久しぶりの本の殿堂の更新です。 遡ってみると、北方謙三の「水滸伝」を紹介して以来なんと三年ぶり。 ここまで、本はそれなりに読んではいたのですが、なかなか殿堂入りとまではいかないカンジもあり、、、。 今回は久々に自信を以てお薦めできる作品です。 本書は、1985年に起きた日本航空機墜落事故が主な舞台になっています。 悠木という群馬県の地方新聞の記者が主人公です。 悠木が社内の登山サークルの仲間と安西とともに谷川岳の難所衝立岩登攀へ向かう寸前に日本航空機墜落事故が起き、事故関連の紙面編集を担う日航全権デスクを任されます。 一方の安西は、衝立岩へ向かう途中病に倒れ植物状態になります。 後年、この衝立岩登攀を安西の息子とともに再度チャレンジする悠木が、墜落事故の報道にかかわった激動の1週間を回想すると言う形で物語は語られます。 520人もの犠牲者を出した世界最悪の大事故だったのですが、記者にとってはそれを報道すると言う事は、不謹慎な言い方をすれば、後世まで語り継がれる勲章になる訳で、それこそ命がけの報道合戦が繰り広げられてゆきます。 その中に、社内派閥の争いが絡んだり、部下である現場記者の反乱があったり、または病に倒れた安西の秘密が明らかになってきたりと、息をつかせない展開で話は進んでゆきます。 この作品の魅力の一つは、報道の現場での半端ない臨場感です。 実は作者の横山秀夫は、事故当時実際に群馬県の地方新聞の記者としてこの事故の報道にかかわっており、あまりにもリアルな描写もうなずけるところです。 この作品では、記者一筋に生きてきた男の生きざま、報道とはいったい何なのか、そんな事を考えさせられつつ、一旦はバラバラになった家族の再生の話だったりもします。 題名のクライマーズハイと言う言葉の意味ですが、登山中に興奮状態が極限まで達すると、恐怖心や疲労感がなくなってしまいとりつかれた様に山を登ってしまう事をいうそうです。 マラソンでのランナーズハイと言う言葉は有名ですが、その登山版と言う感じでしょうか。 ただ、途中でクライマーズハイが解けてしまうと、恐怖心でその先は1歩も登れなくなってしまうそうです。 この時の記者たちの狂騒は、まさにクライマーズハイだったのでしょうね。 そして、それが解ける瞬間も来る事になります。 話はかわりますが、ボクは移動の時は常に本を読むのですが、バスでの移動の時は、長い時間俯いていると気分が悪くなるので、10分ぐらい読むごとに何分か休憩を入れいるようにしています。 ところが、バスでこの本を読み始めたら、時間がたつのも気分が悪くなるのも忘れてしまったらしく、1時間目的地に着くまでぶっ通しで読んでしまいました。 それほど作中に引き込まれてしまっていました。 記者魂に賭けた男の生きざまに感動したいあなたにお薦めします。 ここからは競馬のお話です。 今日は今年最初のG1レース、ダートのマイル戦フェブラリーSです。 ジャパンカップダートを勝ち、去年のこのレースの覇者でもあるトラセンドがぶっちぎりの1番人気です。 このレースを連破した馬がいないというデーターもありますが、実はいままで連覇がかかった馬は全て1番人気では無かったのです。 つまり常に他に強力な馬がいたり、臨戦過程に弱みがあったりしていた訳で、ここまで死角の少ない対象馬は初めてになります。 穴党のボクでもこの馬が、馬券圏内から外れると言うのはイメージしずらいものがあります。 ただこのレースは、ほとんどの年で6番人気以下の馬が1頭は馬券になっています。 ダート初挑戦で重賞勝ちしたヤマニンキングリーと、1昨年2着のテスタマッタに注目です。 どちらも、力以上に人気を落としている気がしてます。 この2頭とトラセンドを絡めた三連単で勝負します。 それでは、皆様良い馬券を、、、。
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本の殿堂
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今回のお薦め本は、シャレにならないくらいの大作です。 なにせ全19巻、笑うしかないくらいの長さです。 しかし、あまりに面白過ぎで、あっという間に読んでしまいました。 水滸伝というと、中国の宋の時代を舞台に、108人の英雄豪傑が梁山泊という要塞に結集し、宋の国軍や盗賊と闘うという中国に古くから伝わるいわゆる豪傑譚で、著者もはっきりしていません。 ぼくも子供のころ読んだことがあるのですが、次から次にいろんな人が出て来て、なんとなくまとまりのない内容で、正直そんなに面白くなかった気がしてました。 実際、元書はストーリーに統合性がなく、初めに活躍していた人がいつの間にか出て来なくなったり、展開に無理があったりと、作品としてはあんまりいい評価はされていないようです。 しかし、そこは北方謙三、モチーフは受け継ぎながらも、一旦原作を解体し再構築し、ニューリアルした北方謙三版水滸伝として完成度の高い作品にしてしまったのです。 しかもただの英雄譚ではなく、ここでは志というのがテーマになっていて、男たちが腐敗した国家への反逆という志のために戦いそして倒れていく、そんな話です。 最近映画でも話題になったチェゲバラなんかが活躍するキューバ革命がモチーフにもなっているようです。 あくまで盗賊の類ではなく、新しい国造りのための反乱という位置づけで、108人の豪傑たちはそれぞれ反乱軍の将校や将軍として描かれています。 また、そのころ宋が専売としていた塩を、梁山泊軍が闇ルートで売買し巨額の利益を上げ、それを軍費にあてるなど、リアリティのある設定を用意し、その闇塩のルートをめぐる梁山泊と宋の熾烈な諜報戦なども描かれています。 108人のキャラクターにも北方独自の解釈付けがなされ、しかも108人揃わないうちに主要人物が次々と斃れていくなど、元書からするとほとんど禁じ手と言っていい事もしていて、元書とは別の北方謙三のオリジナルな作品に仕上がっています。 この人は、前にもこのコーナーでお話ししましたが、カッコイイ男を描かせると右に出る人がいないくらい素晴らしい筆力を持っています。 そんなかっこいい男たちが次から次へと現れ、そして惜しげもなく斃れてゆきます。 そして人が死ぬという事はどう生きたかということであり、人の死にざまや生きざまについて考えさせられる作品でもあります。 そんな面倒なものを抜きにしても、純粋に楽しめて次のページをめくるのがもどかしいような作品です。 これを読んでいた間の1ヶ月ほどは、他の事はなにも手につかず、読んだ後はしばし脱力感のようなものがあり、他の本が読めませんでした。 途方もなく長い話ではありますが、読んで損のない作品であると太鼓判を押させてもらう逸品です。 清水の舞台から飛び降りる覚悟で、チャレンジしてみてはいかがでしょう。
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タイトルを見ただけで、もうナンダカただならぬ雰囲気ムンムンですが、中身はもっと凄いです、とのっけからちょっと脅かしぎみに始めてみました(笑) 夢枕獏は、ウイキの言葉をまんま引用しちゃうと「密教ネタを散りばめたエログロの伝奇バイオレンスや、ひたすら男たちが殴り合う本格格闘小説を得意とする」そんな作家さんです。陰陽師の安倍晴明ものなんかも有名です。 ただこの作品は、そっち方面のものとはちょっと趣の違うものになっています。 いつものエネルギッシュな文体はそこには無く、静寂の中でストーリーが進んでいくような妖艶で耽美的な空気感が全編を通して漂います。 実は内容を一言で説明する自信がありません。 舞台は大正、詩人荻原朔太郎と愛人エレナ、妖しげな美貌の神父、記憶を失った地中に埋められた屍体、これらの人々(?)が織り成す妖しくもなまめかしい幻想の世界を描いたものなのです。 荻原朔太郎は、愛人エレナに恋焦がれるあまり、徐々に心が壊れてゆきます。 一方教会の香部屋には巨大な天使が浮かび、その天使に異常な愛を注ぐ美貌の神父が見守る中、甘美な腐臭を漂わせながら天使は文字通り腐ってゆきます。 記憶を失い地中に埋められた屍体は、何を求めてか彷徨います。 それぞれの話が謎をはらみながら進んでゆきますが、これらの物語が一つに交わる時、謎が解き明かされ、そしてカタルトロフィーが訪れ崩壊してゆきます。 まあ、こんな内容なのですが、これ読んでも何のことやらようわからんですよね(笑) ともかく荻原作朔太郎の詩の幻想的な部分を切り取って、まんま物語にしてしまったような作品です。 それにしても、巨大な天使を教会の香部屋に浮遊させて少しずつ腐らせて行くって、情景を思い浮かべただけで、なんか鳥肌ものですよね。 読んだ後、しばし放心状態だったのを覚えています。 最近生活に刺激が少ないとお嘆きの彼方にお奨めの作品です。 妖艶で神秘的な世界をご堪能下さい。
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今回のお奨めは村上龍の作品です。 村上龍というと、人間の欲望をストレートに表現する作風というイメージがあります。 村上春樹と同じ時期に人気を博して苗字も一緒ってことで、セットで紹介されたりする事も多いようですが、作風は真逆といっていいでしょう。 実際村上龍の作品には、再生がテーマになっている作品でも破壊、退廃、欲望といったインモラルな空気が漂ってしまうのが多いようです。 で、この人の代表作と言われるものは、ほとんどそのグループだったりします。 しかしこの作品は、村上龍には珍しく前向きで希望の光に満ちた作品になっています。 数は少ないのですが、この人は案外こっち系でも飛び切りいい作品を書いているのです。 この話の主人公は、イベントプロデューサーで世界をまたにかけ仕事をしており、それなりにお金もあり 可愛い不倫相手なんかもいて、ある意味満ち足りた生活を送っています。 欲望が満たされていて初めて次のテーマへいけるあたり、村上龍らしいっちゃらしい発想です。 でこの主人公、ゴルフの腕はイマイチなのですが、こんな風に考えています。 ゴルフは2打目が大切だと、1打目は勇気があれば誰でも打てる、1打目失敗しても起死回生の2打目をどう打てるかどうかだと、勝負どころの3打目に向かう為にも2打目だと。 そんな主人公に新しい大きな仕事が舞い込みます。 ところが、トラブルに次ぐトラブルで、考えられる限り最悪の第1打目になってしまいます。 果たして起死回生の第2打目をかっ飛ばす事ができるのか、、、。 ざくっと言ってしまえばこんな内容です。 正直、話の展開にはやや強引なところがあり、一部では、教訓みたいなものにおんぶしていてテーマに深みがない、なんて評もあるようです。まあ、その他の村上作品に比べれば確かに言えなくはないですが、、、。 ただ、この作品には、他の村上作品ではめったに見られない、読後の爽快感があります(って、他にどんだけ後味悪い話ばっか書いてんのってことでもあるんですが、笑)。 読後に、困難に立ち向かう勇気がふつふつと沸いてくるような作品に仕上がっています。 ちょっと日々の生活に行き詰まっているなとお嘆きのあなたや、なにか壁にぶち当たっているという自覚のあるあなたに特にお奨めです。 久しぶりのお奨め本の更新になってしまいました。 実は最近あまり本を読めていないのですよねー で、このコーナーでも過去に読んで良かった本の紹介になっています。 実際あんまり昔の本過ぎて、本屋へ行って、もう在庫がないなんて言われかねないのもあるようです。 これからは、もっと最近の本や読んだばかりの本なんかもアップしていけたらなーなんて思ってます。 では皆様、よい読書の夜をお過ごし下さい。
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はじめに断わっておきます。この作品をエロ小説と勘違いしている人がいるようです。 確かに、昔懐かし日活のロマンポルノでポルノものとして映画化された経緯が有り、そんな誤解を受けてもいるようですが、まあ読んでいただければよくわかると思います。 この作品を描いた橋本治というひと、椎名誠や林真理子らとともに、昭和50年代後半から60年代にかけてムーブメントを起こした昭和軽薄文体の旗手としても知られています。 最近流行りのライトノベルズと言われるジャンルのはりしだったでしょうか。 で、この作品なのですが、女子高生榊原玲奈が、一人称で語る微妙に屈折しながらも変に屈託のない(矛盾した表現ですが)高校生活を描いたものです。 5つ短編からなる連作集になっています。 作品の空気をわかって頂けるように冒頭のシーンの一部をあっちこっち紹介しちゃいます。百聞は一見にしかずともいいますもんね。 (大きな声じゃ言えないけど、あたし、この頃お酒っておいしいなって思うの。黙っててよ、一応ヤバイんだから・・・・その点日本酒はねえ、いいんだ、トローンとして、官能の極致、なーンちゃって、うっかりすると止められなくなっちゃうワ。どうしよう、アル中なんかになっちゃったら。ウーッ、おぞましい。やだわ、女のアル中なんか。男だったらアル中だってもまだ見られるけど、女じゃねえ。今から男にもなれないし、いいけどね。マ、そんなもんなのよ、高一って。) こんな具合にナンダカナアな、高校生活が語られていきます。 主人公の本音でリアルな心理描写がまた絶妙で、いろんなものを辛口の言葉でばっさばっさと斬りまくって行きます。読み始めたら、桃尻ワールドに病みつきになること請け合いです。 その他、なーんにも考えてない美少年磯崎クン(無花果少年)、ホモセクシュアルの木川田クン(瓜売り小僧)、不思議系お嬢様醒井サン(温州蜜柑姫)など、気になるキャラが次々に登場し、万華鏡のようにフツーでヘンテコな高校生活を繰り広げて行きます。 この作品が出た後、登場人物のその後はどうなんのよ、という声が全国津々浦々から寄せられ、続編が次々と書かれて行き、主人公玲奈が浪人時代を経て大学生になり、最終編では30代人妻になった玲奈が登場します。 映画にしろ小説にしろナントカ2とかいう続編ものは、大概1作目より駄作になってしまうのが常ですが、桃尻は、物語のボルテージは少しも落ちることがなく、一部では青春大河ドラマなんても評されることになります。 この作品が書かれたのは、日本中がバブルに浮かれていた1980年代ですが、古臭さは微塵もなく、今も昔も女の子って元気で残酷やなあと思わされる作品です。 なんかこの頃だるくってねぇ、とお疲れの貴女、最近ノリが悪くなってきたと自覚されている彼方に特にお薦めです。 面白くて、うんうんそうそうと共感できて、少し泣けて、とっても元気になる、そんな作品です。
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