| 12月3日、台湾の台北、高雄の両直轄市を除く23の県と市の首長を選ぶ統一地方選挙の投票が行われた。「台湾独立」志向の与党・民進党は現有10ポストを大きく割り込む6ポストにとどまり大敗した。中国との協調を重視する最大野党・国民党は馬英九・党主席人気に乗り、現有8ポストに大幅に上積みし14県市を制した。2008年総統選の前哨戦と位置づけられた今選挙での国民党大勝を受け、中国は国民党との連携を強め、陳政権に対し圧力を強めることが予想される。(読売新聞) |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
■ SAPIO 9月28日号
| 現在、次期総統に最も近い位置にいると言われる馬英九主席誕生が、台湾、日本にどのような影響を及ぽすのか、台湾総統府国策顧問の金美齢氏に聞いた。 |
親中反日の次期総統有力候補誕生
| 今年7月16日、台湾で中国国民党の主席選挙が党員の直接投票によって行なわれ、馬英九・台北市長が王金平・立法院長に圧勝した。得票数は王氏の得票数14万3000余りに対し、およそ2・6倍の37万5000票。私を含め多くの人が国民党の「若手ホープ」として人気の高い馬氏の勝利自体は予想していたが、ここまで大差がついたのは予想外である。これで馬氏は名実ともに、2008年次期総統選挙の有力候補に躍り出た。 |
| このことは台湾の将来を大きく左右する可能性がある。いや、それだけではない。台湾の、それも一政党の主席選挙ということで日本ではあまり大きく報道されなかったが、東アジア及び東南アジアにおける日本の立場にも大きな影響を及ぼしかねない。私はそのことを強く危惧している。 |
| 馬氏は1950年、香港に生まれ、後に台湾に移住してきた外省人だ。(中略)98年、当時の現職市長だった陳水扁氏を破って台北市長に当選した(現在2期目)。法務部長時代に地方の汚職摘発を行なったことから清廉なイメージがあり、「党改革」「世代交代」といった主張も一般受けしやすい。ジョギングや水泳をする姿を見せて若さをアピールする、といった選挙民向けのパフォーマンスも上手い。しかも、俳優顔負けの二枚目ときている。非の打ち所のない超エリート、大衆のヒーローのように思えるが、実はそれは国民党とメディアが意図して作り上げたものだ。 |
中国人と台湾人の混在する国
| 台湾には2つの国、2つの国民が存在する。中国と台湾、中国人と台湾人である。前者は中華思想を信奉し、中華民族(中国人)意識を持ち、大陸、台湾を合わせた「一つの中国」を理想とする。いわゆる中国派、親中派、統一派であり、現在野党の国民党、親民党、新党の支持者だ。これに対し、後者は中国人とは違う台湾人意識を持ち、現実に台湾は中国とは別の国であり、将来も別であるべきだと考える。いわゆる台湾派、台湾独立派であり、与党の民進党、台湾団結連盟の支持者だ。 |
| 現状では台湾の人口のおよそ30%ずつを両派で分け合っている。外省人のほとんどは中国派だが、人口比で見ると、外省人は約15%にすぎない。なのに、中国派が30%を占めるのは、約85%を占める本省人の中にも中華思想の持ち主が意外に多いからである。 |
| 台湾は独立国家の道を歩んだ歴史が一日もない。いまだ独立宣言も行なえず、国連にも加盟できず、外交関係を結んでいる国は26か国にすぎないなど、国際社会での存在感も薄い。それゆえ、本省人は確固としたアイデンティティを築きにくく、中華思想に引き寄せられやすい。 |
| 残りの40%は、漠然と台湾(人)と中国(人)は別だと思いつつも、同時に中華思想にも惹かれる中間派だ。選挙ではこの中間派を取り込んだ方が勝つ。 |
馬氏「日本と一戦交えることも厭わない」
| 馬氏は明らかに外省人の中国派であり、イコール反日派である。当然のことながら、台湾の独立には、明確に反対をしており、国民党主席当選直後には、4月に連戦前主席が訪中し、胡錦濤・共産党総書記(国家主席)との間で合意した「五点共識」(両岸対話の再開促進など)を達成したい、という意向を示した。つまり、親中姿勢を明確にしたわけである。 |
| 選挙前の6月には尖閣諸島問題を巡って「日本と一戦交えることも厭わない」「戦う姿勢を見せて和を求め、日本を話し合いのテーブルに着かせるべきだ」と過激な発言を行ない、明確な反日姿勢を示した。(中略) |
| 実は、馬氏の反日姿勢は今に始まったことではない。台湾大学在学中に「保釣学運」(尖閣諸島を中華民国の領土として死守する学生運動)のリーダーとして頭角を現わし、国民党の中山奨学金を得て留学したアメリカでも運動を続けた。当時、台湾からの留学生を監視する「特務」(スパイ)とも噂された。筋金入りの反日中国人なのである。この馬氏の当選に対し、胡錦濤総書記が祝電を送ったのは当然だ。 |
イメージ戦略に長ける馬氏
| 馬氏がくせ者なのは、常に中国派、反日派として露骨な強硬姿勢を見せるわけではない、ということだ。それをすれば中間派の反感を買い、あるいは不安を募らせ、その支持を得られない。それゆえ、普段はあくまでもソフトイメージを前面に押し出している。スター性があるだけに、そのイメージ戦略は中間派に受け入れられやすい。 |
台湾の主要メディアを握る外省人(中国人)
| 2002年、台北市の対応が遅れたがために台湾でSARS(重症急性呼吸器症候群)感染が拡大したことが象徴するように、馬氏の行政手腕には大きな疑問符が付く。だが、台湾の主要メディアの中枢は外省人の中国派が握っており、馬氏への批判を控えるどころか、「零缺点」(欠点がない)だとして盛んに持ち上げている。だから、失政があっても逆に人気は高まっていく。(中略) |
| 台湾社会ではいまだに外省人と本省人の間には明確な垣根があり、騙されやすい本省人が外省人を支持することはあっても、外省人が本省人を支持することはあり得ない、というのが実情である。 |
後編へつづく
|