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エリカが朝からはしゃいでる。
BBQのせいでもない。特級鯛、いえ、特救隊の大人を待ちながら。
言葉をとらえる感覚が鋭くて、時には面白いから、大人はみんな彼女が好き。
耳や心ではねまわる言葉を聞くのは、男って、好きだから。
小学二年で、もう、大人にすぐに囲まれている。
娘のそんなとこ、わたしも愛してる。
金魚と話せた子、小川で魚と話せる子。
「水」をクッションにして、コミュニケーションをとれるのだから、すごい。
「お〜い、準備、できたぞ〜」
開けたドアから芝生の匂いがした。
雨上がりの、草の香りと、ピーマンやマシュマロの匂い。
・・・やっぱりエリカはわたしの子。変わってる。いい意味でね。
「おじゃましま〜す」と水野さんは、数組の「バディ」を連れてやってきた。
もうエリカは、みんなの中で笑っている。そして、「特救隊」の意味を
すぐに尋ねていた。
「"That others may live"・・・、いつでも、どんな人もだよ」
水野さんが隊のモットーを話すと、エリカは笑顔になった。
今日は初めての女性隊員が、その説明をふしぎに思ったのか、
補足しようとしたのだろう。口を開けた瞬間、エリカが答えた。
『他のために、生かすために、救うために・・・だね』
水野さんは、笑顔のままでエリカを見つめ、女性隊員に耳打ちした。
(このくらいの英語は、この子、朝飯前なんだ)
「おいおい、訪問したら、まっ先、ご主人にご挨拶だろう?」
ソーセージを串に刺したまま、夫がすねてみせる。
「ああ〜、先輩? 後姿、すごく太ったから、わかりませんでした」
「こいつ〜、これでも救ってろ」
飛んできたソーセージを、水野さんは(パクッ)と口でとらえた。
エリカは大拍手。まさか、オットセイがくわえたって、思ってないよね?
軽口をはずませながら、夫と水野さんは1年ぶりの再会を喜んでいる。
大人の仲のいい友達っていい感じ。去年のキャンプは本当に楽しかった。
「コールがあったら、すぐ飛んで帰るのか?」
「今日は、午後から第二待機。急いで食べますよ」
「そうか、二時間以内だな」
「エリカちゃん、元気になりましたね」
「そうだ。クーニャンの死を、やっと乗り越えたみたいだ。
(死ぬことも、生きることに、入ってるの?)と聞かれたときは
驚いたよ」
「そうですか…。直球ですね。真実をえぐってきますね」
『わたしねぇ、水野さんって、鯛ににてるのかなって、思ったの。
でも、イルカさんににてて、うれしい』
(だから、エリカ、特級鯛…は忘れなさいって)
「それって…喜んでいいのかな、それとも…」
もちろん、エリカの一番好きな「海獣」。喜んでいい。
夫は獣医。海のドクター。「海獣医」。
(パパは「怪獣のおいしゃさん」!) とはしゃいでた日を思い出す。
…わたしって、昔を思い出す回数が、多くなっている。
「ゆるやかな人生の走馬灯」が、もう始まってるのかもしれない。
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