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金次郎と弟子たち 
 
 
桜町の陣屋にある二宮金次郎のすまいでは、いつも弟子たちのにぎやかな声がしています。他の藩から仕法を学びにきているもの、弟子入りして金次郎を助けて働いているもの、その数は数十人ほどもおりました。
 
 
夕食のときは皆一室に集まって膳にむかいます。そこで金次郎は熱心に報徳の教えや仕法の心がまえなどについて語ります。
「ご了解か、ご了解か」
とたしかめながら語ります。
「今年とれた稲を全部食べてしまわないで、いくらかを次の年のため、又は困っている人のため譲(ゆず)り渡す、この道を推譲(すいじょう)の道というのだ。天照大御神(あまてらすおおみかみ)さまがににぎの命(みこと)さまに斎庭(ゆにわ)の穂(ほ)、すなわち稲の穂をお授けになったのも推譲の道なのだよ」
「えーっ」「ほう」
と言う声がします。
 
 
「豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国(くに)といわれるわが国は、はじめは葦の茂ったところだったが、稲を授けていただいたおかげで荒れ地が田となり稲穂が豊かに実るようになった。日本(やまと)の国(くに)は、天照大御神さまの推譲のお心から開けてきたのだ」
 
 
「天照大御神さまとわたしたちの間がらは親さまと子供のようですね」
と一人が言いました。金次郎はうなずいて、
「そうだねえ」と答えます。
「親子だから天照大御神さまとわたしたち一人一人の間がらは絶対のものです。たとえば一枚の紙を二つにひきさいて外の紙と合わせてごらん。世界中探しても親子の外に合うものはない。子は幾人あっても親子はただひとつの結びだよ」
 
 
金次郎はそう言うとにっこりして、
「さあ明日も朝は早いぞ。今晩はこのくらいにしておこうか」
と言いました。
「ありがとうございました。おやすみなさいませ」
と皆がさがったあとに、弟子の大沢政吉が残っています。
彼は何か相談ごとがあるようで、
「先生ご意見をおきかせください」
と話しなじめました。
 
つづく
 

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