心の散歩道

小説、論文、評論、雑記など、思いつくままに書くつもりです。読後の評価をお願いします。厳しすぎても結構です・・・。

太郎の夢

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児童図書 太郎の夢

お知らせです。

「太郎の夢」を書き終えました。

1週間ほど休みながら、次は何にしようかを考えたいと思います。

今のところ、旅行記か昔の人物考証は?・・と考えていますが・・。

児童図書 太郎の夢

     太郎の夢  (10)          中 島  諄
 あのときとちがいます。とびばこは、ぜんぜんひくくなりません。走ろうとしてみましたが、足が前に

出ようとしません。

「どうした、太郎君」

 先生がさいそくしてきました。

「先生、あまり高いので、ちょっと、じゅんび運動していいですか」

 先生のうなずく顔が見えました。太郎君は、シロに教わったうさぎとびをしながら、とびばこに近づき

ました。みんなの笑う声が聞こえてきます。でも、ふしぎです。ぜんぜんはずかしくありません。

 とびばこの横にならんだり、ふみきり板の上でジャンプしたりして、高さをたしかめました。それから

また、うさぎとびで元の位置へもどりました。

 さあ、スタートです。みんなのさわぎがおさまりました。目をつぶって、とぶじゅんじょをたしかめま

す。リズムが、体の中からわいてきました。ジェンカの歌です。目を開けました。とびばこは、ひくくな

っていません。でも、太郎君は走り出しました。

 ーだれかにできることは、自分にもできるんだー

心の中で、そう決心していたのです。ふみきり板の上で、思いっきりジャンプしました。とびばこの上に

シロの手がうかんで、何やらさけんでいるようです。しかし、とぶことしか考えていなかった太郎君に

は、だれの声も聞こえませんでした。

 とつぜん、ものすごいはく手が起こりました。

「やった、やった」

 みんなの叫びが聞こえます。

「やった、やった、太郎がやった」

「やったあ。太郎、太郎。太郎・・・」

 その声が、名前だけのくり返しになりました。

「太郎、太郎」

 きゅうに、地しんかと思いました。体が、ぐらぐらゆれているのです。

「はっ」

 目を見開くと、天じょうが見えました。見なれたもようの天じょうです。

「何、のんびりねてるのよ。学校にちこくするわよ。何回も、起こしているのに・・・」

 お母さんが、ふとんの上から、太郎君をゆすっていたのです。

「なんだあ、夢かあ。今までのこと、全部、夢かあ・・・」

 太郎君は、夢の中で、とびばこの練習をしたのでした。そして、やっぱり夢の中で、学校のテストを受

けたのでした。

 これまでの太郎君だったら、ここで全部をがっかりしてしまうでしょう。でも、今朝の太郎君は、ちょ

っとちがいます。

「とびばこなんて、かんたんさ。人にできるんだもの」

 何となく、今日のテストが、うまくいくような気がするのでした。

                    ー 完 ー

児童図書 太郎の夢

     太郎の夢  (9)          中 島  諄
 ほんのわずかな時間でした。一秒の半分の、そのまた半分もなかったでしょう。ふみきり板の上をとび

上がったかと思う間に、見事にとびこえていました。手と足の、目じるしもないのにです。

「やったあ」

 マットに降りたとき、太郎君は、ありったけの大きな声を出してさけびました。

 そのときです。今まで目の前にあったマットもとびばこも、けむりのように消えました。おどろいて、

シロがいた所へふりかえると、シロのすがたもありません。

「シロー、シロー、シローちゃん」

 体育館を見回しながら、さけびました。

「太郎さん、おめでとう。神様がおよびです。おかげで、私も天国へもどれます。これからは、どんなに

にがてなものでも、背中を向けないでくださいね。あなたは、がんばれば何でもできる人なのです。人が

やれることならどんなことだって、練習しだいでできるのですよ。さようなら」

 シロの声だけが、天じょうの方から聞こえました。シロは、太郎君の前に現れたときと同じように、見

えないままもどって行きました。太郎君の目に、大つぶの、大つぶのなみだが光りました。その光が朝日

をよんだのか、あたりが白々と明けてきました。


 ふと気がつくと、太郎君は、ふとんの中にいました。シロとの練習は、全部、夢だったのです。お母さ

んの声が聞こえます。今日も、起こされてしまいました。でも、いつもと少しちがいます。シーツがめち

ゃめちゃになっていたことと、自分の体がものすごくだるかったことです。マラソン大会で走ったときの

ようなつかれが、体のすみずみにあるのです。それでも太郎君は、朝ごはんを食べ終わると、元気に学校

へ出かけました。何としても、今日の体育では、とびばこをとばなければならないのです。通学路を歩き

ながら、シロとの練習を何度も何度も思い出しました。

「あのじゅんじょなんだ。そして、何も考えないことが大事なんだ」

 四時間目。太郎君は、見事にテストを合かくしました。みんなのおどろく目と、体育館が割れんばかり

のはく手に、ポーズまで作って見せました。

「太郎君、君のとび方はとってもきれいだ。あれならば、六段だって、七段だってとべそうだなあ。ひと

つ、やってみるか」

 せっかくいい気分でいるところなのに、先生は本当に意地悪です。みんなが、喜んではく手をしまし

た。そして、口をそろえて、

「七だん、七だん、七だん・・・」

 と、何度も何度もさけびます。ポーズをとった後だけに、引っこみがつきません。その間に、先生と何

人かの友だちで、とびばこを七段にしてしまいました。こんな高さは、クラスのだれもとんだことがあり

ません。

 先生の合図で、みんなが静まりました。太郎君は、しかたなく、スタートの所に向かいました。

「シロ、大変なことになってしまったよ。とべたからって、じまんなんかしなければ良かった」

 口の中でブツブツ言いながらも、とびばこをじっと見つめました。とても高く感じます。神様のテスト

を思い出して、目をつぶりました。リズムが浮かんできます。何となくとべるような気がしてきました。

 目を開けました。

児童図書 太郎の夢

     太郎の夢  (8)          中 島  諄
 シロのおまじないで、元のとびばこが、どしんと音を立てて床にしっかりとくっつきました。

「何だか、冷たそうなとびばこだなあ」

「そんな弱気になっちゃいけません。このテストは、あなただけじゃなく、私にとっても大切なテストな

のです。あなたが一度でとべなかったら、私は神様からバツを受けなければなりません」

 とつぜん、シロが不安そうな声になりました。

「なぜっ・・・。どうしてなの」

 シロは、うつむいて話し出しました。

「天国にいる者は、だれでもまほうを使えます。それで、いたずらをしないようにと、とてもきびしいき

そくがあるのです。それは、神様のゆるしがない者は、ぜったい天国から外へ出てはいかないという決ま

りです。これをやぶったら、地ごくへ送られてしまいます。神様にお願いに行ったとき、『もし教えるの

に失敗したら、お前は地ごくへ落ちるのだぞ』と言われました。そして、私の決心がかたいことを知る

と、『では、最後に一度だけテストをさせよ』と言っておゆるしになったのです。ですから、この一回

で、私の運命も決まるのです」

 太郎君は、じっと、シロの目を見ました。その目が、

  ーもし失敗しても、私はうらみませんー

 と語りかけています。太郎君は、こちこちになりながら、スタートの位置へ向かいました。失敗はぜっ

たいにゆるされません。いいえ、ぜったいのぜったいの、そのまたぜったいゆるされないのです。

 足がガタガタしてきました。かたもひじも、ガチガチです。こんなじょうたいでは、走ってもスピード

が出ません。きんちょうのあまりに、おしっこが出たくなりました。

「ねえシロ、ちょっと待って。おしっこして来るから」

「いいえ、いけません。もうテストは始まっているのです。ここであなたがどこかに行けば、このとびば

こは、神様のお力で消されてしまいます。そうなれば、あなたは、失敗したことになってしまうのです」

 もうぜったいぜつめいです。太郎君は、おチンチンに力を入れて、おしっこをがまんしました。そし

て、目をつぶりました。

 元気に飛んでいたときの楽しいリズムが、頭にうかんできます。気楽に走りながら歌っていたジェンカ

です。思わず、曲につられて頭をふりました。ふっているうちに、口から歌がとび出しそうになりまし

た。
 
静かに目を開けました。六段のとびばこが、とてもひくくうつっています。

「ようし、行くぞ」

 大声を出したかと思うと、これ以上の速さはないというスピードで、走り出しました。足のふるえも、

かたやひじのガチガチもありません。

児童図書 太郎の夢

     太郎の夢  (7)          中 島  諄
「ばんざあい。とべた、とべたあ」

 うれしさのあまりに、太郎君は、体育館の中を三回も走り回りました。

「おめでとう、太郎さん。その意気だよ。さあ、どんどん、とんでごらんなさい」

 シロのうれしそうな声が、こだまします。

「うん。シロ、もう少しがまんしてね。ぼく、いっぱいとぶよ。今度は、高く高くとんでみせるよ」

 それからは、走ってはとび、また走ってはとびました。それが全部とべるのです。息が切れるのも、心

ぞうがドキドキするのも気づかずに、太郎君は夢中でした。

 走る、とぶ、手を着く、降りる、また走る、立つ。休みなくつづけました。鼻歌まで出るようになりま

した。その歌も、だんだん早いリズムになっていきます。ジェンカ。そう、ジェンカのような楽しいリズ

ムです。

 もう、とびばこのこわさなんて、まるっきり消えてしまっています。それもそのはず、三十三回もとん

だのですから。

「太郎さん、とびばこの高さを見てください。気づきませんか」

 シロが、大きな声を出しました。有頂天になってとんでいた太郎君は、その声を聞いて、マットに降り

た所で立ち止まりました。

「高さって・・・」

「ようく、見てください」

「あれっ、ずいぶん高いねえ。さっけより、高くなったみたいだよ」

「そうですよ。これは、六段の高さです。私が、少しずつ高くしていたのです。気づかなかったでしょ

う」

 とびばこの中のシロの声も、うれしそうです。

「ぼくが、六段をとんだだって・・・。うそでしょう」

「いいえ、うそじゃありません。ためしてごらんなさい。今までと同じようにすれば、かならずとべます

よ」

 シロの言葉にさそわれて、太郎君はスタートの位置に立ちました。高くなったようには感じますが、と

びばこは、やっぱり四段のままです。

「まだ、わかりませんか。では、これならどうでしょう」

 見つめているうちに、段が六つに変わりました。

「どうです。高さは同じでしょう」

 シロの言うとおりです。

「ようし、とんでみるよ。シロ、しっかり見ててね」

 そう言うと、太郎君は何にも考えずに走り始めました。ふみきり板に両足をそろえてジャンプしまし

た。足も開き、手もシロの手形の所に着きました。体が軽くうき上がりました。マットの上にも、やわら

かく降りることができました。全部の動作が、クラスで一番とびばこがうまいたけし君より、きれいにと

べたように思いました。

「どうです。あなたは、もう六段だって上手にとべるのですよ」

 パッととびばこが消えて、シロのすがたが、ちょこんと現れました。

「ありがとう、シロ。ぼく、とびばこがすきになっちゃった」

「では、最後にテストです。神様のとびばこでやることになっています。これができたら本物です。がん

ばってください。神様のとびばこよー、出てこーい」

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