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「この子って、ホントにわたしの娘?」
「クーニャンが、そう、言ったの?」
落ち着け、わたしの心臓。これくらいでどきどきして、どうする。
卒園式で「送る言葉」を読む代表になったエリカ。
ごほうびにドレスをプレゼントした帰り道・・・。
そ〜っと指先をぬらし、わたしの手にさわってきたエリカが、
心を読んだ直後に言った話!
『あのね、ママ。クーニャンがけっこんしたいって!』
「クーニャンが、そう、言ったの?」
『そうだよ。けっこんしきは、春をすこし、すぎたころだって』
「で、どうやって、おむこさんを、さがすの?」
『社長さんが、クーニャンを買ってくれたお店で!』
うん。筋は通っている。
時々わからなくなる。これは他愛ない、エリカの想像したお話の続きなのか、
それとも、本当に(クーニャンの希望)なのか。
そんなときは、わたしが少し疑っていると表情を読んだときは、
エリカは決まって、笑顔でわたしの顔をのぞき、にこっ・・・と笑った。
(だいじょうぶ。なんでもきいて?)
・・・というわけだ。
「人間はね、お見合いっていうものをするんだけど、クーニャンもする?」
『相亲・・・シーアンクィン・・・だめだぁ〜。クーニャンみたいに
じょうずに言えない・・・。あ、ごめんなさい。春が、あたたかくなったらね』
「ね、エリカ・・・。今の(シー)なんとかって、もしかして(お見合い)?」
『うん・・・。でも、じょうずにまねできないから、パパに聞いてね』
(パパにだって、わからないわよ、中国語のお見合いなんて・・・)
ためらうのはこういうときだ。どう考えたって、5歳児の作り話を
はるかに越えているのだもの。
「ねぇ・・・エリカ。どうして春が暖かくなってからなの?
今はだめなの?」
『あのね、暖かい春になると、おとこの金魚さんに、白いおひげがはえてくるの。
それが、いちばんにあって、りりしい金魚がいいんだって』
「白い、おひげ!?」
ねぇ、金魚って、オスにおひげがあった? それも、白いヒゲ?
いやだ、サンタクロースしか浮かばないよ〜。
『だいじょうぶ、だいじょうぶ。クーニャンが、じぶんでえらぶから』
いつものように(にこっ)とすてきな笑顔を見せて、エリカはわたしの背中を
軽く指先で打った。わたしのクセが、確実に娘に伝わっている。
(それはそれで、感動〜)と喜んでいたら、エリカがきいてきた。
『ねぇ、ママ。(りりしい)って、どんなこと?
クーニャンが、そう言ったんだけど、わたし、わからない』
「クールビューティのことかな・・・」
と言った瞬間、エリカはその言葉を日本語にした。
『クールでかっこいい、イケメンさん・・・なんだね』
自分の産んだ娘・・・なんて、恩着せがましくこだわっているわけじゃない。
わたしはふしぎでたまらない。これが、わたしの娘なの?
わたしがわが子に望むことと「育児日記」に書いた、最高、究極の資質は
「どんなところに堕(お)ちても、汚れない魂の子」・・・だった。
でも、現実は、人は、こどもは、ちょっとしたことで傷つき、逃げ出してしまうもの。
エリカに「ニュータイプ」の力が覚醒するためには、何かの、
大きな出来事が必要なのだろう。
わたしは知らなかった。その大きな出来事が
「わたしの死」にかかわっていることを!
そのときは、まだ・・・。
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