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★冬の始まった休日。大型家具店から、女の子が出てきました。
 3年生くらいでしょうか、何かをしっかりと胸に抱きしめています。

 すれちがいながら見ると、「イス」です。パイプのイス…。
 折りたたみができる、座るところが小さく丸い「イス」。
 全体が「まっ白」。すがすがしい「白」でした。

 パパは先に車に向かい、並んでいたママは、遅れている娘を
 ふり返っています。

 (早くきなさい)…でしょうか。 

 声をかけようとして、ママは、やめたようです。
 女の子は、ゆっくりと歩いていました。胸に抱きしめたものを
 落とさないように、抱きしめすぎて、壊さないように、
 そ〜っと…そ〜っと歩いていたのです。

 冷たい風にほほを赤くしながら、いえ、北風のせいばかりでは
  ないでしょう。

 新しい、白いイスは、女の子に、あこがれと夢…をくれたのだと
  思います。 彼女が抱きしめていたのは、「イス」ではなくて、
 「夢」…「あこがれ」。

 落とさないように、抱きしめすぎて壊さないように、
   大事そうに歩いているのでしょう。

 その「夢」を部屋に置いた時、ぱ〜っと広がる「あこがれ」は、
  彼女の数日を、確実に 幸せにしてくれるのです。

 何かを言いかけて、やめてしまったママは、娘と同じ
  こどものころ、やっぱり 「あこがれ」を抱きしめていたと…
  思い出したのかもしれません。

 まだ離れている娘を待ちながら、ママの表情は、女の子と
   同じく、幸せ色になっていました。

 女の子は
大事そうに「白いイス」をかかえながら、歩いています。
 お店の袋にも入れず、ただかたすみに「シール」を貼っただけの
 「そのまま」で。

 余計なもので、自分の「夢やあこがれ」が包み込まれて
 しまうのが…イヤだったのかもしれません。

 ほほを赤らめながら、ゆっくりと歩いて、やっと自分のそばに
 来た娘。ママは、その気持ちをすべて理解したように、

 「こらっ、早く歩いて来い!」と かがみこむように娘のほほを、
  つつきます。そのとき初めて、女の子は「ふ〜」…と息を
   吐きました。息を止めたまま…「イス」を抱きしめていた
   のでしょうか。

 二人の吐く息が、冷たくリンと光る空気の中で、短く、白く、
  色づいていました。

 「なんだよ…、二人でおんなじ顔をして・・・。パパも仲間に
   入れてくれよ」

 「ヤだよね〜。女の子だけのヒミツだもね〜」

 ママのおどけた声に、(ふ〜っ)と少女は笑顔になりました。
  笑い出すパパとママを、交互に見上げながら、女の子の両手は
  しっかりと「白いイス」を抱きしめていました。

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愛理
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