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二 金次郎のニックネーム
 
金次郎は幼いときから良いと思ったことは進んでやりましたし、百姓の子供ながら学問がすきで、学ぶための時問をうみだす工夫もこらしました。他の子供たちと違ってみえたことも多々あったでしょう。ユニークなニックネームがつけられました。
 
 
一、ドテ坊主
ドテとは土手のことです。堤、または堤防ともいいます。酒匂川(さかわがわ)は、たびたび洪水をおこしては堤防を破りました。父利右衛門が田畑を全部流されたのも、洪水で堤防が切れたためです。村の人たちはいつも、どうやって堤防を守るかという話をしていました。金次郎も実際にひどい目にあいましたし、堤防に行っては、
「うーん、どうしたら洪水がふせげるだろ」と考えるのでした。幼いころから堤防を遊場のようにしていましたので、小さなくずれはなおしたりします。堤防にはいつも金次郎の姿がみられ、人々は彼のことを「土手坊主」と呼ぶようになりました。
 
堤防を調べに役人がきますと、金次郎はその役人にぴったりついてまわります。
「そこをそうしては水あたりがつよいよ」
「ここをもっとなおしたほうがいいよ」
と口だししてまわりの人々をはらはらさせました。
 
また、こんなこともありました。十三歳の頃のことです。
金次郎はとなり村の農家で十日間ほど子守をして働いて、袷(あわせ)一枚と銭二百文をもらってわが家に帰るところでした。前方の枯れ草の上に一人の老人がうずくまっています。
 
「誰かこの松の苗を買ってくれる人はおらんかのう。せがれが病気なんだが薬も買えないんだよ」
「いくらなの。おじいさん」
「二百文でいいよ。二百本あるよ」
困ったようなおじいさんと二百本の松の苗をみていて、金次郎はあることを思いつきました。
 
「酒匂川の土手にこの松の苗を植えたらどうだろう。きっと村を洪水から守るのに役にたつぞ」
「おじいさん、おれに売って下さい」
 
金次郎はもらったばかりの二百文で二百本の松の苗を買って、一番洪水に弱いと思われるあたりに一本一本ていねいに植えていきました。
 
この松の苗は大きく育って村を洪水から守ったということです。
 
 
 
  
 

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