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「エリカちゃんが決めていいよ、何かして、遊ぼ?」
水野さんはエリカを気に入ったようだ。
ご機嫌をうかがっている。
隣の夫の表情がイマイチ。
「何よ、ジェラシー?」
「バカ言え…。しかし、なんだな、
オレも普通の父親だってことだ」
何よ〜、いきなりで、わかんない。
「娘に近づく男には、殺意が湧くってことさ。
それが、ハイハイする赤ん坊でも、ジジイでも」
「あ〜、それ、わかる」
「おまえも、殺意?」
「違うわよ、こんな天使を前にして、なんてことを」
「お前は今、オレの右にいる。前になんかいない。細かいけど」
ハハハ…夫が嫉妬でおかしくなっている。
「5年生の頃ね、家で自由研究まとめるのに、夏休みよ、
たくさん来て、騒がしかった。なのに、ひとり減り、ふたり減り、
三日もしないうちに…」
「男がみんな消えていた、だろ?」
「そうなの。どうしてわかった?」
「お義父さんが挨拶をしたんだ、一人ずつ。強く、挨拶」
「ビンゴ! 理由聞いたら、みんなそう言ってた」
「ボクも言われたよ」
おっ。(オレ)が(ボク)に変わった。
今でもそうなんだ。
父のことを話題にすると、言葉が丁寧になる。
よほどに恐いんだ。
「ボクも、挨拶されたからさ、強く」
「ちょっと〜。脅しをかけたって聞こえるけど」
「まさか、お義父さんに限って、NOだよ。
だから強い挨拶、脅しより少し強めのな」
そうか。父も、娘を愛してたんだ。少し「強めに」。
だから、世界の娘たちは、早くに父親から独立する。
そんな「愛の見守り」を、支配や干渉と誤解して。
正しい誤解だけど、ね?
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