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チャイコフスキーの交響曲といいますと、やはり後期の3曲が1番よく聞かれます。私も、6番、4番、5番の順に聴いてきて、それから1番に接したと思います。1番は「冬の日の幻想」という、ちょっと洒落た副題が付いていて、それに惹かれたのです。1番は、わりと派手だし、実際演奏会で取り上げられることも多いと思います。
以上4曲に較べますと、2番と3番は、演奏頻度がやや下がると思います。「小ロシア」の副題が付いた2番は特にそうです。それで、この欄では、「ポーランド」の副題が付いた3番を取り上げます。実は、ここ数年、この3番がかなり気に入ってます。この曲は、チャイコフスキーの交響曲では唯一の5楽章構成で、完成は1875年です。同時期の作品に、バレエ音楽「白鳥の湖」があります。従って、両者には性格上の共通点が見られるという見解もあります。
推薦盤として取り上げるのは、EXTONの新譜で、アレクサンダー・ラザレフと読売日本交響楽団によるライブ盤です。普段よく聞くのは、小林研一郎・チェコフィルハーモニー管弦楽団盤(EXTON)や、マリス・ヤンソンス・オスロフィルハーモニー管弦楽団(Chandos)ですが、ここでラザレフ盤にわざわざ言及するのは、実はこの演奏の実演に接しているからです。場所は東京赤坂のサントリーホールで、今年の5月25日です。私は、サントリーホールの場合、よほどのことがないと大抵P席です。音響効果は今ひとつですが、安いですし(定期なら2000円!)、演奏者を間近に見れるので、気に入っています。
ラザレフは、なかなかのショーマンで、3番の演奏が終わると同時に、客席のほうを振り返るという、これまであまり見たことのないアクションを披露しました。両手が非常にせわしなく動いており、木管や金管に対する指示も非常に細かく、器用に振り分ける人だなと思いました。当日は、前半に1番の演奏があって、3番はふたつめの演目だったのですが、全体に早めのテンポで爽快に鳴らした、という印象がありました。
さて、録音を聴いてみて思うのは、第一楽章の序奏部から、まず雰囲気が明るめ。序奏部の終結部からテンポが上がり、決然とした第一主題が登場しますが、ラザレフはこれをややレガート気味に処理しています。もう少し、スタッカート気味にやってくれたほうが私の好みですが、これはこれで悪くないと思います。それから、オーボエがいかにもロシア風の第二主題を吹き、それが弦に受け継がれるのですが、ここも非常に速い。ただ、木管は表情豊かで良いです。弦に今ひとつの厚みと流動性が求められると思いますが、大きなマイナスではありません。この楽章の主部は、チャイコフスキー特有のアレグロ・ブリランテで、バレエ音楽的なものを感じさせます。
第二楽章はアラ・テデスカの小規模なスケルツォです。ここは、非常にそつなく纏めたと思います。
第三楽章のアンダンテは、弦楽セレナーデの遅い楽章を想起させる、瞑想的な歌です。全般に、読響の弦が良い仕事をしています。もう少し、身を焦がすような歌が欲しい、とは思いますが。多くは言いますまい。第四楽章のスケルツォでは、読響の木管のうまさが光ります。金管も遺漏なしです。
さて、締めくくりは、第五楽章アレグロ・コン・フォコです。この楽章に、ポロネーズ主題が出てくることから「ポーランド」という副題が付いたと説明されていますが、これはチャイコフスキー自身の命名によるものではありません。私の考えでは、この楽章のテンポはあまり遅くないほうがよいと思います。このラザレフの演奏では、通常より早めのテンポ設定で、メリハリが効いています。ティンパニも決然とした響きを聞かせており、金管も安定し、最後のコラールも見事に決まります。極めて直線的に運んだ、前進性に溢れた解釈です。
余白に、別の日に演奏された、イタリア奇想曲が入っています。EXTONにしてはサーヴィスが良いです。このイタリア奇想曲も早めのテンポで一気に運んだ快演と想います。
チャイコフスキー
交響曲第3番 ニ長調 作品29「ポーランド」
イタリア奇想曲
アレクサンダー・ラザレフ
読売日本交響楽団
演奏:9
録音:10
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