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私は、世間の流行から5〜6年は遅れているのが常である。そういうわけで、今頃韓国ドラマを観まくっている。ここ2カ月ほどかけて観たのが、2006年にKBSが放映し、日本でもフジテレビで放映された『復活』である。これはかなりすぐれた作品で、かなり熱中した。
日本のテレビドラマの原型は、占領期に駐留軍のCIEの指導下に作られた、ラジオのホームシチュエーションドラマにあって、現在家族を中心とした、いかにも日本的と思われるような作品の多くが、その範をアメリカに求めたものであった。だが、私は、日本の現在のテレビドラマにそれほど感心していない。全体として、脚本がイマイチだし、何より役者の演技が大味で、台詞廻しにも疑問符がつく。
韓国のテレビドラマは、日本が60年代から70年代に作ったドラマの影響も感じさせるが、アメリカの影響も強くあるように思う。まず、日本のドラマより、映像が多角的でパノラミックである。もちろんジャンルによるが、『復活』のような、サスペンス物の場合は特にそうなる。日本だと、サスペンス系でも、映像はより静的であるように思う。それから、キャラクター造形に優れており、これは演技者の力量に負うところが大きい。眼の表情、頬の筋肉の動き、口の角度の動かし方、顔の傾け方等の微表情とも言うべき部分に気を配っており、それがキャラクターの性格に結び付いて、最後まで維持される。つまり、こういう人物が本当にいるという錯覚を視聴者にもたらす。古畑任三郎のような、大袈裟な仕草でそれをやると、コミックなのだが、そういうことをやらなくても、強烈にキャラクターの個性を印象づけることが出来るのは立派と言うほかない。
さて、この『復活』だが、松本清張を思わせる、政治家と建設業者の汚職を巡って繰り広げられる、復讐物語である。これは、人物相関関係が結構入り組んでいて、複雑なので、それは以下のリンクを見て、頭に入れて頂きたい。
まず話の展開がかなり強引で無理があるのは否めない。だが、強引なのに、荒唐無稽と思わせず、視聴者を劇に引きずりこむ強烈な匂いがある。それは、先にも書いたが、やはり脚本が良く練られているのと、演技者が優れているからである。それから、韓国のこの手のドラマや映画に多い、キリスト教の罪と赦しのテーマがサブプロットとして登場する。政治家と企業家の癒着を暴こうとして謀殺された刑事の双子の息子が、成人して彼らに復讐するというのが、この話の大筋だが、オム・テウン演ずる、弟のユ・シンヒョクは、未亡人となった母親が、事件の黒幕の建設会社武陵建設の社長カン・インチョルと再婚したため、その会社の副社長として充足しない日々を送る。兄のユ・ガンヒョクは、事件の実行犯の良心によって救われ、屋台を経営する人物に引き取られ、父親と同じ刑事となり、ソ・ハウンとして育つ。シンヒョクとガンヒョクは、オム・テウンの一人二役であり、彼らは基本的に一心同体である。自分の父親の死の真相に迫ろうとするソ・ハウン(ユ・ガンヒョク)により、真実が暴かれるのを恐れた、政治家のイ・テジュンと、建設会社J&C会長のチェン・サングクは、腹心で、元チンピラのチェ・ドンチャンを使って、これを阻止しようとするが、野心家のドンチャンが暴走し、シンヒョクを、ソ・ハウン(ガンヒョク)と誤って殺してしまう。この事態に慟哭したソ・ハウンは、ソ・ハウンとしての過去を捨て、ユ・シンヒョクとなって、武陵建設に乗りこみ、復讐を謀り、それを着々と実行に移す。この時点で、刑事ソ・ハウンは、死んだことになるのだが、ガンヒョクは、シンヒョクとなることにより、ソ・ハウンとしての過去を捨て、弟と合体し、シンヒョクは、兄ガンヒョクの中に「復活」するのである。って、わかります、これ(笑)。ここには、キリスト教的「復活」と「贖罪」のテーマが隠れているし、キリスト教は、このドラマのサブプロットとして重要な役割を果たしている。
これが単なる復讐物で終わらないのは、殺された筈になっているソ・ハウンには、ハン・ジミン演じる、ソ・ウナという義妹がおり、この両者は実は相思相愛なのである。血縁はないものの、近親相関の要素が入り、作品に禁断の愛の要素をもたらしている。ありえないのは、兄のハウンが死んだ(と信じ込まされた)あと、ウナは、武陵建設に就職するのである(笑)。もちろん、武陵建設の副社長は、殺された弟のユ・シンヒョクになりすました、死んだはずの兄である。就職した会社の副社長が、死んだ筈の兄にそっくりなことに驚愕するソ・ウナ。社員に義妹を見つけびっくり仰天の兄。今や、ユ・シンヒョクとなった、兄のガンヒョク(つまり、ソ・ハウン)は、ひたすら自分の正体を隠し、ユ・シンヒョクとして通そうとするが、冷徹に隠しとおすには、あまりにも感情的になり過ぎ、素顔がポロポロ零れおちる^^;。
さて、さらに物語に起伏を与えるのが、20年前に父親を謀殺し、弟の殺害にも関与した政治家のイ・テジュンの娘ガンジュがKBSの記者であり、ユ・シンヒョクと婚約しているという仲なのである。もちろん、この結婚は、娘を武陵建設の会長のところに嫁がせて、自らの地位を高めようとする、父親テジュンの政略結婚であり、ガンジュは最初から乗り気ではない。もちろん、ガンジュはガンヒョクを巡る事件のことなど、なにも知らない。しかし、今やシンヒョクとなったガンヒョク=ソ・ハウンは、ガンジュとの婚約を解消し、ジャーナリストとしての彼女を利用しながら、事件の真相に迫らせるという、かなり残酷な手段を駆使する。ところが、人が変わったように、積極的で、精力的になったシンヒョクに、ガンジュは次第に惹かれていくこととなり、ここに、ユ・シンヒョク=ユ・ガンヒョク=ソ・ハウン、イ・ガンジュ、ソ・ウナの複雑極まる三角関係が現出する。さらに、商売敵のJ&Cの会長で、これまた事件の黒幕のチェン・サングクのイケメン息子チョン・ジヌが、ウナに一目ぼれし、ウナを巡る男女の心理関係はますます複雑に・・・
と、なんやかやあるのだが、この作品では、ソ・ハウンの同僚刑事が、実行犯のチェ・ドンチャンに弱みを握られ、親友のハウンを裏切り、後改心するという展開や、警察署の所長までがチェン・サングクとイ・テジュンに買収されていたりと、警察機構の腐敗も描かれ、巨大利権を巡る、政治家と企業家の癒着など、社会的な要素も満載で、とにかく、一度食べて、三度も四度もおいしい、見ごたえのある作品となっている。それから、やはり、韓国社会における、家族というものの在り方を垣間見ることが出来るし、各俳優が個性的で、若い主要キャラはモデル出身が多かったりするが、それでも立派に演技をしており、日本の9時枠ドラマの人気若手俳優をはるかに超えた演技力を発揮している。
100話を超えるのは当たり前の韓国ドラマの中でも、これは25話と短く、韓国ドラマへの入り口としてもなかなか良いのではないだろうか。
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「世間の流行から5〜6年は遅れているのが常」……ということは、流行ったものは遅くなっても一応チェックはすると?
2012/5/21(月) 午前 8:49
全部じゃないけど、そういう傾向はあるかな。村上春樹の『1Q84』も、2015年ごろに読んでると思いますよ。
2012/5/21(月) 午前 11:22