朝は 夢見ごち

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★海に面した窓辺に並び、紅茶のカップで指を温めながら

 リリノエが思い出を語る。

 彼女は本当にいつも、気になる人の心を、特に悲しさを

 強く思っていた。

 「どうして?」「なぜ?」「どうしたら救える?」・・・

 そんな彼女が、ボクのトラウマを解決するために、心をくだいたことは

 いつもボクの胸に響いてた。

 「あそこに何かがいる! 何かわからないけど、恐い…。

  今にも飛びかかってくるようで…。こどもの不安が恐怖を生み、

  必死で救いを求める…。でも、助けはいつまでもこなかった・・・。

  それで、あんた自身は、どうやってそれを解決したんだい?」

 もちろん、トラウマの解消は簡単ではない。リリノエが進言し、

 クフレイナニが山の男達に頼んで、ボクを鍛えたのだけれど。

 「太陽? ・・・太陽が、あんたを救ったって、言うのかい?」

 ・・・

 「あんたらしい解決策だね…。でも、ふしぎだねぇ。あんたの心は

  辛いトラウマを作り出しながら、その救いも隠してたんだ。

  そうか! それであんたは、Ryoのトラウマの中にもそれがある!

  母親への憎しみじゃなく、慕う心があるとわかったんだ!」

 自分の心の救いが誰にでも応用できる…とは限らないけれど、

 Ryoには通じた。もちろん、牧師であるオジの助言がなければ

 そのことにはまったく気がつかなかったのだけれど。

 でも、不安や恐怖の中に、自分の心がたくわえている「救い」があることは

 疑いもない真実なのだ。

 ・・・

 栄養のある食べ物を食べることは、大切なこと。

 そして、自分の中に、その食べ物を栄養に変える『力』を持つことは

 もっと大切。そのふたつのものが、セットになって大事なのだと思う。

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★「・・・そうだよね。あんたはひとり、夜の闇に置かれ、

  不気味な朝焼けにトラウマを抱いてしまったんだったねぇ」

 リリノエが、思い出したように言ってボクを見た。

 捨てた親でもないのに、(すまないねぇ…)という顔をする。

 その「目」に、まなざしに、どんなに救われたことだろう。

 それは、まだ1歳にもならない遠い記憶…。

 しかし、無意識の中で、その恐怖は全身に巣くっていたようで、

 そこからの離脱には、必死の努力が必要だったのだけれど…。

★学生時代の2月初め、京都・鞍馬山に行ったとき、「節分」の儀式を見た。

 でも、いつまでも「鬼」が出てこなかったのが印象的だった。

 「オニ」という言葉は…あったような、なかったような。

 リリノエに話すと、追儺式にオニは出ないと笑った。

 「日本に来た頃に、必死になって伝統を覚えこんだものさ…」と

 「オニ」の話をしてくれた。

 もちろん最初から(ツノがあって、トランクスをはいて)ではなかったようだ。

 原型は『穏』。「隠れたもの」・・・らしい。

 見えていないけれど、見えていないところにひそむ者…。

 姿がみえないからこそ「不気味な者」。恐ろしい者。

 「季節」や「年」が新しくなるころ、「時」の裂け目から現われる「なにか」…

 それは世界中に存在する[恐れ]のようなものなのかもしれない。

 ハロウィ〜ンも節分も、共通な「恐れ」から生まれているのだろう。

 今では園児でさえ「鬼」を描ける。それほど具体的な「オニ」…。

 でも、具体的になったということは、そんな「恐れ・不安」が消えた…とか

 薄れたことを意味しない。消そうとして必死だから、無理やり具体化したのかも

 しれない。

 「そんなもの…怖くなんかないさ。ハハハ…^^;」と笑い飛ばしながら

 自分自身や自分の将来・未来に不安を持つ人は、むしろ現代の方が多いような

 気もするのだけれど。

 あなたは「鬼」…追い払うことができましたか?

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★ハワイから北海道に来て、初めての冬・・・。何もかもが新鮮だった。

 高い山があるから、ハワイにも雪が降る。けど、雪は見るもの、遊ぶものじゃない。

 なのに、雪は目の前にいつもあって、遊びたいときにはいつだって遊べる。

 Ryoは楽しい遊びをいっぱい教えてくれたし、自分でも色々とやってみた。

 友達はとっても刺激的だったし、チャレンジャーばかりだった。

 薄く凍った川をそぅ〜と渡る。北風が通り過ぎたあとで、堅くなった雪の上を

 沈まないように歩く…。森に入れば小動物や小鳥達が遊び、まだ緑を持っている草は

 常に周りの雪をとかして元気だった。

 気温がマイナス30度を越える朝には、林から樹液が凍り、幹が破裂する音が

 こだましていた。

 リリノエガいる。クフレイナニがいる。お手伝いさん達をまとめる美弥子さんがいる。

 忍者のような山の男達、厳しいけれど美しい山の自然…。心を躍らせるものは

 無数にあった。足りないものなど考えもつかないくらいの豊かさに満ちていた。

★そんなときリリノエが、クリスマスの話を持ち出した。そしてそれとなく

 ほしいプレゼントをきいてきた。『ない…』と答えた。

 「Aue no ho‘i e! No ke aha mai?」(おや、なんてことを…。どうしてだい?)

 リリノエはとても驚いた表情で、ボクの顔をのぞき込むように近づいてきた。

 『だって…リリノエがいるし、クフレイナニがいる…。Ryoがいるし、

  雪は楽しいし…友達も、うさぎも、タカも、すごい吹雪もあるから・・・』

 「だから、もう、なにもいらない…と言うのかい?」

 ボクは、リリノエどうして驚くのかをわからず、からだを小さくしていた。

 「こどもなんだ。もっと、自分の幸せに貪欲になってもいいのにさ…」

 そう言いながら、「じゃあさ…あと何があったらもっと楽しくなるんだい?」

 「スケッチブック…」

 ボクは小さな声で答えた。

 リリノエはボクをギュッとしてから、部屋を出て行った。

 ・・・

 そう…。ボクの幸せは、基本的に以前から変わらない。

 そして、「プレゼント、何がいい?」ときかれることが、一番の苦手。

 そんなボクを理解して、リリノエは二度とこの質問をしなかった。

 そんな言葉も含めて、彼女はボクとの会話をほとんど日記に書いていた。

 リリノエの日記がボクの宝物…。これが、消えてしまわないことなら…

 願えそうな気がする。

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★リリノエがいつも言ってくれたことだけれど、ボクはそれで、

 自分らしく見ることの良さ、自分の意見を持つことの意義を、

 確認していたのだと思う。

 「あんたが良く出てる・・・あんたらしいねぇ」とリリノエは言った。

 自己主張をすること、自分をきちんと表現することの価値を、いつも

 育ててくれていた。

 おかげで、意識しなくても、そんな表現や写真を写せるようになっていた。

 大好きな人のうれしい言葉は、こどもでも心地よく感じる。

 それはまるで、幼い自分を包んでくれる「ヴェール」のようなもの。

 自分にしっくりなじんで、ひとつのアイテムのように身についていくからふしぎ。

 絵を描くことも、書を記すことも、風景を切り取ることも、みんな

 リリノエが喜んでくれたから・・・と、いまさらのように思う。

 無理をして言ったのでもないし、お世辞を言ったわけでもない。

 自分の感性にぴたっときたものを、本気で「いい!」と言った…。

 それだけのこと。だから、自然。疲れないし、長続き、する。

 親の個性が、こどもの個性を育てる…。一番幸せな家庭教育だったのかも

 しれない。

 だからボクは、こどもたちを本気でほめる。いいものはいいと、言葉にする。

 そんな小さな積み重ねで、こどもの個性や表現力が育っていくようだ。

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★大人が…こどもにあげられる最大のものは何だろう。

 少なくてもそのひとつは、「未来」…だと思う。

 「キミは、いつか、そうなれるよ」…というほほえみが、

 まだまだ、人生がどんなものかわからないこどもの「今」という時間を

 輝かせ始めるのだから。

 ・・・

 孤児院での幼い日々…ボクは、誰かと話をするのが苦手で

 絵ばかり描いていた。明るい性格じゃなかったし、ひとりが好きだった。

 そんなころ、みんなに「8月のサンタクロース」と呼ばれることになる二人が

 孤児院に現れた。それが…Ryoとリリノエだった。

 Ryoはすでに、ママ(リリノエの娘)の養子になっていて、

 リリノエは、Ryoを助けるこどもをひとり、引き取ろうと思っていた。

 Ryoと話ができて、心を通わせることのできるこども…。そして

 少し(?)気難しいリリノエとも、うまくやっていけるこども…。

 そんなことを思いながら、彼女はボクに声をかけた。

 「その絵を売ってくれないかい?」と…。

 7歳のボクはその言葉に腹を立て、少しきつくリリノエに答えた。

 それがリリノエの心を動かし、ボクは日本へ、北の国へ来ることになったのだった。

 ・・・

 リリノエの家にはみんなが集まっていて、ボクは緊張でからだを少し

 震わせながら好奇の視線にさらされていた。

 みんなはそれぞれに自己紹介をしてくれたけれど、ファーストネームを覚えるのが

 やっとだった。

 そのころボクは、自分の奇妙な能力にとまどっていた。

 絵を描くとき、「点描」の手法を使うことがあったけれど、「点」を打ちながら

 意識しないのにきかれると、その数を正確に当てられた。

 初めてみんなを紹介されたときのように、その時は顔と名前を一致できなくても、

 部屋に帰って目を閉じると、みんなの顔とファーストネームがぴったりと重なる…

 まるで、カードゲームの「ばばぬき」のように。

 でも、そんな能力がどんな価値を持つのかなんて、わからなかったし、

 まったく初めて会う人、初めての日本で、ほとんで緊張の連続だった。

 そんなとき、きれいな女の人がボクに近づき、かがんでボクの指を手に取った。

 それが「Ryoママ」…リリノエの娘だった。

 彼女はボクの指が「芸術家」のそれだと言ってくれた。やせて、細い指・・・

 くらいにしか思ってなかったボクの指に、「未来の輝き」を与えてくれたのだった。

 おとなになると手も大きくなって、1オクターブ以上、「11音」くらいは

 軽く届くわね…。だから「エルフ」! あなたをこれから「エルフ」と呼ぶわ…と。

 それからボクは、なんど自分の指をながめたことだろう。今はやせて細いだけだけれど

 いつか「大きな手」になる!

 たったそれだけのことだったが、不安におどおどしていた7歳には、最高の

 プレゼントだった。

 「エルフ」…というニックネーム(愛称)は、ボクに、未来を与えてくれた。

 ボクは、自分の「時間」が、輝き始めたのを知ったのだった。


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