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残された唯一の道
昭和三十一年
こうして憲法改定が三年後でないとどうにもならない事になった以上、私が常に主張している憲法復原の方向にこれをもって行くことによってのみ道がひらけるということを私は指摘したいのであります。
現行憲法が、占領政策上の一環として、占領軍のサーベルの圧力の下に、止むなく制定された法規の一つであることは既に論じつくされたことであるからここには論じないことにします。 最近共産党の松本三益氏が占領法規の一つである団体等規制令に付帯する不出頭罪で起訴され一応無罪の宣告を受けていたのが、今回更に控訴審で、東京地方裁判所の判決で、「免訴」の言渡しを受けたのである。起訴して無罪の裁決をするよりも起訴の根拠となる占領法規が無効であるからとて起訴すべからざるものとして「免訴」の判決を下したとは注目に価するのであります。占領中に占領政策として定められた法規は、占領が終わったと同時に効力を失うという判決であるから、占領法規たる団体等規制令は無効であるという判例が出来た訳であります。その判例に倣うならば、占領中に占領政策として定められたる基本法規たる憲法も、占領が終わったと同時に無効になっているはずであります。 そして日本が独立したと同時に日本のそれまでの明治憲法は自然に復活しているはずであります。然るに占領中の憲法が今日もその効力を持続するが如く行われているのは従来施行して来た習慣上、習慣法規としてその効力がみとめられているだけであって、その習慣を打ち切るという宣言を今まで政府当局がしないからに過ぎないのであります。では如何にして明治憲法の復活を宣言すべきかと申しますと、東京弁護士会の会員で東京裁判における荒木大将の弁護人であった菅原裕氏は次のようにいっていられるのであります。
「明治憲法は占領終了と同時に、法理当然復原しているのであるが、現実には、今日なお、占領憲法が不当にそのまま実施されているのであるから、まずこの現状に即応して、政府と国会は、現行憲法が占領終了とともにすでに失効し、明治憲法が当然復原したことを声明すべきである。これによって、現行憲法の無効が確定しても、公法行為はその性質上廻反して効力を失うものでないから、占領中の行為はもちろん、占領終了後、無効宣言までの公法行為の効力には、なんらの影響を及ぼさない。
なお、この声明は当然に失効しているものを、さらに形式的その無効を宣言するだけであって、いわゆる憲法改正ではないから、現行憲法第九十六条の手続を経る必要はない。同様に明治憲法の復原も当然復原しているものの宣言に過ぎないのであるから、これもまた九十六条の手続を経る必要はない」
上のように明治憲法を復原することは実に簡単な手続と一つの勇気とさえあれば出来ることなのであります。これは憲法改正の如くいろいろの議論で時間をかけた揚句、乱闘によって阻止される惧れなどもないのである。 占領法規が占領終了後無効であるとの裁判所の判決が出て、共産党の松本三益氏が「免訴」になった現在、占領終了後の占領法規無効を共産党に有利なことばかりに利用さることのみに甘んぜず日本国の在り方の基礎をハッキリさす上にも有効に利用して、先ず日本国の在り方の基礎を明記した明治憲法の復原を宣言し、しかる後、日本の現状や現在の世界の進軍に適しない条項があるならば、既に憲法調査会案も通過した訳であり、そのメンバーも定まった時であるから、その憲法調査会で、明治憲法を各条について審議し、若し不適正の箇条があるならば、明治憲法の改正規定たる第七十三条にもとづき、それを堂々と改正すればよいのであります。 谷口雅春著「私の日本憲法論」より
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