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なぜ、総理は大政を奉還しないか、その分析
天皇に大政を奉還すべしと私が説くと、"もと皇族"とかいう匿名の人から投書をいただいたが、それには、「現在の状態で天皇は、何の責任もなく、気楽であって、この天皇に再び国家統治の責任を負わし奉ることはかえって不忠のことである。現在の象徴天皇がもっともよろしい」という意味のことが書いてあった。
しかし私が考えるのに、男子いやしくも此の世に生まれて、何の責任もなく、皆の決めたことに、自分の意見を述べる権利もなくただ判を押させられる役などになっていて、はたして生き甲斐が感じられるであろうか。何の仕事も責任も与えられないで、裕(ゆた)かに生活をする保障だけを与えられているものを、或る人は「飼い殺し」と名づけていた。
誰でも平杜員から係長になり、課長となり、部長となり、重役となり、杜長となるべく努力をつづけているのは、一層責任のある地位について男の生き甲斐を感じたいからではないか。
そして日本の総理大臣が、占領軍から貰った国家統治の大権を、占領が終ってからも天皇に奉還したがらないのは、精神分析的に観れば、やっぱり、男子いやしくも此の世にうまれて、国家統治の責任という最も大なる責任を担い続けていることが、どんなに気持がいいことかしれない気持があるからではないか。
谷口雅春著 「私の日本憲法論」より
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