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自衛隊は日陰者
昭和四十二年 もっとも現行憲法では「自衛隊は違憲だ」という立場に立って、あの恵庭(えにわ)事件の裁判の判決において、そのような判決が下されることを期待していた左翼陣の人々が多かったが、裁判長が、あの問題を憲法にまで遡ることを避けて「野崎兄弟が切断した自衛隊の通信線は、自衛隊法121条にある、自衛隊の…防衛の用に供する物、と当てはまらないから、もとより無罪である」という判決を与えたのであった。あの通信線は巨砲の射程距離を砲手に通信する重要な防衛上の武力の神経線を構成するものであるのに、裁判所がこんな判決をしなければならなかったのは、現行憲法の前文と第九条とを連絡して判断すれば、明らかに日本は、自衛権そのもの、をも放棄しているのであるから、憲法の条文の厳重な文理上の解釈からすれば、自衛隊そのものが、日蔭者的存在、になるからである。
私は一国を護る精鋭の自衛隊を、そんな、違憲だけれども、できてしまった、というような、日蔭者的存在、であらしめないためにも、「自衛隊が天皇直属の軍隊」となり、革命政府がもしできても、革命政府軍、にはならないように、ぜひ現行憲法を、帝国憲法に復元することが国家万世の謀事(はかりごと)のために必要だと考えるのである。
武藤貞一氏は言う。「吉田茂氏が明治人の感触のある男だったら、独立のその日に、占領憲法廃棄を宣言したであろう。吉田氏といえば、かれはこのごろになって軍備の必要性を強調している。かれにいわせると、日本は戦後軍備を禁止したおかげで経済復興を成し遂げた。しかし一応経済復興もした以上は、防衛力の充実は当然なさねばならぬ国民の義務だと。そしてかれは憲法には触れたがらない。現行の防衛力禁止憲法下でも、防衛力充実はできると考えているとすれば、かれにもまた憲法条文を読み返して見なさいと忠告せざるをえない…訊きたいのは、万が一にも最高裁という所で、違憲の判決を下すことがあれば、自衛隊を解消してしまう気なのかどうかである」と。この質問に佐藤首相から答えてもらいたいものだと思うのである。恵庭事件にせよ砂川事件にせよ、革命派は事あるごとに違憲だということに引っかけて、日本の防衛力にケチをつけようとしているのである。
現行憲法下では最高裁判所判事は政府が任命するのであるから、今後左翼系の政権が生まれて、その政府が、最高裁判所長官や判事を左翼系の法律案から選んでおいて、さて恵庭事件のような自衛隊の武器を傷つけるようなことを計画的にひき起こしておいて、それが起訴されれば、最高裁判所まで上告して、計画どおり「自衛隊は違憲であるから」という判決を最高裁でしたら、今の自衛隊は違憲のものは存在がゆるされないというので、即時解散になっても仕方がないのではないか。その時、日本が広島・長崎に原爆を受けて「防衛力がほとんどない」とわかったときにソ連が日ソ中立条約を破って一方的に宣戦布告してきたように、日本の自衛隊解散で「防衛力がない」と知るや、好機到来、としてどこかの国が攻めてきたら、日本はどうするつもりだろうが。
中共とはまだ平和条約を結んでいないから、いわば戦争継続中の中休みにすぎないのである。そして内部に中共に共鳴する第五列政党があるのである。ここまで考えてくると、現行の憲法の不備のままで、今後の日本は一体どこへ行くというのだろうか。夙夜(しゅくや)このことを考えて眠れない時があるのも、単に杞憂にすぎないと言いきれないものがあるのである。 |

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