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殺生をなくする農業
しかし人口制限を行わなくては、一定の領土内で生活し得る食糧が量的に不足して、避妊数と人工流産数とを加えただけの人間が健全に育っていたならば、愈々益々(いよいよますます)食糧が不足して多くの国民が餓死するようになるだろうと云う人がある。しかしこれは杞憂(きゆう)に過ぎないのである。私は終戦直後、日本の人口は横に他国へ侵略しないでも、空中に摩天閣(まてんかく)をつくって伸びて行くならば、現在の人口がその十倍になっても二十倍になっても面積に困ることがないことを述べた。先ず大体平均十階以下の建物は建築させないで、十階以上のピルディングを建てさせる。そして互いに建物同士が光を邪魔して他の建物のルーフを陰らすことのないよう各建物のルーフが平等に日光を受け得るように高さを平均する。そしてこの日光の豊かな階上のルーフを食糧になる植物の水栽培の田地とするのである。かくてこの屋上で栽培される食物を収穫し、そのビルディングに住む人の食糧は大体、その建物のルーフで収穫し得る食物で足りるようにするのである。
人類は殺人のために色々の新兵器を作っているが、その懸命の努力を、このルーフの水栽培の方法に注ぐとき、近い将来に人類の食糧は各々の住宅の階上で得られる収穫で足りることになり、その収穫物を味覚に適するように脱臭、調味などすればよいことになる筈である。或いはその栽培される品種によっては人間の味覚に適するものがあるかも知れない。田宮博士の栽培しているクロレラと云う水栽培の緑藻はピレノイドサと云う品種で、ソバに似た味で味覚も大して悪くないと云う。クロレラという直径一・五乃至八ミクロンの球形又は楕円形の単細胞の藻を栽培する実験は五年前カーネギー植物研究所のスポーア博士が提唱して以来、米国では大仕掛(おおじかけ)けに行われている。この提唱は私が「白鳩」誌に、高層建築のルーフに水栽培せよと提唱した時と略々(ほぼ)同時であるが、これは世界は一つの生命の波によってつながっているから同時に同様の構想に到着するのである。日本でも徳川生物研究所長の田宮博士が行っているのである。この緑藻は一日に十倍にふえるという繁殖率をもっていて、太陽エネルギーの吸収率は普通の農作物の四十倍以上、反当り収率は米の三石(四百五十キロ)、大豆の百二十五キロに比べて四・五トンである。栽培法の改善によってなお収量を増加し得るのである。田宮博士は「年中ひまなしに働かされたのではクロレラだってたまるまい。たまには休ませた方がよくはないか」と思いついて間歇的(かんけつてき)に日光を照射する工夫をしたら、これだけで忽(たちま)ち倍近く収穫が殖えたと云う。その成分は蛋白四二、脂肪二二、澱粉二四、灰分一二、ビタミン各種豊富と云うように頗(すこぶ)る栄養価が高いのであって、殆ど人造肉と云っても好い位だと云われている
つづく
谷口雅春著「私の日本憲法論」
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クロレラの話勉強になりました。食糧危機が叫ばれる中人類の救世主となりえる研究を本格化させるべきですね。
ナイス
2013/3/22(金) 午後 8:40 [ 鳳山 ]