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服部家たてなおし
 
それは、
 
一、食事は飯と汁のみにする
二、着るものは安くて丈夫な木綿だけにする
三、無用な遊びごとはいっさいやめる
 
という三つのことを、むこう五年問続けられるかというのです。まさかと金次郎は思っていたのですが、十郎兵衛はそのとおりにすると約束したのです。
こうして金次郎の服部家たてなおしの生活が始まりました。
江戸時代の終わりごろの武家はどの家も苦しい家計でした。服部家も、千二百石なら千二百俵の年貢米が入るはずなのですが、それは名ばかりで、実は四百俵の収入しかありませんでした。ですから、もう十年以上も収入より支出の多い生活が続いていたのです。
 
それでも武家では客があるとぜいたくなごちそうを出したりしますが、金次郎はそういうことも改めました。お客がきてもお茶とお菓子くらいです。お茶だけのこともあります。
徹底的な倹約なのに家の人の顔は今までより明るく、屋敷内の空気も生き生きとしてきました。見栄を張っていた生活から、苦しくても足を地につけた生活になったのです。
 
「神棚の灯明も五っ刻(午後八時)で消すようにしよう」
「五本使っていた薪は三本ですむんだよ」
「鍋についている炭をよくおとし、薪が鍋の底にまるくあたるように炊くといいよ。燃えたあとの消し炭も生かしてつかおう」など、金次郎は女中たちに細々と教えてやりました。
誤って皿を割った時、給料からひくというのも止め、正直に申し出て偉いとほめてやりました。
買いものに行って、若党が安い店をみつけてそこで買ってきた時は、その浮いた分はてがらとして与えました。働く者たちは工夫するようになりました。金次郎は外部には質素にし、使用人たちにはあたたかみのある職場にしたのです。
 
みんなの心がひとつになって、三百六十両もの借金を、五年の後には返済できたのでした。そしてなお、三百両が手もとに残りました。
深い感謝を受けて、ぜひにと主人からいただいた百両のお金を、金次郎は、
「皆のおかげでできたことだ。ありがとう」と、そこで働く人々にわかち与えたということです。
 
金次郎はのちに、家を豊かにするための心構えをつぎのように語っています。
「新しい着物をつくるとき、まず反物を買うが、たとえお金があっても、買うのを十日延ばすがよい。買ったら、それを仕立てることもまた十日延ばすがよい。そうして、着物ができあがったならば、それを着るのも又、十日延ばすがよい。三十日間、着物の生命を永らえてやるのだ。万事をこのような心掛けで暮らしていけば、家計は豊かになり、家が繁盛するのはいうまでもないことだよ」
 
 
つづく
 
財団法人新教育者連盟「二宮金次郎」より
 

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