、暗闇が存在するだけの、世界。
星も、月もない。
決して雲がかかって、曇っているわけじゃない。
まるで不必要なものは排除するかのように、夜空に輝くものは、何一つなかった。
日中は暑すぎたのに、砂漠は、夜になると豹変する。
一気に周りの気温が、下がるのだ。
私は、もう一度ジャケットを着込んで、シェリーがくれたローブを身にまとう。
ずっと歩いてきた疲れのせいで、足は棒のようになり、真っ白だった靴下は、砂で茶色になっていた。
もう、限界。
そんな言葉が頭の中を支配したとき、突然目の前に現れたのが、このオアシスだった。
砂漠の真ん中に、小さな湖がわいている。
それを取り囲むかのように、南国特有の木々が、密生していた。
そしてそこには、人がいた。
この、海の底の世界に住む、人間だ。
おそらく、この砂漠を旅する人たちの休憩所というべき場所なのだろう。
湖を囲んで、今、私が泊まったような簡易な宿が、点在している。
そこには、数人の旅人達が、馬やラクダ、ロバのような家畜に大きな荷物をつんで、身を寄せていた。
宿をとって、ベッドに横たわった瞬間に、私は、意識を失うように眠ってしまった。
長い一日の終わり。
まさか、こんな見知らぬ土地で眠ることになるなんて、思いもしなかった。
普通に学校で一日を過ごして、そして、普通に家に帰って、いつものベッドで眠るんだと思っていた。
でも、そんなことを考える暇もないくらい、昨夜はぐっすりと眠ってしまった。
そして、今。
どうやら、こんなお昼になるまで、眠ってしまったようだ。
我ながら、自分の神経の太さに感心してしまう。
寝ぼけ眼でベッドの上に座ったまま、ぐうぐうとお昼を告げるお腹に手をあてる。
「・・・、お腹減った。」
私の言葉を聞いて、ビーダは頭を抱えると、深い深いため息をついた。
−つづく−
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シリアスな物語なはずなのに、ケイトの言動で和やか〜になるなぁ
ケイトが成人してる設定やったら、間違いなく
「一杯飲みたい」かも?
2009/3/16(月) 午後 11:41 [ - ]
ケイト、そう言えば制服のままだったんだけど、制服が戦闘服になるのかな、セーラー服と機関銃みたい(笑)
2009/3/18(水) 午後 8:14
ねおさん、ありがとうございます!
私の場合、シリアスな物語でもどうしても遊んでしまう傾向にあります・・・(笑)
楽しく読んでいただけたら嬉しいですw
ケイトは、成人したらたぶん、酒豪かな(笑)
2009/3/18(水) 午後 11:57
佐奈さん、ありがとうございます!
そうなんですよ、制服のまんまです。セーラー服と機関銃もいいですね(笑)
でも、着替えさせてあげないと可哀相だし・・・、その土地土地でコスプレさせるのもアリかなと考えてますw
2009/3/19(木) 午前 0:00