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 都民をおびやかすメーデーを護る

現行の憲法がいかに、正しい方の言論や行動を圧迫しているかについては、武藤貞一氏が『動向』誌の四十二年六月号の巻頭言において「何もかも憲法違反」と題して次のごとく書いている。

あれも憲法違反、これも憲法違反、今度は都公安条例のデモ取締まりに憲法違反の判決を下す『進歩的』判事が出たいまに殺人も放火も人間の権利だ、これを罰するのは人権憲法に背くといい出す気違いが出ないとも限らない。今や自民は、憲法を盾にとって攻め寄せる暴力団と、おしゃべりグループの前に生きた心地もない。『憲法』は油断もスキもならぬ良民の生活阻害者として大きく立ちふさがっている。

国を守る軍隊(自衛隊)、良民を護る警察が、憲法のわずかな隙間からしか手が出せぬ存在とあっては、もうなんにもいうことはない。ただ恐れ入るだけである。あの大道を埋めてあばれまわるジグザグデモが合意で、これを規制する警察の方が違憲だというんだから、この国の住にくさが、良民であればあるほど切実に頭へ来る」と。
 
 
誰でも正しい人で愛国者で、国を思う人ならば、このように考えるはずなのである。武藤貞一氏は戦争中、朝日新聞の、天声人語、欄を受け持って、その名文と警世の論策に一世を風靡した思想家である。ここに指摘されているジグザグデモのことは五月一日のメーデー当日のことであると思うが、革命系の美濃部知事が就任すると、東京都の治安を維持し、都民の安全を護る側の責任者である秦野(はたの)警視総監が、良民よりも革命側の行動の安全と便宜とをはかるために、つぎのような訓辞を、管下の署長会議の席上で与えたということが報ぜられているのである。

つぎは大東(だいとう)(じゅく)から発せられた準公開質問状による。
メーデー実行委員会と連絡をとって自主統制をすすめてもらい、適切な交通整理と効果的な広報活動で一般交通の確保とメーデー参加者の安全をはかること。

違法行為は大局的な視野に立ち、軽い違反や偶発的な小さな事犯は実害の程度、行為の悪質性をシッカリ判断して、できるだけ警告措置にとどめよ。

メーデーに反対する団体、個人が会場や各コースで妨害行動に出ることを十分考え、これらの行動を事前から警戒すること。社、共、各党、各種組織団体の幹部などの身辺警護にも十分注意すること。

以上のごとき三点に具体的指示を与えたいということである。しかるに大東塾塾長影山(かげやま)正治(まさはる)氏の「秦野警視総監に呈す」なる半公開詰問状によれば、重大な交通妨害デモが起こっているのである。
 
 
 
                                     谷口雅春著「私の日本憲法論」
 
 

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