| 戦後、中国国民党の支配することになった台湾には言論の自由がなく、政府に批判的と疑われたら最後、逮捕され銃殺されるという恐怖の時代が続きました。また知識ある者は独裁にとって都合が悪いので、無実の罪を着せられ処刑され、殺された犠牲者の数は3万人とも5万人とも言われてます。 |
| 1988年李登輝総統の登場により、台湾はようやく民主化の道を進むようになりましたが、国民党独裁政権時代の傷はいまだ深く、今でも政界もマスコミも一部の外省人(中国人)に握られ、情報操作されるという状況が続いています。歴史教育も本当の台湾の歴史を教えられず、専ら中国を中心とした中国に都合よく歪曲された歴史を学ばされてきました。さらに、日本人はかつて台湾が日本の一部であったことを忘れ、日本にも見捨てられた台湾の年配の人々は苦渋を嘗めつづけてきました。 |
| そんな中、2人の日本人が台湾に関する書を著し、年配の台湾人を大喜びさせました。司馬遼太郎の『台湾紀行』と、小林よしのりの『台湾論』です。蔡焜燦(サイコンサン)氏はその著書『台湾人と日本精神』において、司馬遼太郎氏を“台湾の恩人”と呼び、小林よしのり氏を司馬氏と同等かそれ以上の絶賛をしています。 |
| 現在の日本政府は中国に遠慮して台湾を中国の一部のように扱い、台湾人を怒らせていますが、はたしてそれでいいのでしょうか。『台湾紀行』と『台湾論』を読んだ台湾人の反応を書いた蔡焜燦氏の文章は、これまで台湾人がいかに中国人の圧政に苦しみ、日本人が目を向けてくれなくなったことを悲しんできたのかがよくわかります。これから日本が台湾とどう向き合っていくべきかを考える上で非常に重要なものと思われますので、一部紹介したいと思います。 |
| 以下、蔡焜燦著『台湾人と日本精神』より抜粋 |
台日両国民の心を近づけた『台湾紀行』
| そもそも文豪・司馬遼太郎が台湾を描くことになったきっかけは、大阪外国語大学時代の同級生である台湾人作家の陳舜臣氏が台湾に帰ったとき、李登輝総統から「台湾について書ける作家はいないかね。君はダメだよ、台湾人だから……日本人で」と持ちかけられ、陳氏の脳裡に浮かんだのが司馬先生だったのである。そして司馬先生への陳氏の電話での短い問いかけが『台湾紀行』誕生のきっかけとなった。「『街道をゆく』、台湾まだやな」(中略) |
| この作品は、台湾を知らない戦後世代の日本人が“台湾”を知る契機となり、さらに「台湾に生まれた悲哀」というセンセーショナルな言葉を生み出した李登輝総統との対談は、少なからぬ人々に台湾への理解を深めることに貢献した。また戦後に台湾から引き揚げた台湾生まれの日本人に、生まれ故郷のその後を伝達できたことはなによりである。(中略) |
| “日本語族”の人々は、かつての祖国・日本が再び台湾に関心を寄せてくれたと喜び、こうした人々を中心に、多くの台湾人が日本への郷愁や親愛の情をより一層深めていったのである。もっといえば、この作品は台日両国の精神的な距離を縮め、両国民に相互親愛の心を育んだ最高の「外交」だったといえよう。(中略) |
| 日本・台湾両国で一大センセーションを巻き起こした『台湾紀行』は、後に台湾で『司馬遼太郎と台湾』という本を生み出すなど、台湾人の多くが司馬先生の台湾観を再確認しようとした。それは、『台湾紀行』という本が、これまで封印されてきた台湾の歴史を見事に描き出し、さらにその鋭い洞察力をもって台湾の将来をはっきりと予見した作品だったからである。 |
| 紀行記『街道をゆく』シリーズ全四十三巻の内、政治問題に言及した作品は、この『台湾紀行』をおいて他にない。周知のごとく、複雑な台湾問題をこの一冊が見事に解き明かしてくれたことに台湾人は狂喜したのである。それと同時に、台湾人自身が戦後の国民党独裁政権によって封印されてきた自国・台湾の歴史をこの本によって知ることができたのだった。それほどまでにこの『台湾紀行』の出現は、我々台湾人にとって一大事件だったのである。 |
| 『台湾紀行』の巻末に収録されている李登輝総統と司馬先生との対談では、文明論からこれまでタブーとされてきた台湾を巡る国家論にまで発展した。そして台湾が台湾人の国であることを、様々な例証をもって確認している。司馬先生は、台湾の領有を執拗に主張する“大陸”に対しては、「中国のえらい人は、台湾とは何ぞやということを根源的に世界史的に考えたこともないでしょう」と、とりわけ手厳しい。 |
| こうした内容が中国の猛反発を買い、司馬先生は日中文化交流協会の代表理事を辞任するまでに発展したのである。しかしながら、そうした結果を招くことをご本人も予期していたにちがいない。むしろ、司馬先生はすべてを覚悟の上で『台湾紀行』に取り組んだものと思われる。 |
つづく
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