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平等の権利・異る個性の矛盾
 
 
民主主義の考え方の中には、二つの矛盾の性格を孕んでいるのである。それは、すべての人間は平等の自由と権利」をもっているということ。そして、すべての人間は「異る個性と考え方」をもっているということである。この「平等の権利」の主張と「異る考え方」の主張ーこの二つの相反する主張を、国家という同一面の""に於いて調和せしめつつ生かさなければならないのが民主主義であり、それを調和せしめつつ、最大多数の国民が幸福になるように政策を進めて行くのが民主政治の要諦である。
 
 
異る考え方が、平等の権利をもっていろいろと勝手なことを主張する中で、政治をやって行くのであるから、必ず国民の中に不平に思う者ができ、その不平も各人おのおの異るであろうが現政府に対する不満足という点に於いて一致するから、その不満足者が大同団結して反与党グループ又は反主流派グループを結成して、与党又は主流派を倒そうとする運動をはじめる。だから民主主義政治の下に於いては永久政権というものはあり得ないで、常に国内闘争の激化を内に孕んでいるのである。理論的にそうであるばかりでなく、実際に日本国の実情を見ているとその通りであるのである。
 
 
日本の国会の有様をテレピなどで見ていると、人間尊重の民主主義の善き半面は隠されていて、「人間は間違うものだ」という人間軽蔑の悪い半面ばかりがあらわれているようである。だから総理大臣などにも、行政府の長官として尊敬するどころか、反対党の議員はまるで犯罪人の被告を検事がどなりつけるような調子で罵(ののし)ってかかるのである。ここでは「人間尊重の平等」ではなく、「人間軽蔑の平等」が平然と行われているが如くであるのは遺憾である。
 
 
「個人の権利遂行の平等的自由」と「相異る個性と考え方に基づいて行動する自由」という相互背反する性格を内に包蔵する民主主義社会に於いて、争闘することなくして平和裡に国家秩序を維持して行くためには、もっと互いに尊敬し合って、相手の立場に立って物を考えるところの"寛容""思いやり"の精神を必要とするのである。
 
 
谷口雅春著「私の日本憲法論」
 
 

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