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韓国KBSの『IRIS−アイリス』は、日本ではTBSがプライムタイムに放送し、私は見損ねたが、息子は見たようだ。日本での視聴率は、概ね芳しくなかったようだが、視聴率は、あまり当てにならない。韓国のドラマが、韓国国内で30%〜40%の視聴率を勝ち得るのは、それは日本と較べて、放送局の数が少ないから当然である。世の中には、録画をして見るという人種も存在するし、ブルーレイレコーダーが普及しつつある現在は、映像を、テープはおろか、ディスクにすら残さず、単にハードディスクに蓄積して、後で見るなどという行為も可能なのである。さらに、今日、テレビドラマの製作費を、後日DVDやブルーレイディスクとして販売し、回収するという手段はどこの国でもやっているし、Gyaoのようなドラマ配信サイトでも視聴が可能となっている。私のように、放送は見ないが、後からレンタルで見るというタイプの人もいる。つまり、視聴率に換算されない手段で、番組やドラマを見ている人はいくらでもいるのであって、その意味で言えば、この『IRIS−アイリス』には、韓国はもちろん、日本やアメリカにも、かなりの支持者がいると考えて良いと思う。さらに、こういうドラマは、日本の『踊る大捜査線』と同じで、映画化や続編などの、スピンオフが可能な作りでもある。
 
『IRIS−アイリス』は、かなり映画的な作りで、映像も本格的なものだ。だが、テレビドラマとしてのリアルタイムな迫真性もあって、かなり優れた作品だと思う。このドラマの素晴らしいところは、俳優陣が、サブキャラに至るまで、かなり個性的な風貌で、雰囲気満点で、それがかなり役柄にはまっていることである。なにより、「走れる」「大声を出せる」という、このタイプの作品に必要不可欠な要素を、女性も男性も持っているのが素晴らしい。最近の、日本のプライムタイムのドラマには、この二つに疑問符のつく役者が多過ぎる。
 
これは、南北統一を画策する青瓦台と、それを阻止し、南北を戦争状態に陥れ、両国で軍事クーデターを起こそうと企てる、アイリスなる秘密組織の攻防を描いた、政治陰謀ドラマである。アイリスという組織の全貌は暴かれることなくドラマは終わるが、どうやらアイリスは多国籍な集団であり、アメリカや日本の人材も加わっていそうな感じである。舞台は、架空の特殊部隊NSSを中心に描かれるが、アイリスの人材は、NSSや青瓦台はおろか、北朝鮮にすら存在し、大統領すら把握しきれない水面下で政治を動かしていることが示唆される。
 
このドラマ、ラブロマンスもふんだんにあって、主要キャラに一大事が起こるたびに、愁嘆場が演じられ、ちとウンザリしないでもないが、そこは、幅広い年齢層をターゲットにしたテレビドラマならではのことで、それを批判してもしょうがない。「ここは余計だな」とか、「これはしょぼいな」と思うような場面も幾つかありはしたが、まあ許容範囲内だろう。派手なアクションや、ロマンチックなシーンが多いので、やや焦点がぼけているが、『IRIS−アイリス』の製作者は、国家や組織の利害に翻弄される、個人の運命の儚さを描こうとしたのではないかと思われる。イ・ビョンホン演ずる主人公キム・ヒョンジュンが、ドラマの終盤で、大統領に向かって「私には、この南北会談を開くために、これほどの人命が失われなければならなかった意味がわからないのです。死んだ者たちは、このことに何ら関係のない者ばかりでした」という台詞は、このドラマのテーマを象徴的に表していると思う。局長としてNSSに入り込んでいるアイリスの主要人物ぺク・サンに至っては、ソウルのど真ん中で核テロを起こす理由について、「南北が休戦状態にあることすら忘れて、平和に浸っている国民を目覚めさせるためには、この程度の犠牲が必要だ」などと、どこかの都知事みたいなことを言う。
 
さらに、このドラマには、見るものを不安にさせる何物かがあるが、それは主要登場人物の立ち位置が不安定で、自分たちが、何故特定の行動をしているのか、それを彼ら自身分かっておらず、その不安定感が、見るものにも伝わるのである。これはこのドラマが一番狙った部分で、成功していると思う。まず、主人公のキム・ヒョンジュンが、自分の出自すら知らない状態で登場する。ヒョンジュンの親友で、同時にNSSに入る、チン・サウは、自分さえ知らない間に、アイリスに加担する羽目になり、ヒョンジュンと敵対する関係になるが、なぜそうなっているのか理解できないまま行動している。北朝鮮の護衛部の大尉も、共和国の為に働いていると信じて行動していたのに、いつの間にか、自らの指導下にいる部下がアイリスに内通しており、裏切られていることに気づくが、その部下連中も、結局利用されているにすぎない。また、このドラマのヒロインのキム・テヒ演ずる、チェ・スンヒという人物の立ち位置がこれまた最後まで不安定だ。スンヒの父親は、NSSの創始者であり、スンヒにとって、ペク・サンは育ての親のようなものであることがドラマの最終局面で明らかにされるが、スンヒがアイリスと内通しているのかどうかが、最後まで不明なのである。「断った」と言う本人の台詞があるのだが、本当なのか。
 
ネタバレ御免で書くが、このドラマはハッピーエンドではない。核テロと生物兵器テロを防いだ主人公のヒョンジュンと、ヒロインのスンヒが、NSSを去り、お互い一般人として人生を共にしようと、済州島にバカンスに出かけるのだが、そのシーンが始まったところから、悲劇の匂いがプンプンしている。案の定、最後の最後で、ヒョンジュンは、何物かに狙撃され命を落とし、彼とスンヒの愛は成就することなく終わりとなる。お互い添い遂げることが出来なかった二人の男女に関する、秋田十和田湖の伝承が何度か作中に登場することから、かなりドラマの最初から、この結果になることは示唆されていはしたが、見る方としては、ヒョンジュンとスンヒの明るい未来に感情移入しているから、やはり随分と悲しい結果ではある。
 
要するに、このドラマは、同じアクション物でありながら、アメリカの『ダイハード』のように、善と悪の境界線が明解に引かれておらず、善人も、悪人も登場せず、一人一人の立ち位置がまことに不明で、それが最初からこの作品にある種の不安感と緊迫感を与えているのである。最後のヒョンジュンの死に関しても、彼を狙撃したのは、アイリスなのか、それとも青瓦台なのか。なぜ、狙撃者は、ヒョンジュンが、燈台のある岬に向かっていることを知りえたのか。それを知っているのは、スンヒだけなのではないか。ならば、やはりスンヒは、アイリスと内通していたと考えられないか。要するに、この作品の登場人物の立ち位置は、どこまでも不安定で、特にスンヒのそれは、後半になってますます不気味さを加える。話の展開としては、かなり大雑把であるにも関わらず、このドラマが、見ごたえがあるのは、人の存在の儚さのようなものが、全編に漂っているからなのではないのか。そのアイデンティティの揺らぎを、分断された朝鮮半島の歴史的背景に求めるのは、考え過ぎかもしれないが、そう思いたくなるようなところは随所にある。
 

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