2度目の世界大戦の遺産は、 ベルリンの壁の崩壊まで続いた。この遺産は、時間と共に失われていく。そして、それは70年代の若者達には過酷なものとなった。平和を愛し、新たな本物のビジョンを示した 指導者の暗殺と言う不名誉な現実の前に失ったアメリカにとって、遥か遠い東の国で繰り広げられる 南北の戦いは、指導者達との価値観の違いを露骨にした。しかし、世論によりその指導者達に引導を渡し、勝ち取ったその平和には、生存の為の競争という新たな争いのある現実が待っていた。これも、 大戦の遺産だった。そして、ベビブーマー達の新たな価値基準の模索が始まった。あるものはドラッグに価値を見出そうとし、あるものはコミューンを築く事に価値を見出し、あるものは、バイクで旅する事で何かを見つけようとした。そんな時代だった。
ベトナム帰りのトラビスを描いた映画は、多くの若者の共感を得た。狂気と混乱を描いたこの映画は、当時を私達の目の前に見せてくれる。私は、ファッションを通して社会をみる癖があり、走るタクシーの中から映し出されるダウンタウンの光景は、いうまでも無く、混乱と荒廃を感じさせる。そこは、作られてはいないリアルな当時のニューヨークだろう。今、私達はそのファッションを模倣しようとしている。それは、当時へのリスペクトではなく、気分への賛同なのだろう。果たして、当時の若者達 のように私達にはどんな障壁が立ちはだかるのだろうか。奇しくも信頼しきっていた官僚達の私欲の餌食の血税の問題は、本来ならば国家滅亡を意味するものと言える。私達はそんな無秩序な社会で尚も自分の時間を売り、果てしない負の遺産の利息に苦しまねばならない。正に、映画の時代の若者達の心理に陥るに近いものではないだろうか。ファッションは時代の気分を映し出す。正直な若者の気持ちを正にファッションが反映しようとしている。今日の日本は、やっと紙一重で正気を保っている。新たな本物のビジョンを持つ指導者を私達は選ばねばならない気がする。決してあの頃のような混乱や荒廃だけは裂けなければならない。
(2008/03/20)
製作 マイケル・フィリップス|ジュリア・フィリップス
監督 マーティン・スコセッシ
脚本 ポール・シュレイダー
撮影 マイケル・チャップマン
美術 チャールズ・ローゼン
出演
ロバート・デ・ニーロ| ジョディ・フォスター| シビル・シェパード| アルバート・ブルックス| ハーヴェイ・カイテル|レナード・ハリス|ピーター・ボイル|
衣装 ルース・モーリー
音楽 バーナード・ハーマン
amazon DVDのコメント
タクシー運転手のトラビスは、大統領候補の選挙運動員ベッツィに心を惹かれる。だが、デートは失敗。そんな折、トラビスは13歳の売春婦、アイリスと出会い、足を洗うよう説得する。トラビスは使命を感じ、アイリスのいる売春宿に向かったのだが…。
ニューヨークの夜を走る1人のタクシードライバーを主人公に、現代都市に潜む狂気と混乱を描く。ベトナム帰りの青年トラヴィスをロバート・デ・ニーロが演じ、世界の不浄さへのいらだちを見事に表現した。トラビスの強烈な個性は、70年代を代表する屈折したヒーロー像となった。
監督は、 マーティン・スコセッシ。ホームタウンのニューヨークを舞台に、先鋭な人間ドラマを作りあげた。これが遺作となったバーナード・ハーマンの音楽も印象的で、特にトム・スコットのアルトサックスが冴えわたっている。(アルジオン北村)
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