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四 生家再興 
 
こうして万兵衛のもとでたくましく成長して、金次郎は二十歳になりました。文化三年(一八〇六年)のある日、万兵衡は、「金次郎、おまえはもう一人前の百姓だ。身体つきもいいし根性もある。わしはおまえがいてくれて大助かりだ。だが、おまえは生まれた家をたてなおさなくてはならん。独立する時がきたようだな」
 
としみじみと言いました。金次郎は、
「伯父さん、何年もの間、本当にありがとうございました。作物の性質、天侯のこと、麦の蒔(ま)きどき、病虫害やこやしのことなどしっかり仕込んでもらいました。これからもいろいろと教えてください」と心からお礼を'いました。
 
「おまえの家のたんぼは小作にだしておいた。たんぼを預かって耕してくれた村の衆がいてな、米ができると少しずつ届けてくれた。それと、少しだがおまえのためにためておいた金がある。それらを独立の費用にすればよい」と万兵衛は一言ってくれました。
万兵衛にとっても、弟利右衛門の代でつぶれてしまった分家が、その子の金次郎によって再興されるのは大きな喜びびでした。
 
生家はひどく荒れはてていました。
天井はくもの巣だらけ、屋根は雨もりがして床板は腐(くさ)っています。家の周りは草ぼうぼうといったありさまでした。
それでも、ここは金次郎にとって、父や母や弟たちとの思い出がいっぱいある懐かしいわが家です。
「よし、住めるようにするぞ。一日も早く弟たちを呼びよせて、三人いっしょに暮らせるようにするんだ」と、金次郎は希望に胸をふくらませました。
 
まず、くもの巣を払い、かまどの崩れをなおします。屋根も葺きかえます。床板も取り替えます。
「金次郎、よくもどってきたな」
「立派になったなあ」
と近所の人々は暇をみては手助けしてくれました。万兵衛も手伝いにきてくれます。こうして、金次郎の家はさっぱりとし人が住めるようになりました。
 
しかし、最初のうちはなかなか大変でした。何しろ何もかも一人でやらなくてはなりません。
ある時、金次郎の一つしかない鍬(くわ)がこわれてしまいました。隣りの家にいって、
「鍬がこわれてしまいました。もうしわけないのですが貸していただけませんか」と頼みました。
 
しかし隣りの主人に、
「あいにくだね。うちも今から畑を耕して、菜の種を蒔こうと思っていたところだ。それが終わらないと貸せないよ」
と断られてしまいました。金次郎は考えました。
『腹が減ったとき、よその家に行って「ご飯を一膳(いちぜん)ください」と頼んだだけで、ご飯がもらえるだろうか……。いやいや、もらえるはずがない』
 
つづく
 

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