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「決して一人では見ないでください」のキャッチコピーで有名な作品。イタリアの恐怖映画の巨匠ダリオ・アルジェント監督。これを見たのは、中3の頃だったと思うのだが、「ひえ〜、怖いいいいい」という印象があって、あの感覚に訴える恐怖をもう一度味わいたくて久しぶりに視聴。やっぱり大人になるってのはろくなもんじゃなくて、昔見た時ほどの怖さがなかった。大人になるってのは、分別ついて、作りものと現実の区別をつけてしまっているので、感覚より理屈が先行してしまう。特に私のように、学問なんぞ齧った日には、鑑賞と同時に分析してしまっていてどうもいけません。
しかし、そういう見る側の問題を度外視すれば、今もってこの作品の斬新さは相当なもので、現在でもこれほどスタイリッシュなホラーはそう作れないと思う。舞台はドイツのバレエ学校。そこに、新入生としてやってくるスージー(ジェシカ・ハーパー)の恐怖の体験を描いた作品ですが、バレエ学校が舞台なので、これまた「家」がモチーフです。赤を基調とした、原色の美術は、後の作品に大きな影響を与えたのですが、アルジェント自身は、『白雪姫』や『シンデレラ』等ディズニーのアニメやドイツ表現主義の影響下にこの作品を作ったようです。つまり、これは一種のおとぎ話で、バレエ学校の学生を「子供」に見立てた絵本の世界で起こるような一篇の「お話」なのです。そう言う意味での完成度は実に高い。音楽は、当時プログレッシヴロックの旗手だったゴブリンで、これがまた素晴らしい。ただの音楽じゃなく、見る側の心理状態をそのまま音にしたような感じです。風景描写はありません。バレエ学校の寄宿舎の内部のショットがほとんどで、それ以外は、冒頭の空港の到着ゲート、ミュンヘンの広場、それから寄宿舎を囲む森ですが、全て夜で、周囲の風景は意図的に構図から排除されています。これが、作品の寓話的イメージを高めるとともに、見る者に逃げ場のない切迫感を与えることに成功しています。
『サスペリア』を見て改めて思ったのは、この作品にもヒッチコックの影響が感じられるということです。アルジェント自身はヒッチコックにそれほど言及していないと思いますが、主人公のスージーがドイツの空港に到着するシーンからそれが感じられます。外は夜。おまけに、雷雨です。これから「惨劇」が起こることを予告する開始で、しょっぱなから見る者を不安にさせます。ヒッチコックの『レベッカ』でも同じ手法がとられます。さらに、バレエ学校の主任教授のタナ―女史。これは、もう『レベッカ』の召使ダンバース夫人そのままでしょう。最後、学校の建物が燃えてしまうのも同じ。これは、ボー以来、こういう建物が舞台になった作品に共通する、「崩壊」のモチーフです。
この作品には、魔女が登場しますので、つまりオカルトなんですが、『ローズマリーの赤ちゃん』からの影響もかなりあるんじゃないでしょうか。キャサリン・ロス主演の『レガシー』という映画がありましたが、『サスペリア』の要素は、ああいう映画にも引き継がれていると思います。殺人シーンにも、残酷でありながら、一種の美学があって、これが「お伽噺」であることを物語っていると思います。ストーリーは至ってシンプルで、格別入り組んだなぞ解きはありません。それだけに、この完成度の高さは特筆ものです。
恐怖度:★★★☆☆ ショック度:★★★☆☆ グロ度:★★★☆☆
エロ度:★★☆☆☆(性描写はありませんが、寄宿舎と女学生という設定自体がエロスです)
映像:★★★★★ 音楽充実度:★★★★★ 演技:★★★★☆ 脚本:★★★☆☆
美術:★★★★★ 衣装:★★★★☆
総合評価:★★★★☆
3月11日以降、事実上初めての「非」震災記事です。放射性物質は一人で見なくても怖いっす・・・
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懐かしいですねえ。「決してひとりでは観ないでください」。いえ、観てないんですが。TVCMの、「決してひとりでは…」の後に「キャーーーーッ!」という声が入ってませんでしたっけ。怖かった……。
2011/4/9(土) 午前 1:38
確か、「キャー」入ってたと思います。私はこの作品のファンです。主演のジェシカ・ハーパーが大変可憐なんですが、眼が少女漫画並にでかいです。サスペンスファンタジーというような感じですかね。
2011/4/9(土) 午前 2:40
サスペンスファンタジーですか。オカルト系ホラーかとおもってました。このころって、すこし前の「エクソシスト」とか、あと「オーメン」とか、怖いのがブームだったような。
2011/4/9(土) 午前 10:08
もちろん、オカルト系ホラーですよ。でも、サスペンスでもあり、ファンタジーでもあります。色々な要素があります。あの当時は、アメリカで悪魔ブームだったんですね。善悪の境界が揺らいだポストベトナム期の社会現象を反映していると言われますが。サスペリアは、もはや古典で、いつ見ても古さを感じません。
2011/4/9(土) 午前 10:15
どこにトラックバックしようかと迷いましたが、とりあえず、こちらの御記事にトラックバックいたします。
内容は、宮崎駿&悟朗氏がこの夏に公開するアニメーション映画についてですが、つくづく「宮崎駿」という人物が、
反骨&革新・平和主義者に見せかけた、実は「体制迎合主義者」だったという、知ってしまうだけ辛くなる逸話です。
読まないほうがイイかも知れません。
2011/4/15(金) 午前 2:50
TBありがとうございます。
そうなんですか。宮崎駿は実は私はあんまり興味がないのです。彼の一連の作品のどこが良いのかわからないのです。なんか、森には精がすむのでおかしてはならないみたいな感じの作品が多いように思いますが。あと、少女が主人公ってとこでしょうか。私は、ジブリの作品なら、『海が聞こえる』が一番好きですね。
2011/4/16(土) 午前 8:11
これは昔観てますが、オカルトとかホラーというより、ファンタジーの印象が強く残っています。
綺麗で怖い・・・そう、なんとなく美学があるなと感じていました。
これを読んで納得です。
2011/6/24(金) 午前 1:45
そうなんですね。映画の世界では、アルジェントの美学ということで通ってますが。ファンタジーの世界です。グリム童話なんかもけこう怖いですからね。今見ても、統一されたスタイルがあって、色の使い方が独特です。『箪笥」なんて、わりと影響受けてるんじゃないでしょうか。
2011/6/24(金) 午前 11:46