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地震から10日目、交通規制実施に協力すために、走行数を減らして運行しているバスに
乗った。始発地点に近い停留所から乗車したので、運良く座席を確保できた。次の停留所
ではほぼ満席。それから後は、押し込めるだけ押し込むという、終バス並みの混みよう。
立っている者の辛さは、想像しなくても表情で分かるのだが、目が合うことを恐れて我が身
の靴先を見つめていた。
バスは、そんな乗客の思いなど全く無視したまま、たんたんと次の停留所を目指して進ん でいる。車内の横揺れが作用してか、揉み合っていたはずの乗客同士の間が緩めになった。
停留所間が一番長い坂道に入ったのだ。
「あと僅かの辛抱だ。次の停留所では、たくさんの人が降りるからな」 自分の足先に見える他人の靴に話しかけた。 予想通り、バスが止まると半数の人が降りた。対面の客が見えるようになった。どの顔も、 ホッとした表情をしている。と、思ったのも束の間。新たに乗車してきた客で、またもや足の踏
み場もないほどの混みようになった。車掌のアナウンスが聞こえても、誰一人、奥へ詰めよう
とする動きもない。
そんな時、一人の老女が、他人の脇の下を頭で掻き分けるようにして、顔を出した。右手に 杖を持ってはいるが、使いようもない。いかにも心許ない動きをしている。考える間もなく、老
女の前に手を出し、その左腕を掴んでいた。
「大丈夫ですから・・・」 老女の遠慮気味の声を聞きながらも、はや立ち上がっていて、その体を支えていた。 「地震で救われても、バスで怪我をしたのでは馬鹿らしいですよ」 そう言いつつ、滅多に出ない笑顔が出た。 普段に起こりうる小さな出来事だったが、ふと、疑問が生じた。 「この老女と顔を合わす前に、何人もの老人が目の前を通っていたのに・・・」 である。無意識のうちに、人を選別していたのだろうか。 |

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