朝は 夢見ごち

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

イメージ 1



★育ての父・クフレイナニの青春は、沖縄でイノシシを狩り、琉球空手を基本に

 自分流の格闘技を極めるため、世界を旅して回る…それにつきる。

 そして、その話はとても面白く、囲炉裏端(いろりばた)で聞くには、最高の

 四方山話だった。

 リリノエは、ハワイでの青春をほとんど話さなかった。戦争が起こり、収容所で

 妹は発狂して自殺、両親も失った。戦後帰ってみると、家には他人が住み、

 権利を主張しても、聞いてはもらえなかった。

 そのときの怒りそのままに、彼女が背中にイレズミを彫ったのは、18歳のとき

 だったという。

 でも、夫との出会いの楽しさは、良く話してくれた。クフレイナニは体格も良く

 堂々としていたのに、女性は苦手で、まるでデートをしたことのない小学生の

 ようだったと笑っていた。結婚してからも、妻には頭が上がらない…

 いや、愛妻家だったから、どんなことも広い心で受けとめていたのだろう。

 リリノエが好きだった沖縄は、彼女の大切な人が戦死したところらしい。

 Ryoの誕生日を決めたとき、リリノエはその人の誕生日をRyoに与えた。

 そんな彼女が沖縄や長崎で買ったガラス細工が、今、ボクの窓辺にある。

 ブルーはクフレイナニ、レッドはリリノエ、ふたつのビードロはRyoとボク…。

 もうレッドとひとつのビードロはこの世を去ったけれど、輝く海の光の中に

 四つそろえて飾るのは、楽しいことだ。

 そっと、名前を呼んでみた。ぱぁ〜っと思い出が匂いたち、

 あの頃の楽しい日々の会話が、潮騒のように聞こえてきた。

 注連縄(しめなわ)や門松を飾るよりも、ボクにはこれが新しい年の

 祈りのしるしにちょうど良い。

 今年も、あと五日・・・ですね。良いお年をお迎えください。

イメージ 1



★こどもたちがランドセルのほかに、絵や習字などの作品をかかえて帰っていく。

 あしたから冬休み。ひと月の長い休みに入る。

 特に北国に住むこどもたちにとって、冬休みはイベントだらけ。

 クリスマス+餅つき+年末年始+お正月+お年玉…しかも、貯金しても良いし

 高価なほしいものを買うことだって、できる! それに、スキー・スケート・スノボー

 +ソリ! 冬の遊びだって満載。

 もちつきは深夜で、たくさんの大人たちが集まって、つきたてのおもちを

 大きなテーブルいっぱいに広げ、カルタのような形に切っていく。そして

 右端から次々とテーブルから落としていく。下にはリンゴなら40Kgは入る

 木箱があって、落とされたもちはその箱にたまる。

 その時点でもちはガチガチに凍っているから、天然のフリーザーのようなもの。

 北国で一番寒いマチは、深夜でマイナス20度をはるかに過ぎていた。

 ・・・

 学校帰りのこどもたちを見ながら、自分はどうだったかと

 思い出の記憶のページを開く。こども時代は好奇心いっぱいに夢中で過ごすから、

 出来事をすべて鮮明に覚えておく…ということはあまりない。

 でも、ボクは違った。

 ボクのしたこと、言ったこと、楽しいと思ったことはすべて、

 リリノエが書きとめていてくれた。

 帰り道、成績が上がったうれしさに、なんども成績表を見ていた。玄関口に

 座り込んでもそうしていたから、リリノエが質問してきたのだった。

 「家庭科」の成績が上がることが、そのときはとてもうれしかった。

 リリノエの夫・クフレイナニ(ハワイ日系二世)は、山をいくつか所有する

 製材関係の仕事をしていたから、家には常時お手伝いさんが住み込み、

 忍者のような山の男達がたくさん出入りしていた。

 小さなうちは入山禁止だったので、いつも女性達の食事のしたく、針仕事を見ていた。

 自分だけが何もしないでただ食べて眠るだけ…。それが恥ずかしいし、悔しく思っていた。

 だから、家庭科の成績が上がったということは、自分でも家で、みんなの手伝いが

 出来る!…ということ。簡単なものを作ったり、手伝いだってかなりできる。

 大人たちの仲間入りができて、しかも、手伝える。

 単なる「食いしん坊」じゃないところをアピールする、大切な証拠だった。

 大人たちの多い中で、こどもはボクひとり。やっと大人たちの仲間入りができたと

 喜んでいたのだった。

 おかげでいま、たいていのものは手作りできる。料理も覚えが早い。作るのも、

 ひとりでそれを食べるのも、苦にならなくなったのが、なお、うれしかった。

 理由を聞いてリリノエは苦笑した。そして、お決まりのセリフを言った。

 「あんたらしいね。楽しくて、あたしは好きだよ」と…。

 思い出の中には、いつもリリノエの笑顔がある。それが、一番うれしい。

イメージ 1



★学校の宿題に「将来の希望」というテーマの作文…が出た。

 ひと言ふた言書いて終わったとき、すぐ横で手袋を編んでいたリリノエが

 いきなり笑い出した。

 作文だもの、もっと話をふくらませておやりよ…という。そして

 自分は弁護士になろうとしてた…と告白した。

 「そうだ。木刀を持って外へ出ておいでよ。あたしも支度をしてから行くよ」と

 ボクに面・胴なしの剣道着をつけるように言った。

 それが将来の希望とか、弁護士とか、どんな関係があるのだろうと思いながら

 基本の型どおりに木刀を振って準備をしていると…

 リリノエはナギナタの正装で出てきた。

 (冗談でしょう? 刃のないだけの模擬刀ですよ!)

 すっとかすめただけで、ミミズ腫れになるくらいに鋭いのに…。

 「あんたも本身を持つかい? あたしはそれでもいいよ」

 もっと冗談でしょう! 刀なんか持ったら、自分を切っちゃうよ。

 「弁護士とナギナタと、何の関係があると思ってるだろうね」と言う。

 言いながら切りつけてくるのだから、良くわからない。

 「弁護士は、事件の真相や依頼人の証言から、あらゆる角度で弁護の作戦を

  練るものだ。あらゆる角度からね」

 ナギナタは突く、はらう、打つが出来て、しかもリリノエは背中にナギナタを

 隠し、次どんな攻撃をしてくるか、相手に気づかせない巧みな腕。

 上から来るのか、下から跳ねるのか、左? 右? 切っ先がどこからくるか

 わからないのが怖い。

 「さあ、良く考えなさい。あたしがどう攻撃するか、あらゆる方法を想像して

  それに備える作戦を立てる…。読み間違えると明日学校に行けないくらいの

  ケガをするだろうね」

 ほんと、クフレイナニもリリノエも、手を抜くということをしない。

 ナギナタの名手を前にして、2段ではどうしようもない恐怖を感じた。

 晩秋の太陽に、刃がきらりと光った。

 (やばいよ…絶対やばい…)

 恐怖は先を読めなくする。落ち着かなくちゃ…と焦っているボク…。

 う〜ん、リリノエの作戦の上を行く作戦なんて、立てられないよぉ…。

 (なんとなく、つづく)

イメージ 1



★「個性は良いものだけれど、ときどき淋しくなる…」

 そうリリノエは言った。

 他と違っているからひかり、他と違っているから淋しくなる。

 きっと、違っているから誤解される。

 なかなかわかってくれる人に出会えないさびしさなのだろう。

 ・・・

 そんなふうに、ボクは、小さいときから、物事の全体、

 左翼・右翼、表と裏を最初に見ていた。

 ボクを好きな人もいるし、ボクを嫌いな人もいる…

 それがこの世界の『普通』と。

 「かわいくない子だねぇ、まったくさ」とリリノエは笑ったけれど

 その目は優しく(あたしは大好きだよ。だって、あたしとおんなじじゃないか)

 そう言っていた。

 個性は確かに理解されずにさびしさを感じるときがある。

 しかし、ひとり、わかってくれる人があれば、さびしさは

 乗り越えられる。

 その「ひとり」に出会うことが大切なのだけれど。

イメージ 1



★ボクの祈りはすべて、リリノエとクフレイナニから始まっている。

 ふたりがボクを変わった子、でも楽しい子と言ってくれたから、

 今日のボクがいる。

 だれかが自分のために祈っていてくれていると気がつくとき、ひとは

 祈ることを知る。

 表現方法としての「祈り」、生きるための「祈り」…それを使い始める

 出発点を知る。

 ・・・

 他の子と違うものをボクに見たとき、リリノエは(すばらしさとボクの孤独)を

 知ったと言った。

 そんなことが出来るがゆえの、人が遠ざかっていくさびしさ…。

 そんなものが人生の先にあることを、彼女は見抜いていたのだろう。


.
愛理
愛理
男性 / AB型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
検索 検索

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

標準グループ

Yahoo!からのお知らせ

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事