|
「お父さん、電話よ。美世子さんの伯父さんから・・」 受話器を掴むと、耳に当てる前から声が届いた。 「前田さん、お願いがあって電話させていただきました」 「・・・・」 「飛べないカラスのことですがね。野鳥の会の者たちに、森を案内してやって欲しいのですが、如何 でしょうか」
食事になろうかという夕刻だった。受話器の中に、谷口氏の声に被さって、渡辺氏の言葉が反響 した。
「・・・自らの命が持つ役割を・・・」 それは、谷口氏の声に消されそうになりながらも、精一杯の訴えに聞こえた。 「わかりました。お引き受けいたしましょう」 谷口氏の、立て板に水のような語気に押され、考える間もなく流された返答だった。しかし、これ までの間に知人友人から誘われた時のような、反問はなかった。
「命の進みは登り道下り道だが、前に向かう一本道だけだ」 誰からも聞いた覚えがない言葉が、つぶやきとなった。 悩んでどうする。自分に与えられた境遇なら、素直に受け入れろ。考えてどうする。自然発生的に 生じる現実には、自分に最も相応しい内容が多いものさ。無学のカラスでさえ分かっていることだ。
受話器の奥で、自らの結論を肯定する思いが膨らんでいくのだった。谷口氏の声が消えた。目前 にチョコマカの笑顔がおぼろに浮かんでいた。
「出会いがくれた奇跡かも知れない」 ふっと、そんな思いがした。
「飛べないカラス」全 完
長い間、お読み下さったみなさん、ありがとうございました。
「飛べないカラス」は、第1・2章をもって、完結いたしました。
今後の主人公は?
そんな状況(主人公の活躍場面や意外な一面)がおこりましたら、
改めて、執筆させていただくことにいたします。完読、ありがとうございました!!
|
全体表示
[ リスト ]



