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靖国神社の国家祭祀について
「やまと新聞」月曜随想(昭和四十六年六月二十八日号)
 
南溟の玉砕島に放置される遺骨(過去記事225日掲載)
 
 
・・・・省略・・・
「だが、私を本当に哭(な)かせたものは、海浜やジャングルに投げ出されている、それらの破壊された兵器の残骸ではなかった。ひとたび緑の雑草におおわれている激戦のあった場所や、幽気を孕む洞窟に足を踏み入れると、そこには必ず、眼をそむけずにはいられないような、次元の違う別箇の世界が現存し、その想像を絶する悲惨さに、足もすくんでしまったのである。戦跡は意外であった。そこに、二十.数年前に戦死したまま、ずっと放置されていた兵士たちの悲しい姿を、私はまざまざと見せられたのである。
 
長い間、雨に打たれて朽ち果て、風化された白骨は、もうすでに黄色く変色し、それらが枯木のように折り重なって、無数の骨、骨、骨……この骨の山が、かつての善良な青年たちであり、純粋で疑うことも知らず、皇軍の必勝を教えられたまま信じ、日本の楯となって本土の人々の身代わりになろうと、身を粉にして闘い、生きて虜囚の辱しめを受けまいと、最後まで敢闘を続けた兵士たちなのだ。彼等は人間として、当然享受出来る幸せを投げ棄て、国家のために尊い生命を捧げた兵士たちであり、同時に私の親しい仲間でもある。そう思うと、その悲惨さに堪えられず、激しい憤りを覚えて、長い慟哭さえ押しとどめることも出来なかった。私はその時以来、毎年、必ず、収骨慰霊に渡島し、もう前後九回におよぶ。これからも私の身体が動く限り、これを続け、彼等英霊たちの冥福を祈りたい。これは多くの英霊が、私を招いているからでもある」
 
船坂氏のこの文章は私の胸を激しく深く打ったのである。民間人である船坂氏がこのように遺骨収集のために幾回も南の孤島に渡っているのに、政府としてはどうしてもっと大掛りの遺骨収集団を派遣して、そんな気の毒な遺骨が露出したまま風雨にさらされているのが一片もなくなるように、収骨してとむらってやることを実行しないのだろうと思った船坂氏が「その悲惨さに堪えられず激しい憤りを覚えた」と書いていられるのは、政府が、この国家の犠牲者をこんな悲惨な状態のままで放置しているその冷淡さと、政治の無策に対する激しい憤りであったのだろうと想像されるのである。
 
革新党、キリスト教側の反論(過去記事226日掲載)
 

けれども政府が国家を代表して、国家の行事として遺骨を収集して慰霊する行事を行なうことは、現行の日本国憲法ではできないーという壁にぶつかることに私は思い当たったのである。それはこの憲法の第二十条に、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と占領軍が定めて往ったのであり、日本国民は今に至るまで、この憲法を改正しようとせず、この欺瞞憲法の枠の中で、行動を束縛されて自由を得ず、こそこそと反対党の目をぬすんで、自衛隊は「戦力ではない」と詭弁を弄して創設してみたり、護国の英霊をまつることは「国」としては行なうことは出来ないということになっているので、靖国神社国家祭祀の法案も政府提出法案とせず議員立法として最近の通常国会に提出せられたのであるが、革命党の反対気勢が高いために、この法案を最初に出したら、審議が長びいて、他の重要法案が審議できず、参院選挙戦の期日に食い込んでしまうおそれがあるというのでこの法案は、後回しにされ、ついに審議未了廃案になったのである。

しかも、この法案の通過を間接的に妨害するために、津市における地鎮祭を市当局が行ったことは、前掲の憲法第二十条に触れる行為であるとて、「政府機関や市当局は地鎮祭すらも行ってはならぬ」という判決を名古屋高等裁判所は下したのであった。

革新系の政党が、靖国神社を国家または国の機関が祭祀することに反対するのは、神社の祭祀は一種の「宗教的活動」であるから国や政府機関が行うのは、右の憲法に触れるということと、戦争に命をささげた英霊を尊崇したり、頌徳したり、遺徳をしのぶということは、好戦的精神を国民に養成し、それが戦争につながるという理由のようである。

特にキリスト教側からは、大東亜戦争中、日本政府が国内のキリスト教を禁止同様に圧迫したことに対する反感から、戦争を一種の犯罪として見、その犯罪に従事して敵兵を殺すという殺人行為をした者を国家がまつるということは以っての外だという議論も出ているのである。それゆえにこの法案の提出者側が提示した、提案理由、は非常に遠慮がちなもので、次のように書かれている。

・・・・省略・・・・

次元を低めた法案の廃案は神意である。
(過去記事227日掲載)
 
この提案理由を読んでみると、一字も、祭祀、という語を用いず、「まつる」とも言わず護るといい、護持する、といっていて、出来る限り、宗教語を避けその「まもる」又は、護持する、ことが、憲法第二十条に定められたる「国及び政府機関」がしてはならない「宗教活動」とみとめられて、違憲のそしりを受けないように、謂わば「表現の微妙なカラクリ」によって、「英霊を祭祀すること」を「祭祀するのではない」「まもるのだ」「護持するのだ」と言いのがれる工夫が凝らされているのであるそしてその靖国神社なる建物を「国民の負担においてまもる」ことは、神社に「祭祀たる英霊」にこたえるためではなく、「英霊に対する国民の尊崇の念にこたえる」ためになっているのである。それを提案理由の中から箇条書きにしてみると

一、英霊に対して全国民的な尊崇の念を表すために、
二、遺徳をしのび、
三、これを慰め、
四、その事績をたたえ
五、その偉業を永遠に伝えること、となっているのである。

この第三項「これを慰め」以外は、神社に祭祀してある英霊の冥福を祈るという意味は全然ないのであって、靖国神社を、神社、という名称だけを温存しつつ、その実質は単なる「尊崇の念を表し、遺徳をしのび、事績をたたえ、偉業を永遠に伝える」ための記念碑的存在たらしめることによって、占領憲法の「国家祭祀の禁止条項」から言いのがれようとしているのである。

しかも国家が祭祀することを祭祀といわずに「護持」といってその記念碑的建物を保存維持する経費を国家が負担するというような、半ば唯物論的表現になっているのである。しかも、この提案理由の説明によれば「国民の名において、かつ国民の負担においてまもること、すなわち靖国神社を国家護持すること」となっており、国民、と、国家、とが混同されているのである。

つまりこの提案理由書によれば、
占領憲法の最大の欠点であるところの「国民はあるが国家はない」ということが露骨にあらわれていることである。このような国家がない占領憲法の下に於いて、国家のために命を棄て、「天皇陛下万歳」と叫びながら死んで往った英霊の心が慰められるであろうか。
そして、国家護持、と称する意味不明の表現の下で、ノリトを誦えることも宗教活動、として遠慮しなければならないような状態で、国民がその護持の費用を受けもってくれても、果たして「英霊の心は慰め」られるであろうかと私は疑問に思うのである。
それは次元の高い靖国神社を、次元の低い記念碑に落としてしまうことになるのである。そして国家、と、国民、とを混同した曖昧な心構えで「国民の名に於いて」「国民の負担において」「国家護持する」という趣旨で、この法案が通っていたならば「国家のために命を捧げた英霊」を「国をつぶした戦犯協力者」として攻撃している共産党員の如きが政権を握ったときに共産党員は礼を以て神社を護持し得るか。本当に英霊は「礼をもって」その国家護持を受け給うであろうか。「神は非礼を受け給わず」ということは敬神家の常識であるのである。従って先般提案の「靖国神社法案」が審議に到らず廃案になったことは「神は非礼を受け給わず」のあらわれで、私は神意であると思うのである。

恰(あたか)も、この原稿を書いているとき「靖国会」から、徳川氏が病気療養中なのでその代理者としての塙三郎氏から、私が嘗(かつ)て、現憲法下ではその第二十条により靖国神社の国家祭祀には抵抗が多いから、同条の信教の自由に基き天皇陛下が御自身の御意志にて靖国の神霊を祭祀するのは違憲ではない。そして、その費用は天皇の皇室費(御生活費)の中から支出すればよいのであって、それは国会で皇室費を増額すれば事足りるのだから、これは頗(すこぶる)簡単なことなのであるーこんな意味をこの欄に書いたことがあるのを塙氏がどこからかお聞きになって、

「天皇御自身の御意志によって、靖国神社の忠霊をお祭り申し上げる事が若し実現出来ますならば、二百五十万の忠霊はどんなにか感動することでありましょう」と大いに賛意を表して来られたのである。塙氏は「靖国神社は先ず宗教法人たることを辞退して普通の公益法人にしてその財産を管理し」と書いておられたが、信教は自由であるから靖国神社が宗教法人そのままで天皇陛下が御視察あらせられても一向差支えはないと私は思っている。そしてその費用は、吾々が先祖の霊を祭る仏壇を購入し維持するのに、自分の家計の中から支出するのと同じように皇室の中から 天皇御自身の費用として支出することにすればよい訳である。天皇陛下万歳、と唱えて国家に命ささげた忠誠の英霊のために謹んでこの稿を認(したた)める
 
 
谷口雅春著「私の日本憲法論」より
 

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