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萬の事

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「怒り」について

テロや事故等で人が命を落とすたびに、「怒り」の声を耳にする。「テロリストは許せない。根絶やしにしろ」とか。「罪もない善良な日本人を殺しやがって」とか。「怒り」は、別に人間だけに固有の感情じゃなくって、犬や猫にだってある。子供の頃、繋がれていた犬に、面白がって石ころを投げつけたことがある。一個だけじゃない。多分、数個だ。もちろん、大けがするようなでかい石じゃなかったと思うけど、そんなことは関係ない。3つ目あたりを投げた時に、犬が、私に向かって「ヴ〜」と唸り始めた。その時、犬の感情がむき出しになって、自分の肌身に突き刺さってくるような気持ちがして、なんだか、自分が憐れになっような気がした。相手は、鎖に繋がれて、動く範囲が限定されている動物だ。安全な位置から石を投げていた自分が憐れになった。

武装集団と呼ぼうが、テロリストと呼ぼうが、武装していない民間人である企業人を、彼らが襲う時に持つ感情は、その大部分が「怒り」に違いない。襲われるほうの感情は、「恐怖」以外の何物でもない。もちろん、武装グループの面々とて、「怒りの塊」として生まれるわけではない。置かれた社会文化的な環境に、自分たちの在り方は、陰に陽に影響を受けるものだ。「怒りを」ぶつけて、相手を傷つけた時、相手の「痛み」は、確実に自分たちに跳ね返ってきて、精神を蝕む。「怒り」とはそのようなものだと思う。これは、自分の経験を振り返ってみるとわかるのではないか。誰かに対して「怒り」をぶつけるとき、それと同等に、自分も頽廃してゆく。武装勢力を「殲滅」したアルジェリア軍は、恐らく、武装集団以上の重武装であったろう。人質の中には、アルジェリア軍の砲弾によって命を落としたものもいただろう。アルジェリア軍は、上からの命令で、作戦を遂行したが、参加した兵士の感情を支配していたものも、やはり「怒り」、そして「恐怖」であったろう。人を殺す原動力となる「怒り」と、武装勢力に自分も殺されるかもしれないという「恐怖」。こんな時、勇気満々の人などそうはいない。

武装集団が、何に対して怒り、悲しんでいるのかはひとまずおこう。しかし、残虐な武装集団を「根絶やしにしろ」というのは、これまた「怒り」である。もうこれは「怒りの塊」だ。しかし、この「怒り」は、自分たちはそこには行かないということが前提の「怒り」である。実際に行って根絶やし作戦を行なうのは、自衛隊とかであろう。もちろん、それは、現実的には、政府の命令という形をとる。しかし、それを許容するということは、我々国民も、その「怒り」を、自衛隊員に託し、それを武装集団にぶつけることを命じる立場となるのである。自衛隊員が、誰かを殺し、誰かに殺されるたびに、我々も傷つくのだ。相手を、「怒り」をぶつける対象としてしか見ないということは、それは相手を人間としてみていないということだ。何も、軍事的なことだけではない。人生に倦んだ男が、酒の勢いで、無抵抗の妻を殴るとき、それは相手を人間としてみていないからだ。自分は傷ついている、だからお前にそれをぶつける。だが、お前が持つ「怒り」や「悲しみ」を自分に対して見せるのは許さない。それは、相手を、単に、自分に都合のよい人形や機械のようにしか見ていないからだ。

武装集団には、日本人が、「罪もない」存在には見えていないかもしれない。そもそも、誰であれ、自分に「罪がない」と断言できる人間が存在するのであろうか。カンボジアでも、中国や欧米の企業が大規模な金採掘をやり、手彫り作業で生き延びていた地元住人に、十分な話し合いも補償もないまま立ち退きを要求する例があるという。開発のために土地を奪われ、追い立てられて行く地元住民。そんなことは歴史上何度も繰り返されてきた。邦人保護を言う前に、開発とグローバル経済が、何を地域にもたらしているのか、それを我々はもっと知らなくてはならないだろう。日本の民が、「怒り」を、自衛隊員に託し、その怒りが、武装勢力であれ、一般市民であれ、現地の人間に及んだ時、いよいよ、「罪もない善良な」などという形容詞は、「日本人」から外さなくてはならないだろう。何人であろうが、様々な物事の連鎖の中に絡めとられて動いているのだ。

「怒り」を持つ人間の「怒り」や「悲しみ」は、受け止めなくてはならない。相手の「怒り」や「悲しみ」は拒否して、自分たちの「怒り」や「悲しみ」を、軍隊というシステムに託して、相手にぶつけるならば、それは相手を、鎖に繋がれた犬か、単なる機械としかみていないということだ。夫婦関係でも、親子関係でも同じことだ。「怒り」は、いずれ自分に跳ね返り、最早、怒りすらも感じぬほどになるほど慣れてしまえば、その時、我々の精神の頽廃は完了する。「テロリストは許せない。根絶やしにしろ」と言うとき、人は、テロリストをはるかにしのぐ「怒り」に身を託しているのである。その「怒り」は、本来、自分の中で処理すべき問題であるかもしれないのだ。政治権力というものは、このような人の素朴な「怒り」や「感情」に訴えることに長けている。

自分は「怒り」、それを相手にぶつけるが、それは「罪もない」自分が他人から傷つけられているからであると主張するなら、それは、自分の「怒り」には正当性があるが、他人の「怒り」には正当性がないと言っているのと同じであり、他人を人間とは思ってないからである。そういう考え方になった人間だけが、人を殴り、殺せるのである。殺す対象を、「怒り」も「悲しみ」もある人間だと思っていたら、殺せないからだ。軍事システムというのは、そのような感情を兵士に植え付ける。日本人は、徴兵制など、軍事文化を持っている国の人々の痛みを知ることだ。それは、彼らと同じことをすることではなく、彼らの軍事文化が寄って立つところの、歴史社会的事情に思いを馳せることである。

人殺しが悪いことならば、テロリズムはもっと悪い。テロリズムが悪いなら、戦争はもっと悪い。吉本隆明の、この言葉が身に沁みる。






閉じる コメント(6)

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テロリストの人々が結局、最終目的として、何をどうしたいのか解らなくて困っています。もちろん、「やめてよ!」という怒りの感情もあるとおもいますが、それより、何故そんなことを? とおもって、なんだか哀しくなってしまいます。

2013/1/24(木) 午前 9:31 ゆまりん

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そんなに複雑なことを考えているわけではないと思います。「怒っている」。あと、武装勢力は、意外と資金潤沢です。アメリカやフランスの武器を持っているし、武装勢力に協力するとお金がもらえるので、周辺諸国から仕事のない人が集まったりもしています。つまり、彼らの中には、必ずしも、特定の国に対して「恨み」を持つているわけではないような人もいる。そうした状況に、こっちが、ただ「怒り」をぶつけるだけでは問題は解決には向かわないでしょう。「怒る」前に、「考える」ことが必要だと思います。

2013/1/24(木) 午前 9:45 och**obor*maru

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複雑なこと……たとえば、自分たちが支配できる国をつくりたいとか、世界の王になりたいとか、そういうことは考えてないわけですか。

2013/1/24(木) 午前 9:51 ゆまりん

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独立国家を作るとか、そんなことは考えてないでしょう。彼らは、移動し拡散しますからね。国家は蓄積し集中します。行動原理が根本的に異なります。それに、彼らは、イスラム圏内にあってすら、国家と言うシステムから疎外された存在でしょうから。

2013/1/24(木) 午前 10:02 och**obor*maru

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賛同するわけではありませんが、テロについて考えるとき、「国賊に天誅」とか「市民に自由を」とか、そういう……何か、大義があるのでは、とおもうのです。最終目的とか大義のないテロって、いや、大義があればいいとはおもわないんですが、やっぱり理解できない……。

2013/1/24(木) 午前 11:21 ゆまりん

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ああいう武装組織に、最終目的はないと思います。今のテロは、マーケットの国際化につれて、世界中に拡散してます。武器は、米製だったり仏製だったりして、まさにマッチポンプです。ただし、会社が言う、「アルジェリアにも貢献してきた」ってのは、ちとウソ臭い。独裁政権と結びついた開発による利益享受は大抵歪な形になってますから。しかし、我々もその利益を享受している可能性は大で、武装集団からすれば、「敵」でしょう。それが大義と言えば、大義なんでしょうが、武装組織の中には、どこかに爆弾を仕掛ければ幾らかくれる程度の理由で、参加している人も多く、そういう報告はなされてます。でも、それも、開発独裁が生み出す、格差が根本にあったりしますからね。要は、戦後の焼け野原で。親もなくして食えなくて、暴力団に入ったって人はたくさんいましたが、それと当たらずとも遠からずでしょう。いずれにせよ、自分の命は捨ててでも、他者を道連れにすることを厭わない人間が、世の中にはいるってことです。人は、いちいち合理的な行動をするわけではないですからね。

2013/1/24(木) 午後 1:25 och**obor*maru


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