錯乱気流

無茶苦茶忙しいやんけ・・・

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保守の反原発論である。著者は、旧皇族・竹田家に生まれた、明治天皇の「玄孫」ということである。私は以前、この問題に左右の対立を持ち込むのは馬鹿げているので、余程の事がない限り、あらゆる方と共闘する用意があると書いたが、その気持ちは変わらない。反戦とか護憲とかになると、とかく「理念」の問題となって、現実から話が遊離した地点でのバトルに終始して、両者ダブルノックダウンとなる場合が多いが、この問題は、実害が生じ、いまだ進行中で、被害が拡散中となれば、では一緒に考え、動きましょうということになる。
 
著者は、なかなか原発やエネルギー問題に詳しいと思ったら、反原発の市民運動を長年展開してきたようなのである。もちろん、神州日本の国土を穢し、天皇の赤子たる国民の命を危険に陥れ、天皇の宸襟を悩ませたという保守ならではの視点はあるが、第一点に関しては、「神州」はともかく、左派でもそう感じている人は多い。天皇に関しては、中沢新一もUstreamでの討論を書籍にした『大津波と原発』で、この度の天皇の行動の「すばらしさ」を論じ、大いに持ち上げているが、中沢新一は格別右翼ではなかろうし、そもそも日本共産党などは天皇制容認であるから、これまた格別問題ではない。むしろ、共産党は、原子力の平和利用については、ある種の二重基準に陥っていたのであり、その意味では、歴史的に一貫して「反原発」であったとは必ずしも言い難い。
 
著者も、この問題とイデオロギーは無関係であると論ずる。ただ、左派の反原発は反核から始まったと論じているのだが、これは必ずしも正しくないと思う。私の実感では、日本の反戦運動体は、反原発にはそれほど熱心ではなかったように思えるからである。例えば、原水禁は、わりと原発に言及し、反原発を訴えるが、原水協はそれほどでもない。というか、ほとんど原発の問題はスル―であった。さすがに、この度の事故を受けて、多少は言及しているようだが。被団協は、ヒロシマ−ナガサキ−フクシマという標語を強烈に打ち出しているが、それは彼らが、低線量被曝と内部被曝の問題に熱心であったことを考えれば当然である。
 
著者が反原子力の問題を真剣に考えるきっかけとなったのは、劣化ウラン弾による放射能被害に苦しむイラクの住民たちを見たのがきっかけで、チェルノブイリの被害の実情などが、著者に与えた影響もまた大きいようである。さらに、著者は「原発には愛がない」と論ずる。即ち、原発は、山谷や寿町のドヤ街に集まる、仕事にあぶれた低賃金労働者をかき集めて、雑巾で放射性物質をふきとらせるようなことを「平時」ですらやっており、このような他人の犠牲の上に成り立つエネルギーなどもってのほかであるとする。さらに、著者は、これをグローバルな問題と関連付け、日本への天然ウラン輸出最大国である、オーストラリアやカナダなどのウラン鉱脈でも、低賃金労働者が被曝覚悟で働かされていることに言及する。このあたりは、もう左派の主張と同じと言っても良い。著者は、低賃金原発労働者の救済活動なども行っているようであり、そこいらの「なんちゃって左派?」よりは余程立派というほかない。
 
著者のエネルギー問題についての意見だが、自然エネルギーを補助エネルギーとして、主力をガス・コンバインドサイクルとすべきと論じていることは、その当否は別にして、一応記しておく。相当に原子力やエネルギーの問題には詳しいようで、様々なデータを駆使して論じており、保守の情緒的反原発論ではない。エネルギー効率の問題から、エネルギーにはおのずから使い分けというものがあり、コンピューターを動かすには電気だが、お湯を沸かすにはガスの方が、燃費上も効率が良いと論ずる。その通りだろう。つまり、なんでもかんでも電気というのは、リスク分散の視点からも、また、エネルギー効率の観点からも適当ではないということになる。管理に一万年単位を要するようなものを扱うのは、人間の思い上がりである、というような考え方は、小出氏のような反原発論者のそれとなんら変わらない。また、放射線防護学の問題で、ICRPとECRPに言及し、前者は原子力業界寄りであるとするが、ICRPのデータでさえ原発推進を肯定できる論拠とは到底なりえないと論ずる。これは、相手の論拠を覆すのに、相手の提出したデータや論文を用いるという、反駁の基本を踏まえた態度で、現在福島での学校20mSv基準を巡って、市民団体がやっているのは、まさにそれである。
 
「保守の考えのなかには、正しいこともあれば、時として間違っていることもなる。同様に、左翼の考えのなかにも間違っているものがあり、正しいことを言っている場合もある」
 
「左翼だから反原発、保守派だから原発推進という、何の根拠もない幻想に縛られ、原発という非常に重要な問題が十分な議論もなされずに膠着状態のまま推移し続けている」
 
「自分と意見の違う著作を積極的に読むようにしている。自分と意見の近い本を読むのは痛快で気分が晴れやかになるが、それだけで終わってしまい、あまり意味がない」
 
これらは、著者の言葉であるが、まああたりまえである。私がネットでの議論にあまり熱心でないのは、要するに話が深まらないからである。「反戦」やら歴史認識の問題になると、互いに相手を「売国奴」とののしり合うような状況が簡単に現出し、まともな議論が出来ないのである。言葉の「断片」を捉えて、「いちゃもん」としか思えないような議論をふっかけてくる方も数多おり、これは右派?に限らなかったりするから一筋縄ではいかない。教育の話を論ずるにせよ、「(旧)教育基本法の理念を守れ〜!」と「反日左翼教師を追い出せ〜!」の両極端なスローガンの投げつけ合戦となり、肝心の教育の中身はまるで議論が深まらない。
 
ともあれ、国民を「赤子」であるとするような考え方には、私は到底与することができないが、右翼ならそう考えるのは当たり前である。ところで、先日反原発デモに参加した時、右翼団体の街宣車が妨害にきていて、「てめえら、電気つかってるやろが、わりゃあ!」とかわめいていたが、彼らには自分達が天皇の「赤子」であるという自覚があるのであろうか。

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