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新春を迎え皆様のご健康とご多幸をお祈り申しあげます。
本年も宜しくお願い致します
 
 
 
生体の白血球にも比すべきもの
 
 
大内兵衛氏が「世界」一六五号(昭和三十四年九月号)誌上で"安保改定と憲法“と題して「現行憲法が最初の戦争絶対放棄の精神によって制定せられたものであるに拘らず、次々とその第九条の解釈や議院に於ける責任閣僚の答弁が、憲法そのものの精神を歪めるようになって『憲法は日本の自衛を認めないはずはない』『警察予傭隊は戦力ではない』『保安隊は戦闘力なき軍隊である』『原水爆時代にこれ位の軍備は戦カとは言いがたい』『明文にはなくとも相当程度の戦カの保持は自衛のために認めていると考えて好い』などと多数決で通過して行って『違法を違法でないかの如く』政治がしてしまった。このようにして、『警察予傭隊が保安隊と改められ、さらにその保安隊が自衛隊となり、その実カが年々に増大され……いまや厖大な実力をもった自衛隊が日本中の基地に駐留する有カなアメリカの軍隊とその作戦上の有機的関連を緊密化して日本の対外的防衛力となっている』『大蔵省筋の説明は次のようにいっている。国防の基本的方針に基いて、昭和三十二年六月に決定された防衛カ整備計画は、昭和三十三年度から三十五年度までの三カ年の自衛隊の整備目標を定めたものである。
 
 
これによると、陸上自衛隊は陸上兵力一八万人、海上白衛隊は船艦約一二万四千トン、航空機二二二機、航空自衛隊は航空機一、三三二機に達することとなる……しかし、これでわが国の防衛計画が完成されるものでないことはいうまでもない。内外情勢の変化にともなって、随時に再検討されており、とくに軍事技術の進歩に応じて、新式武器の研究開発の促進ならびに、編成、装備の刷新を行い、防衛力の質的充実をはかることとなっている』(『目本の財政』三十四年度版二四〇頁)この防衛費の予算は、昭和三十四年度一、五三六億円、全算出予算の一〇・八%である。このように日本の戦カはいまや戦前の日本の戦カの何倍にもあたるほど厖大であるにかかわらず、日本では軍備をもたないという憲法が厳然としてあるなどということは、国民としては泣いても泣けない悲しい事実である」こう大内兵衛氏は説いているのである。
 
 
併(しか)し、国家が生命体である以上、生体が白血球を備えていて、外部から侵略してくる細菌に対して防衛カを発揮するのが「自然」であるのと同じように、世界になお侵略勢力がある以上それを防衛するための或る程度の軍備を国家が備えるのは最も「自然」のことなのである。現行憲法は平和憲法の美名の下にマッカーサーが日本弱体化政策の一環としての内容を示唆した憲法であるから、国家が生体として生きて行く上の、この最も「自然」な防衛力を破壊し、自然の法則を無視して、机上の理想論を盛り込んだものである。だからその条章には幾多の矛盾撞着があるのであり、生命体の白然行為として自然的にどうしても実行しなければならぬことを実行すると、すぐ「憲法違反」のそしりを受けることになっているのである。そして反対党が鵜の目鷹の目式に政府のやり方を監視して憲法の条章を楯にとって「違憲」として攻撃しようと思うならば、絶えずその政府は違憲呼ばわりか「憲法蹂躪(じゅりん)」の汚名を着せられねばならないことになっているのである。大体このような民主憲法を欽定憲法である明治憲法第七十三条によって制定したことが、明治憲法に対して違憲であったのである
 
つづく
 
 
谷口雅春著 「私の日本憲法論」より
 
 
※ 大内兵衛氏 東大教授 法政大学総長(マルクス経済学者)
 
 
 
 

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