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年初に政府が打ち出した、地球温暖化対策や省エネ対策を景気浮揚に結びつける中長期の戦略「日本版グリーン・ニューディール構想(仮称)」。2015年をメドに220万人の雇用を創出し、環境ビジネス市場の100兆円規模への拡大を目指すとしている。環境対策にかかるコストを逆手に取り、市場を開拓し新産業を育成するのが狙いだ。
環境問題に詳しい日本総合研究所の井熊均執行役員は「取り組み方によっては100万人の新規雇用が可能」とみる。太陽光パネルを民家や自治体の施設に設置する小規模の事業が増えれば「地元の建設業者や電気工事業者などの仕事が増え、雇用が生まれる」(井熊執行役員)からだ。
サミット会場に電力を送る太陽光発電実証実験施設(08年5月、北海道稚内市)
■薄膜太陽電池、日本製のシェア急減
しかし、日本の環境市場の拡大に注目しているのは日本企業だけではない。
太陽光パネル国内最大手のシャープ。同社の太陽光パネルの売り上げの70-80%を海外が占める。昨年11月にはイタリア最大の電力会社エネルと09年をメドに合弁会社を設立、発電事業に乗り出すと発表。欧州の機械メーカーを加えた3社でイタリアに年産1ギガ(ギガは10億)ワット規模の薄膜太陽電池工場を建設する計画も持つ。
そのシャープでさえ、国際市場で優勢とはいえない。昨年には「世界最大の太陽電池メーカー」の座をドイツのQセルズに奪われ、中国の尚徳太陽能電力(サンテックパワー)の追撃も受けている。そのサンテックパワーは最近、日本国内に事務所を開設して営業活動を開始、未来の巨大市場を虎視たんたんと狙っている。
経済産業省は昨年11月、太陽光発電の導入を促す計画を打ち出した。(1)住宅用の太陽光発電装置の導入に補助金を支給する(2)電気事業者が大規模太陽光発電施設「メガソーラー」を全国30地点に建設して合計約14万キロワットの発電を可能にする(3)学校や病院、福祉施設など公共の建造物に導入する----などが柱だ。
内需拡大を見越して、シャープも約720億円を投資し大阪府堺市に年産1ギガワットまで拡張可能な薄膜太陽電池の工場を建設中だ。だが、2000年代前半に世界の半分程度を占めた日本製品のシェアは、欧米や中国の追い上げにより25%程度にまで後退している。
■「水メジャー」が日本市場を席巻?
「コーディネーターが必要だ」。水処理大手オルガノの今岡孝之企画管理部長は危機感を募らせる。「このままでは『水メジャー』に日本市場までも席巻されてしまう」という。日本企業は個別の技術では強みを持つが、要素技術を集めて全体を管理・運営するノウハウを持っていないからだ。
水メジャーの代表格が仏スエズや仏ベオリア・ウオーターといったグローバル企業だ。浄化施設・給水所などの建設から、工場や一般家庭への給水、料金の徴収、海水や排水の処理までの管理・運営を、国や自治体に代わって取り仕切る。既にベオリアの子会社などが日本にも進出、福岡県や熊本県、千葉県などの自治体で浄水施設の運用を受託している。
30社・機関のトップらが設立した産業競争力懇談会の試算では、水の管理・運営市場は2025年には世界で100兆円規模に達する。その市場を狙い、鹿島や東レなど水関連の日本企業が今年1月「海外水循環システム協議会」の発足式を開いた。海水の淡水化やプラントの設置など個別の技術に強みを持つ日本企業を結集する試みだが、水メジャーに本当に対抗できるのか疑問視する声も多い。
■「オバマ大統領の登場は脅威」
日本総研の井熊執行役員は「オバマ米大統領の登場は、日本の環境産業にとっては脅威だ」と指摘する。「10年で1500億ドルの需要と500万人の雇用を創出する」という米国の“本家”グリーン・ニューディールが生み出すビジネスチャンスに、日本企業がどれだけ食い込めるかは未知数。一方で米国の有力環境企業は新たな需要をテコに競争力を磨き、海外市場にも積極攻勢をかける。
加えて、急速に環境関連技術を身に付けつつある中国も脅威だ。巨大な国内市場で育った米中の環境企業が「日本市場に攻め込んでくるまで、さほど時間はかからない」(井熊執行役員)。日本が真の環境立国たり得るのか--。その実力が試されるのはそれほど遠い未来ではなさそうだ。
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