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 『イヤな女を脱ぎ捨てて・・・何に着替えよう?』


 おどおど、びくびく、めそめその少女時代を過ごしたわたしに、鉄則がある。

 シンデレラのように、会う人会う人、見ることすること、なんでもに問いかけていた。

 「わたしを新しい世界に連れ出してくれるのは、この人?」

 そして、心配になって、自問自答。不安が大量に押しかけて、ノックダウン。
 吐き気もあって、3日寝込んでいると、自家中毒とか診断されて、おしまい。
 「レモネード」を飲まされ、学校へ行かされた。

 公園のベンチでひとりしくしくしてると、正義の味方が現れて、
 少し離れてベンチに座る、わたしの初恋の人、園長先生だ。

 近すぎない、遠すぎない、いい距離で見守って、夕日を見てた。

 そのまま黙って座っていたことも、思わず走って
 アドバイスをもらったこともある。

 「シンデレラは、王子様を何日待ってたの?

 変な質問。どこにも書いてない。わたしがきかれたら、熱、出しちゃう。
 でも、この人は、どんな問いかけにも答えてくれた。

 「待ってないよ」

 「えっ?」

 「掃除したり、水をくんだり、食器をみがいたり、してただろう?」

 そうか、こき使われてたんだった。

 「じゃあさ、じゃあさ、働くのがイヤになって、それで、それで・・・」

 「病気にならなかったのか?」

 この人も、ニュータイプだ。心が読める!

 わたしは思い切り首をふって、うなずいた。声を出すのも忘れて。

 「考えない。待たない。いつもの仕事を懸命にするだけ」

 「それって、イヤ! つまらない! すごく、さびしい・・・」

 「シンデレラは知っていたと思うよ。
 働くことのうれしさを、仕事を工夫することの楽しさをね

 「どうしてそんなこと!・・・先生に・・・わかるの」

 思わず声が大きくなった。だって、そこがポイントだったんだもの。

 イヤなことをするだけの毎日はつらい。毎日みじめだ。

 「シンデレラって、イヤな女?」

 「ううん。いい人。気持ちがすてきな人・・・」

 「気持ちのステキな人は、イヤだ、イヤだって思いながら生きてる?」

 「ううん。イヤだ、イヤだって思ってたら、イヤな人になる・・・あっ!」

 仕事をさせられてると思ったら、イヤになる。

 イヤだ、イヤだと思っていたら、もっとイヤになる。

 どんどんイヤな女になっていく・・・。

 そうか。イヤだって、思わなきゃ、いいんだ!

 仕事を・・工夫して、楽しいことを見つけて、うれしくなる!

 シンデレラって、王子様を待ってなかったんだ。

 「先生・・・わたしのこと、嫌い?」

 「どうしてそんなこときくの?」

 「だって・・・わたし、イヤな女の子だよ」

 「そんなこと、先生がいつ言った?」

 「ううん。わたしが、いつも、思ってるから・・・」

 「自分が思っていると、先生もそう考えてると思うの?」

 「ううん。わたしが自分の頭の中で、思ってるの・・・あれっ?」

 なんだか、熱いものが、こみあげてきた。
 のどのところで止まって、もう少しで口から飛び出しそうだった。

 「自分のことを思って、だれかのことも思って、頭の中がいっぱいだよね。
  それって、疲れない?」

 「疲れるよ、すごく!だからイヤなの。もう考えたくない!」

 「じゃあ、考えるのは、もうやめよう。他人のことも、自分のことも」

 「それって、無理だよ。人間は、考えるアシだって、学校で・・・」

 「シンデレラは?」

 「イヤだって思わなかった。工夫して、楽しいこと、見つけて・・・」

 「わかってるじゃないか。疲れない方法を」

 あっと、また思った。

 考えるより・・・工夫する。考えてないで・・・見つける!
 1歩前に、進んでるんだ。

 だから・・・待つことはやめた。ムダに考えることも。

 大切なものなら、出会ったときに、始まるものがある。
 それに乗ればいい。

 何も始まらないなら・・・考えない。

 それが「悪い」ものなら、わたしをどんどん小さくして、
 せまっ苦しい女にする。

 「良い」ものなら、わたしをどんどん解放して、いい女にしてくれる。

 だから・・・「いい女にしてくれるかどうか」、それが鉄則。

 「また夕焼け、いっしょに見てくれる?」

 「ときどきはね。でも、あしたの朝日をいっしょに見る人を増やそうよ」

 初恋の人がそう言ったから、一緒に朝日を見る、最高の人と結婚した。

 エリカと並んで朝日を見ていると、手を合わせたくなる。

 『何してるの? ママ・・・』

 「はつもうで」
 
 『そうだね。人生で、初めての「今日の朝日」だものね』

 (今、夏だよ)とも言わず、(ヘンなの)と笑いもしない。

 こいつ・・・ますますニュータイプだ。

 『クーニャン、りりしいイケメンを選ぶ』


 エリカが恥ずかしそうに耳に告げたことを、店長はうなずきながらきいていた。
 訂正はひとつもなかった。
 ・・・ということは、すべて、正解? 

 あそこのかたちやフンの太さ、ほほのおひげも?

 小さい子の動物相手に話すのは、すべてが「想像話」、
 全部その子の思いつきから出てる。
 
 人形も、花も、空も、海も、それを相手にすることで生まれてくる、
 その子の発想の豊かさ。

 でも、「次亜塩素酸・・・」にしても、金魚が「中国生まれのメス」だってことも、
 金魚の「オス」だけを選んで、クーニャンにお伺いを立てるのも、
 それをはるかに越えている。

 わたしにはわからない。だから・・・

 「そういうものなんだ、エリカって女の子は」

 と思うことにした。

 確かに、2,3歳の頃のエリカのように

 「どうして?どうして?」

 を連発したい心境だけれど、エリカには、まだ、
 大人のわたしの質問ぜめに対抗できる理性も体力もない。

 親がわが子を威圧してどうなる? ねえ。 

 親のおしつけの権威なんて、こどもが体力や強い言葉を身につけたとき、
 簡単に崩れる。

 それよりも、こどもの心に、雪のように降り積って、尊敬と一緒に
 そこはかとない威厳を思う気持ちが育つなら
 それが一番自然で、普遍のものだろう。

 わたしがそんな思いを巡らせているうちに、「クーニャンのお見合い」は
 終わっていた。

 店長がエリカの選んだ、いえ、クーニャンが選んだ

 「りりしい、一番おひげの立派なイケメン」を

 「ホーム」の中で泳がせたらしい。

 二匹は完全にお互いを認め、ずっと昔から友達だったように
 泳ぎだしたという。ここに、めでたくカップルが誕生した。

 店長がしきりにエリカを勧誘している。中型のプラスチックの池と、
 それを加工する人口の石セット。
 
 たまごを産みつけるための「水草」のたばを、次々と夫に渡しながら・・・。

 「ねぇ、エリカちゃん、大きくなったらさ、このお店でアルバイトしない?
  お魚と話せる女の子なら、バイト代は3倍出すからさ」

 『いいですよ。大きくなったら、ですね』

 5歳にしてバイトのスカウトをOK? エリカって、大人受けが最高にいい。
 わたしの子供時代とは大違いだ。

 (えっ? なに、これ? 池、作るの?)

 そこで、わたしはやっと目が覚めた。ここはお魚専門店「フィッシュランド」。
 金魚のクーニャンの結婚相手を探しに来たのだった。

 「ねぇ・・・池、作るの?」

 わたしは夫に近づいて、そっと聞いた。

 「ああ。エリカが言ってただろ? クーニャンの結婚、クニャンの引越し・・・って」

 あ、そうだった。結婚したら、新しいおうちで暮らしたいって、
 クーニャンがそう言ってるって!

 池を持ったまま、レストランに入るのは難しい。こんなことは計算外だった。

 しかたがない。オープンカフェで軽食をいただく。

 そのあと公園のベンチでアイスを食べ始めたとき、エリカが叫んだ。

 「いやだぁ、もう・・・。ママ、持って! わたし、もう知らない。クーニャンなんか」

 え? ええっ? なに、絶好宣言なんかしてるの? 親友同士だったのに。

 「どうしたの、エリカ。仲良しを見捨てるの?」

 『だって・・・静かにして! 指、入れないで! 

  わたしたちをふたりにして! 話をきかないで!

  そう言って怒ったんだよ。もう!』

 嫉妬、なの? エリカが嫉妬してる? エリカの心に「嫉妬」が生まれてる。

 わが子が成長するのを目の前で見られるのは、こんなうれしいことはない。
 それが「心の成長」だったときは、100倍うれしい。

 「なんだよ・・・エリカが腹を立ててるのを見て、うれしそうじゃないか」

 それに気づいて夫が笑いかけてきた。

 「そうよ〜、すごくうれしい。エリカが2歳のとき、(昨日・今日・明日)の時間軸が
  彼女の中で明確化したとき以来だわ。ついさっきまで

 (あした、パン、たべたよ)とか

 (きのう、こうえんに、いこうね)って、まるでおかしな言い方をしてた。

  でも、その瞬間、顔つきが変わって、こう言ったのよ。

 (きのう、パン、食べた?・・・あした、こうえんに、いくの?

 わたし、みんなが見ている前で、ぼろぼろ泣いた。
 
 エリカが(昨日・今日・明日)の意味を悟った、その瞬間だったんだもの」

 「母親には・・・かなわないな。オレが唯一自慢できるのは、
  エリカの初オナラだもんな」

 「あっ! 初めてでっかい夫婦げんかしたときだ! 

  わたしが買い物に出かけたとき、エリカの初オナラの現場にいたのに、
  録音しなかったんだもの」

 「それって、無理だって言ったのに、マイクをお尻にとめておけば
  いいでしょうって、すごい剣幕だったよな」

 「そうよ。次にオナラしたときは、あるのは悔しさと腹立たしさだけ。
  本当に悔しかった」

 「忙しい、とか言って、食事は、お茶漬けときゅうりの漬物だったよな。
  力が出なかったよ」

 昔をなつかしんでいると、エリカが歩き出した。池をかかえて、ふらふらと。

 『ママ、パパ! 帰りますよ! 帰ってすぐにお池を作ります!』

 怒ってる。クーニャンを家から追い出すの?

 これはけっこう長引くかも。

 エリカは「への字口」。

 夫婦は「ニヤニヤ」。

 おかしかった。



 「クーニャン式、オスメスの見分け方


 『エリカちゃん・・・エリちゃん・・・っちゃん・・・っちゃん・・・ぁちゃん・・・
  ははは! かあちゃんだって! まだ5歳なのに』

 リビングから、またエリカの、クーニャン相手の笑い声が聞こえてる。

 ふしぎな感じ・・・。2,3歳のエリカがそうしてるなら、文句なしにほほえましかった。
 でも、5歳の今は、赤ちゃんぽい、と思っている自分がいる。

 親とは・・・こんなに身勝手なものか。

 エリカはおもちゃをほしがらない。絵本も、靴も、バッグさえも。
 だから、卒園式のときのロングドレスには、狂喜乱舞(死語なの?)だった。

 ステキなお人形さえ、軽く髪をなでて、ほほをつんつんしただけ。
 気に入った絵本は、てのひらを絵本にあてて、す〜っとスキャンする。
 それでいいらしい。

 でも、家についてから、そのお人形につけた名前で「想像遊び」をして、
 ブックセンターでスキャンした絵本を、自分で作りだす。

 まるで、保有しない。だから、彼女の部屋は、いたってシンプル。
 女の子、らしくない。

 女親としては、少し、さびしい・・・かな。

 そんなエリカが、「フィッシュセンター」では、顔を赤らめたことがあった。
 もじもじして、緊張で肩をすくめ、わたしに言うのも照れていた。

 わたしが質問したからだ。

 「どうしてそれが、オスだって、わかるの?」

★年長組になって数日、水ぬるむころ、わたしたちは家族そろって出かけた。
 クーニャンも一緒だった。夫が水族館のスタッフと共同で作った、

 「お出かけハウス」に入って。

 小さなこどもの両手におさまり、重くもなく、軽くもない、厚手のプラスッチク製。
 密閉されていて、中にあるのは、水草とクーニャンとバクテリアだけ。

 水草は、光合成の結果としての酸素を放出。クーニャンは呼吸をして
 水草を助ける。
 
 単純だけれど、必要十分な画期的な世界。

 車のルーフウインドウのように、上にスライド式ドアがあって、
 エリカが指を入れたり、クーニャンや水草を出し入れするのに便利だった。

 お店に1番に入ったエリカは、しずしずと歩いていたが、クーニャンの仲間を
 大勢発見、おたけび(?)を上げていた。

 興奮した顔で、ミニ水槽「お出かけハウス」を突き出して、

 『さあ、クーニャン。どの彼がいいの?』

 少し動き回って、(これ?)・・・(これ?)ときいている。
 あきらかに、金魚を選んでる。

 「さすが、ドクターのおじょうさんですね。きちんと(オス)を見分けてる

 店長の言葉に夫が頭をかいた。

 わたしにはわからない! 金魚の性別判定なんて。
 そんなことより、どうして5歳の彼女にそれができるのかが、
 ふしぎでならなかった。

 「どうしてそれが、オスだって、わかるの?

 『クーニャンが、教えてくれるの。イケメン金魚さんを・・・』

 「それから?」

 わたしだってエリカの母親を5年続けてる。わが子が、
 そんな単純なことだけで行動する子ではないことを知っている。

 誰かにきかれたら、すばやく答えられる理由を、いくつも学んでいるはずだ。

 『ほっぺのおひげがりっぱで・・・それとね・・・』

 このときだ、エリカはみんなにきかれることを恥ずかしがって、
 わたしの耳にそっとささやいてきた。

 店長がエリカの後ろに近寄って、それをきいていた。

 『(あのね・・・おしりの・・・あそこのところがね、女の子より、ほそいの。
 
  それと、女の子の・・・ウンチより、男の子のウンチのほうが、
  やっぱり、ほそいの・・・きゃっ、はずかしい!)』

 (ええっ、あそこの形で性別がわかるの? 
 
          ウンチの太さで?
 
                  女のほうが・・・ウンチが太い!?)






 「この子って、ホントにわたしの娘?」



 「クーニャンが、そう、言ったの?」

 落ち着け、わたしの心臓。これくらいでどきどきして、どうする。

 卒園式で「送る言葉」を読む代表になったエリカ。
 ごほうびにドレスをプレゼントした帰り道・・・。

 そ〜っと指先をぬらし、わたしの手にさわってきたエリカが、
 心を読んだ直後に言った話!

 『あのね、ママ。クーニャンがけっこんしたいって!』

 「クーニャンが、そう、言ったの?」

 『そうだよ。けっこんしきは、春をすこし、すぎたころだって』

 「で、どうやって、おむこさんを、さがすの?」

 『社長さんが、クーニャンを買ってくれたお店で!』

 うん。筋は通っている。

 時々わからなくなる。これは他愛ない、エリカの想像したお話の続きなのか、
 それとも、本当に(クーニャンの希望)なのか。

 そんなときは、わたしが少し疑っていると表情を読んだときは、
 エリカは決まって、笑顔でわたしの顔をのぞき、にこっ・・・と笑った。

 (だいじょうぶ。なんでもきいて?)

 ・・・というわけだ。

 「人間はね、お見合いっていうものをするんだけど、クーニャンもする?」

 『相亲・・・シーアンクィン・・・だめだぁ〜。クーニャンみたいに
  じょうずに言えない・・・。あ、ごめんなさい。春が、あたたかくなったらね』

 「ね、エリカ・・・。今の(シー)なんとかって、もしかして(お見合い)?」

 『うん・・・。でも、じょうずにまねできないから、パパに聞いてね』

 (パパにだって、わからないわよ、中国語のお見合いなんて・・・)

 ためらうのはこういうときだ。どう考えたって、5歳児の作り話を
 はるかに越えているのだもの。
 
 「ねぇ・・・エリカ。どうして春が暖かくなってからなの? 
  今はだめなの?」

 『あのね、暖かい春になると、おとこの金魚さんに、白いおひげがはえてくるの。
 それが、いちばんにあって、りりしい金魚がいいんだって』

 「白い、おひげ!?」

 ねぇ、金魚って、オスにおひげがあった? それも、白いヒゲ?
 いやだ、サンタクロースしか浮かばないよ〜。

 『だいじょうぶ、だいじょうぶ。クーニャンが、じぶんでえらぶから』

 いつものように(にこっ)とすてきな笑顔を見せて、エリカはわたしの背中を
 軽く指先で打った。わたしのクセが、確実に娘に伝わっている。

 (それはそれで、感動〜)と喜んでいたら、エリカがきいてきた。

 『ねぇ、ママ。(りりしい)って、どんなこと?
 クーニャンが、そう言ったんだけど、わたし、わからない』

 「クールビューティのことかな・・・」

 と言った瞬間、エリカはその言葉を日本語にした。

 『クールでかっこいい、イケメンさん・・・なんだね』

 自分の産んだ娘・・・なんて、恩着せがましくこだわっているわけじゃない。
 わたしはふしぎでたまらない。これが、わたしの娘なの?

 わたしがわが子に望むことと「育児日記」に書いた、最高、究極の資質は

 「どんなところに堕(お)ちても、汚れない魂の子」・・・だった。

 でも、現実は、人は、こどもは、ちょっとしたことで傷つき、逃げ出してしまうもの。

 エリカに「ニュータイプ」の力が覚醒するためには、何かの、
 大きな出来事が必要なのだろう。

 わたしは知らなかった。その大きな出来事が
 「わたしの死」にかかわっていることを!

 そのときは、まだ・・・。


 
  「ローズピンクのドレス」


 わたしは、自分が「おいしいコーヒー」を飲めさえすれば、それでいいの。
 コーヒーをおいしくしてくれるすべてが、好き。 大切なの。愛してさえいるわ。
 その「愛」が、わたしをおいしくする。わたしの声を、言葉を、表情を
 輝かせてくれる。

 しあわせを感じているんだもの、なんだってしあわせ色に染めちゃうわけ。

 そのために生きてる。その「生き方」に出会うために、
 わたしは生まれてきたのだもの。

 育てる母のしあわせ感とは、こんなものだ。

 最初は、動くのが、ただただふしぎだった。

 ことばを手に入れてはじめて、それにかわいらしさが加わった。

 今は、わたしの言葉にどんな返答をするか、それが面白い。

 何よりも、家族のしあわせは、「今を喜べること」だ。

 笑って泣いて、はしゃぎまわった友達いっぱい少女の「過去」じゃないし、
 恋にあこがれ、胸をどきどきさせて、結婚・不倫まで匂って来る「未来」でもない。

 平凡さいっぱいの、「今」を。

 しあわせだった「過去」をなつかしむことでも、今をがまんして
 「未来」にしあわせを先のばししなくてもいい。
 
 「今」に、しあわせがあるのだから。 


 エリカが卒園式で「送る言葉」を読むことになった。
 
 けっこう幼稚園では人気者になっていたらしい。それで、

 「エリカちゃんがいい」

 ということになった・・・らしい。

 それで、ちょっと、ごほうびに、ひらひらのついたロングドレスをプレゼントした。
 かなり少女趣味、もちろんわたしの。アメリカの少女が、クリスマスに着るような。

 うすい「ローズピンク」。前から背中にまわる、大きなリボンがかわいらしい。

 わたしがときどき訪れるお店でオーダーしたので、エリカはお店ではカチンコチン、
 緊張しまくっていた。
 
 大人の、それも美しい大人たちに囲まれて、今まで見たこともないようなドレスを
 試着する。

 オーナーはフランス人だし、スタッフにはアメリカ人も、イタリア人もいるし、
 店長はフランスと日本の混血。わたしだって、最初はカチンコチンだった。

 そのドレスが自分へのプレゼントで、卒園式に先輩達の前で着ても良い、
 と知ったときのエリカの言葉を、わたしは一生忘れない。

 スタッフのお針子さんのマチ針に気をつけながら、まっ赤にほほを染めて、
 涙さえ浮かべていたのだ。

 『ありがとう、ママ!
  すてき! おじょうさまみたいだよ・・・。
  みなさん! ありがとうございます。
  すてきなドレスにしてくださって!
 
  こんな春風のような服で出かけたら、
  どんなすてきなことに出会えるのかしら・・・。
 
  もう、期待で、むねが、ふるえてる!

  ドレスを、しあわせ色に染めてくださったから、
  きっと、わたしの毎日も虹の色になるのね。

  ようふくやさんって、季節の色やしあわせの色を
  みんなにお届けするお仕事なんですね!

  すてき・・・毎日、しわせをお届けするなんて・・・」

 オーナーがエリカに近寄り、ひざまづいてその手にキスをした。
 みんなが拍手をして、彩(いろどり)をそえた。

 帰り道、エリカがわたしの手にさわってきた。
 後ろを向いて指先をぬらしてから。

 そっとさわり、わたしの心を読んでから、ほっとしてわたしを見上げた。

 まだまだわがままをきく心の広さはあるというのに、エリカは遠慮している。

 「なあに? 言ってみなさいよ。ごほうびは、ひとつだけじゃないかもよ」

 『ママ、あのね、クーニャンが結婚したいって』!


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