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雪子は高校2年生で、十六歳と三か月だった。
季節は秋で、道ばたに降り積もる層となった赤い枯葉が、ふゆを思わせる北風に音をたて、
耳をすませば、かえでの枝の最後の一はが舞い落ちる音さえ聴こえてきそうなほど十一月の夕刻は
うつくしく静かだった。
雪子の通ってている高等学校は県下でも有数の進学校で、やがて高校三年生ともなれば、
受験色にそまっていくことが、当然のことであり、雪子もまたホンの少しよそみをしてるまに周囲の生徒たちが
先へ先へと歩を進めて行ってしまう圧迫感におおわれていたのだった。
その朝は秋の雨がおだやかにふりそそぎ、教室からのぞく一本杉の立ち姿が、しずかな余波をはなっていた。
あたりが白く照り光り、雪子は黒板に書かれた微積分の公式をしばらくながめていたが、
諦めると、一本杉にひとみをこらした。
雪子に友はいなかった。
しかし、そのことが、かえって雪子に雪子らしくあることを許してくれたのだった。
雪子は夢を見ていた。
窓際のガラスの向こうで11月の雨はふりしぶき
気付くと雪子は教室から姿を消していた。
瞬間移動だった。そのことにきづいてくれた友はいない。
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雪の降る街
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