西方見聞録

新たな記事を滅多に書かなくなりましたが、管理はしています。

メロディアのLP

すべて表示

Gost-68で初登場したフルトヴェングラーの2つの音源

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

イメージ 7

イメージ 8

イメージ 9

イメージ 10

イメージ 11

<Gost-68で初めて出た音源>
・33D-027777/8 ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』 
・33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番

これらのベートーヴェンの交響曲2つのレコードについては、Gost-68のレーベルが最も古い。世界のどこからも、これらの音源は出ていなかったので、ソ連のメロディア盤が初めてのレコードである。カタログ番号が続きなので、同時期に世に出たことが分かる。

これらのレコードには、ピッチが高いという共通の問題がある。そのままの再生だと、他に録音で残されたどのフルトヴェングラー演奏よりも速い演奏になってしまい、かなり違う表情に聞こえてしまうので、レコードの回転速度を少しだけ落とす必要がある。そうすると、初めて本来の音楽が語りかけてくる。戦後の演奏よりも弦楽器の表情に統一感があって、味わい深さを楽しむことができる『田園』、微妙に和音の重なり方をずらして力強い表情を見せる交響曲第7番は、戦後の同じ曲の演奏とは違った魅力がある。

メロディア盤で聴く交響曲第7番の演奏から、フルトヴェングラーの特徴がよく分かる。例えば、和音のつくりから、「縦の指揮者」であるトスカニーニに対して、「横の指揮者」はフルトヴェングラーと言える。指揮の振り方で、和音のつくりが変わる。それぞれの表現方法で力強い和音を創り出している。二人の交響曲第7番の第1楽章で印象がかなり異なる理由の一つである。フルトヴェングラーは、明らかに、わざと各楽器奏者がずれて入るようにして和音を創っており、そのずれ方が絶妙に素晴らしい。

交響曲第7番の第4楽章については、後のプレスになると、元の音源で欠落している最初の2小節を他の誰かの演奏で補っている。その大きな違和感は、和音の中身が全く違うからだ。フルトヴェングラーは、最初の律動動機がいかなる意味を持つかを、テンポや音の重みと共にはっきりとオーケストラに示しており、音によって生まれて休符に溜まったエネルギーの放出が、若干テンポを速めた第5小節目に始まる第1主題と結びついている。音楽が要求する目立たぬテンポの変化をしっかりと読み取っている別の例として、とても分かりやすいのは、第130小節や第132小節のヴァイオリンの力強い3拍分の音である。ここはエネルギーの放出時間を要する場所なので、これらの小節の間は、テンポが遅めになっていて、次の小節で瞬時に元のテンポに戻している。同様の例は、ブラームスの交響曲第4番第3楽章第5小節にも見られる。

また、誰でも分かる第113小節目の金管楽器とティンパニの加筆以外に、第235小節からの2小節間と第409小節からの2小節間にも加筆の工夫が見られる。通常はこの部分でホルンを大きめに演奏させるだけだが、後に続く弦楽器のメロディーとのコントラストを明確にするため、フルートを1オクターブ高く演奏させることによって、メロディーをはっきりさせている。近代的なオーケストラが、この曲が作曲された時よりも大きな音が出せる楽器を使っていたり、演奏会場の大きさも違うので、作曲家が意図した音楽を実現するために、状況に合わせて工夫をしたわけである。

演奏の細部を知るためには、よりオリジナルテープに近い音を再現するレコードが必要になる。最も初期のプレスのレコードには、基本的には、モスクワプレスなら、ピンクまたは青のダブルレターのレーベルが貼られている。レニングラード・プレスもダブルレターが基本である。しかしながら、ダブルレターにも、第二版のマトリックスを持つレコードが存在するし、シングルレターのレコードに初版のマトリックスのレコードが存在するところが、メロディア盤の興味深いところである。

確実な初版は、ダブルレターのVSGレーベルである。VSG盤は、共産党幹部向けの特別仕様と言われている。初版のレコード自体が珍しくなってきた中で、ごく稀に出会う事がある。1960年代のVSG盤の多くには、曲名と演奏者名が入った美しいジャケットがついていることが多いが、これらの2種類のレコードのVSG盤は、手に入った3枚とも、普通の共通ジャケット、またはメロディアのロゴだけが入った白いジャケットに入っていた。リヒテルのようなソ連の看板ピアニストのVSG盤でさえも、白い無地にVSGを示す文字だけが小さく書かれたジャケットに入っている場合もある。

しかしながら、多くのメロディアのレコードに出会って、初版または、同じレコードでも何かの切り替わりのタイミングの初めに作られたのがVSGであることは、ほぼ間違いがないと私は考えている。

古いレコードが再び注目され、メロディアのレコードも、より初版に近いレコードが生々しい音が楽しめると、多くの人に考えられているようだ。全くの間違いではないが、レコードのプレスの善し悪しや、製造後の扱いによるコンディションに音は左右されるので、余りレーベルやレコードの形状にこだわりすぎるのはどうかと思う。Gost-56やGost-61のレーベルが付いた古いメロディア盤は、プレスの善し悪しによって随分と再生音が違う。また、丁寧に扱われてきたレコードは、聞き込まれたように見えても良い音が鳴ることがある。前の所有者の特別な思いが伝わってくることも、中古レコードの楽しみの一つではないだろうか。

写真:
33D-027777/8 ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』 VSG盤
33D-027777/8 ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』 VSG盤とジャケット
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番 VSG盤
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番 ブルーダブルレター・レーベル
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番 ブルーダブルレター・レーベルのジャケット
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番 ピンクダブルレター・レーベル
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番 ピンクダブルレター・レーベルのジャケット
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番 ピンクシングルレター・レーベル レコードは初版
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番 ピンクシングルレター・レーベル 初版レコードに付いていたジャケット
以上、モスクワ・プレス
33D-027777/8 ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』 レニングラード・プレス 黒地金文字ダブルレター 初版
33D-027779/80 ベートーヴェン:交響曲第7番 レニングラード・プレス 黄色地に緑文字ダブルレター 初版


.


みんなの更新記事