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そんな娘だが、生活のページを丁寧にめくってみると、柔らかく、またおおらかな一面も持ってい
る。 例を挙げるなら、我が家を訪ねてくれた客の帰りを、その姿が角を曲がって見えなくなるまで
見送る習慣だろうか。そんな習性みたいな行為を、彼女はこのように言う。
「お母さんが何より大切にしていたことだったわ」 母親を通して受け継がれてきたのだそうだ。聡子の表情には、妻が強引な押しつけで迫った風も ない。この身の記憶でも、教えられていた様子には思い当たらない。いつの間にか、家族の営みと
いう流れの中で、彼女らしい行動として定着していったのだろう。
また、来客との遣り取りに耳を傾けていると、彼女のこんな生活感に巡り合うことも多い。 「あら、その程度のこと、くよくよ考えることないわよ。その時が来れば何とかなるものよ」 とか、 「人の体って、思っている以上に逞しいものよ。弱った所があっても、摂生すれば、たいていは元の 健康を取り戻せるんですもの」
そうなると、あの強引なしつこさは、誰から学んだものだ。我が身譲りだということになってしまうで はないか。10歩譲って、身から出た錆と自慰的に諦めてはいるが、自らに降りかかる問題となると、
何とも面倒なものだ。
今回は、どうやら、この程度の追求で済んだが、結果によっては、今後に手厳しい締め付けが待っ ているのは受け合いだ。医師の診断が、ただの良好ではなく、すこぶる良好であるようにと祈るば
かりである。
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