銀座と言えば夜の蝶が飛び交う華やかな街。
Clarkは夜の銀座が好きである。
正確に言えば、銀座の端っこにある「クラブM」が好きなのだ。
ここのママとのつきあいはかれこれ9年になろうか?
私が酒びたりだった37歳〜43歳の7年間で100回、いや150回は行っていると思う。
しかし地下生活の間はほとんど行かなかった。
転職も叶い、まぁ自腹で銀座で酒をのめる程度にはなったから、久しぶりに顔を出す
ことにした。
クラブMのドアを開け、鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ〜」とホステスの甘い声が響く。
「こんばんは。トイレを貸してください。おしっこをしたらすぐに帰ります」
「あら、やだ〜、Clarkさんじゃない〜、何バカなこと言ってんの。何しに来たの?」
「何しに来たの」はひどい言い草である。
「だから出すモノ出したら帰るよ」
とくだらないことを言いつつ、独りカウンターに座る。
この不景気だ。ガラガラの店内。ソファーも薦められたが、カウンターに腰かけた。
馴染みのホステスは二人しか残っていない。ほとんど入れ替わって、若返った。
ママが言う。「好みの娘がいたらこっそり教えてね。付けるから」
そう言われたが、誰と指名するわけでもなくユリが隣に座った。
彼女は22歳だという。父親の年齢を聞けば俺といっしょだと言う。
「お父さんと同い年の客じゃあ、君も面白くないね。」
「そんなことないです。でもお父さんよりずっと若い感じがする。なんでかな。」
ボーイが「Clarkさんはいいカラダしていますからねぇ」と口をはさむ。
「おい、冷やかすなよ。でも何もしないとジジイになるからね。
ボクはもう歳を数えるのはやめたのさ。
カラダは鍛えないと腐るし、緩むと男だって垂れるんだよ。女の乳と同じようにね。
君だって、ババアになったら重力に逆らえず垂れるんだよ。」
トレーニングについて色々聞かれたから、手短に話した。
「へそから下の下腹部、太ももから脚全体は階段一段飛ばし昇り降り20分だな」
「へそから上は懸垂と言いたいととこだが、最近は非常階段を裏からぶらさがって
腕でクライミングだね。約2m登って降りるんだよ。もうそれしかやらない。」
人懐っこいユリは私の腕や背中を触りながらこう言った。
「こういうオジサンってあまりいませんよね。私結構好きかも。」
「オトナをからかうなよ。俺のストライクゾーンは25〜35歳。君はまだオコチャマだ。
そうだな。少し鍛えて絞ったら、ご褒美をやろうか。」
と親子ほど年の離れた男女は他愛もない会話を続けるのである。
私は若い娘には必ずこう言うのである。
まず、タバコはやめろ。キスがまずい。女は甘い匂いがいいからね。
睡眠、食事、セックスでストレス解消をするな。トカゲの脳みそに逃げちゃダメだ。
大股でシャキッと歩け。
男は顔じゃない。脳みそと背中を見ろ。
見えないところをちゃんと鍛えている男を探せ。
「ところでClarkさん、ご褒美ってなんですか?ユリ、欲しいなぁ」
「なんだい、君は努力する前にボクに要求するのかい。まだなにも考えてないよ。」
「、、、そうだ。じゃぁ君に下腹部のぜい肉をとる方法を教えてやろうか?
腹筋なんかやったって、ココはゼンゼン落ちないんだぜ!」
「え〜、ほんとですか?教えて、オシエテ欲し〜い!」
「もう教えたさ。階段だよ。階段。」
「股関節を大きく開いて階段を登れば、へそ下の筋肉群が大きく動いて引き締ま
るのさ。平地の歩き、走りじゃ、股関節は60度しか開かないが、一段飛ばし階段
登りをやれば110〜120度は開くだろ、だからここが凹むのさ!」
とすかさず、ユリのへその下をなでてやった。
「このままじゃダメだな。ご褒美はやれんな。ボクのへそ下はぜい肉無いだろ」
「あ〜、ほんとですね。ゼンゼン締まってますね〜、私明日からやります!」
「46歳にもなってカラダ鍛えてアホみたいだろ。
でもね健康と脳みそが人間一番大事なんだよ。
病気になったらカネなんかあってもダメなんだよ。
だから最近は酒もあまり飲まないし、クラブにもめったに来ないのさ!」
ママが突然割り込んできた。
「そんなこと言わないで、またおしっこしたくなったらいつでもトイレを借りに来て
頂戴な。そうそう、久しぶりなんだから、何か一曲歌ってよ!」
ここは銀座のクラブと言っても、リーズナブルな料金で、歌も歌えるのだ。
私はあまりカラオケは好きではないが、今日は歌うことにしよう。
「今、映画やっているだろう。宇宙戦艦ヤマトの歌でも歌って帰るよ。」
Clarkは懐かしい沢田研二のこの曲を歌って、クラブMを後にしたのである。
さらば宇宙戦艦ヤマト - ヤマトより愛をこめて(Kenji Sawada)
5’30”ぐらいからジュリーの歌が始まります♪