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核兵器だって使うだろう
こうなったらいっそのこと、東大を動物園にしてしまえぱいい、とぼくは思う。なまじ知性の府とかなんかといってるからおかしくなるんで、知性だけにたよりたい者はみな大学から一切、手をひき、東大を上野の第二動物園にしちゃうんだ。あれだけ"サル"がいるんだから、サル山にしたっていいさ。
全学封鎖をむしろ積極的にやらせて、とにかく彼らに"完全な自治〃を与えてみる。ロックアウトで本郷の真ん中に無法地帯を現出させるわけだ。無法地帯の内部でどういうことが行われるか、三派と民青がゲバ棒で殴り合いもするだろう、革命の準備も始めるだろう・・・それを望遠レンズで捉え、新聞・テレビその他マスコミに流す。
大事なのは、自治権なるものの幻の実体をこの際、徹底的に世間に知らしめることだ。大学側は、国家権力に対して一方で甘えながら、また一方で自治権を楯(たて)にとって世間にも学生にも見栄をはっている。学生の方は学生の方で、これまた自治権を楯にとって大学を革命の拠点にしようとしている。
そういう互いの自治権をめぐる八百長試合を白日のもとに一度さらしてみることだ。いったい学生たちの要求する“自治”とはいかなるものか、与えてみれば自治イコール無法地帯ってことがはっきりするだろう。
教師も一般学生も世間もそれをはっきり認識したところで、機動隊によって大学を奪還する。導入じゃない、奪還だよ。われわれ市民の警察をもって、われわれ市民の大学を革命分子どもの手から奪還してどこが悪いんだい。警察も大学も、われわれ市民の税金で成り立っているんだからね。
動物園に機動隊が入っていって、サルやイノシシつかまえたって、誰も文旬いいやせんよ。動物園になる、いや動物園になったところを目のあたりにみなければ信じられないというなら、一度動物園にしてしまうしかないじゃないか。
完全な自治、完全な自由、人間性の完全な解放区に東大がなったときどうなるか。そういう解放区がわれわれ市民杜会の真ん中にポツンと出来たらどうなるか。それを教師にも一般学生にも世間にも、一度は思い知らせる必要がある。
人間性を十全に解放したらどうなるか。こわいことになるんだよ。紙くずだらけはまだしも、泥棒、強盗、強姦、殺人……獣に立ち返る可能性を人間はいつももっている。かくいうぼく自身だってそうだよ。
初めは論理で叩き合っていたのが角材になり、鉄のパイプになり、ドスになり…。このままエスカレートすればピストル、ライフルだって使うだろう。いや、彼らなら核兵器だって使うだろうさ、もし手に入ればね。そこがイデオロギーの恐しさ、人間性の恐しさなんだ。
三島由紀夫著 「若きサムライのために」
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2012年09月09日
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