心の散歩道

小説、論文、評論、雑記など、思いつくままに書くつもりです。読後の評価をお願いします。厳しすぎても結構です・・・。

街散歩

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古い里の面影

 久しぶりに、横浜駅界隈を散策した。高島屋に、ホテルシェラトンと、ずっと以前から変わらない
 
眺めが続く。その間を奥へ向かって進み、細い商店街へ入った。かなり雰囲気が異なる店同士が
 
隣り合っている。
 
「これは何屋なんだ」
 
 一見だけでは見当がつかない店もあれば、何処の駅近くでも見飽きているマクドナルドやドトール。
 
聞いたこともないカタカナ表現の店が次々と並んでいる。間口が1メートルもない店が、1区画の建
 
物を4等分している。しかも、3階以上はある。
 
「上に上がると、どうなっているのだろうか」
 
 好奇心は募るが、何となく引ける思いになって、素通りを決め込んだ。
 
 しばらくブラブラしていると、坂になった。
 
「おやっ」
 
 1軒の喫茶店が眼にとまった。その佇まいが、無性に懐かしさを呼び覚ます。
 
「此処は、川の袂にあった喫茶店じゃないか」
 
 その川がなかった。背伸びしても、店の間の横壁から遠くを透かして見ても、視界に入るの
 
は建物ばかりだ。
 
 気が引ける思いを押し殺して、肩の幅くらいしかない路地に入り込んだ。1歩、2歩と、壁伝い
 
に歩みを進めた。振り返っても、通りが透かせない所まで入り込んだとき、見覚えのある汚らし
 
い情景が開けた。
 
 川っ縁に、古びた丸太組みが並ぶ。布団干しにも使えそうなほど、太い。その向こう側に、すき
 
ま風が音を立てそうなくらい古い家が、長屋状に並んでいる。その軒先には、人目もはばからず
 
に女性用の下着が吊され、どぶ臭い空気の中を漂っている。そこは、まさに、夜の蝶という言葉
 
が通用していた時代の名残りだった。
 
「歓楽街とは言えなくも、まだ夜の営みは続いているのだろうか」
 
 そんな思いにかられる男の街の一角を見た。
 
 

振り返ると・・・

直径30㎝はあろうかという常緑街路樹が、見事な茶褐色の葉を付けて枯れている。見渡すと、一
 
本二本ではない。乱視の眼に映る距離だから、百mくらいだろうか。その間隔の中に、黄色く色づ
 
いた銀杏に混じって、八本までは数えられる。
 
 此処は、四季を通じて、公園管理人が世話をしている所なので、この十年、こんな姿は見たこと
 
がなかった。おそらく、人の手では防ぎきれないくらいの、環境変化があったのだろう。

 そんなことを思いながら、後ろ手で歩を進めていると、ふと、今年の夏の暑さと日照りが浮かんで
 
きた。一ヶ月以上にわたる、日照りの中の猛暑だ。その上、少し前の梅雨時にも雨が降っていない。

 半年前の生活など、滅多に考えたことがない自分なのに、何故かこの日は、樹木の生命という、
 
どうでも良い事が気になってしまった。あと数日で正月(一週間前のメモです)。我が家の松は大丈
 
夫だろうか。毎年楽しませてくれる隣家のしだれ梅は、健在だろうか。

 家路への足が、心なしか速まっていた。
 
 

時計店

 古風で、間口の広い時計店を見つけた。アンティーク時計も並んでいる。

カチ、コチ、カチ、コチ、カチ・・・。遠慮がちな音が懐かしい。

知らず知らずのうちに、リズミカルな音に耳を占領されていた。

前方後円墳に似て、円の部分が六角形の柱時計。今にもボーンボーンボーンと、時を告

げそうだ。

文字盤の上に、小さな開き窓が付いている鳩時計。こちらは、ピッポー、ピッポーだろう

か。

何の飾りもない寸胴な四角形だが、文字盤に太いローマ数字が見える時計。

どれも、コチ、カチ、コチ、カチ・・・と、見る者の鼓動と競い合おうとする。

 時計ほど、今昔の歴史を細かく伝える物はない。

機能が単純で渋さがある物から、渋さだけを取り除いて派手さを加えた物。

形にこだわって、大小を変えたり奇形を目指した物。

そして、物理的なからくりへ・・・。

 その次は、生活の中に時代の要求を溶け込ませようとしたのか、小さくて軽い物を求め

て、力学的な機能から電気的な機能へ。

 最近の物は、両者の機能が組み合わさって、より機能的であったり、派手さを売り物に

したからくりが目立っている。色も、暖色へと変化しているようだ。

 時間を感じ始めると、無性に、年代順に並べてみたくなった。

 バスを、天守へ向かう城門前で降り、急坂を上った。城らしい物は、バス停

横にある苔むした石垣だけで、歴史的な時間を感じるというより、静かな森の

自然公園といった印象の方が強い。坂を上りきると、整備された道に促されて

進んだ。公園という印象がいっそう確かになった。その道筋の奥に、資料館が

見えた。説明を聞かずとも、地形から、此処が本丸跡だと推測できる。いわゆ

る山の頂上である。残念なことに、青葉城址には城を思い描ける物は石垣しか

なかった。意気消沈しながら資料館の玄関に向かう。こうなると、展示物への

期待も薄くなる。

「適当に見回ってから、省略してきた観光スポットでも回ることにしよう」

 正直言って、そんな気持ちで覗き込んだのが本音だった。だが、何と、一通

り見学するのに、2時間も要してしまった。

「此処だからこそ見ることが出来る」

 中には、そんな歴史を物語る資料がずっしりと並んでいたのだ。学校で学ぶ

日本史にはない部分。それが資料館の価値だと考えている自分には、十分に満

足させてくれる資料ばかりだった。支倉常長の実績や系譜、歴代当主の政の記

録や年表、城下町のイラスト風映像、藩主・武士・町人・農民たちが使ってい

た生活用品や食品の例、仙台の町と城の位置関係が分かるパノラマ模型などな

どである。

 パノラマでは、広瀬川を渡った先の山に、城郭が築かれていたこと、川と断

崖に囲まれていたこと、城に入る橋が一つしかなかったことなどが、一目で分

かった。橋が幾つあっても良いという地形ではないので、便利な所一つだけで

も不便はなかったのだろう。自然を生かしたままの城作りが、防衛にも役立っ

ていたのだ。その先に武家屋敷が続き、一番奥が天守である。川向こうには、

縦横の通りを碁盤の目のように配置して、緑が多い寺社庶民の町がある。

 伊達政宗は、陸奥の都を夢に見て、京都を模した町作りを目指していた。歌

舞伎者、戯れ者と揶揄されてもいる。しかし、世界一堅固な城だと、外国人の

古城研究家に溜息をつかせたほどの城作りと、500年近い今日になっても、

杜の都と評されるほど美しい町作りをしていたのだ。

 2時間後に資料館の外に立ったときは、正宗がどんな思いと計画の中で、こ

の仙台の城下町を構築していったのか、彼の全貌が見えたような気がしたのだ

った。

 杜の都、仙台。こんな形容で呼ばれると、美しい街並みのイメージがついて回り、

ロマン漂う気配さえ受ける。言わずと知れた伊達政宗の居城があった町でもある。

 駅前の歩道橋に立って、まず町を眺めてみた。車道の両側に並木が続いている。

縦に伸びた方が本通りなのだろうか、道幅が広い通りになっている。横の道も賑や

かである。どちらもコンクリート建築がビッシリと肩を並べていて、道路側の面は

看板だらけといった様子である。何のことはない。都市と名が付く所なら、何処に

でも見られる風景ではないか。これでは、杜の都と形容される意味がない。

 何処かに、その形容に相応しい眺めがあるはずだ。そんな思いを背負って、尚も

しつこく見渡していると、その縦に伸びる道の中央に大木が植えられていて、見事

なグリーンベルトを作っていることに気付いた。この緑は、札幌の大通公園とは趣

が違う。どの木々の大枝も小枝や葉を無数に持っているため、隣同士が細枝を交差

させて、ベルトラインを緑で塗りつぶしているのである。それでいて、その1本1

本は自らの色を主張するかのように、ベルトがべた塗りになるのを避けて、葉の粒

々を見せているのだ。それが、何処まで続くのか知れないほど真っ直ぐに伸びてい

る。それだけを眺めれば、まさに圧巻だった。

 次に目に入ってきたのが、看板の文字だ。ある建物には一箇所に、別な建物では

一軒置きぐらいに、「牛タン」という字が飛び込んできた。その数、指を折っても

両手では足りない。仙台は、牛タン料理の町でもあった。駅を出たのが昼間だった

ので華やかさはないが、夜になってから同じ場所から眺めたら、これらの看板に灯

が灯り、駅前を「牛タン」の文字一色にして、観光客を惑わせるに違いない。

 仙台の町の第一印象は、まず、そんなところだった。が、これで満足する訳には

いかない。杜の都という形容についてもまだ不十分だし、青葉城という大きな観光

スポットを訪ねないでは、仙台を語ることは出来ない。

 歩道橋を降りると、其処はバスターミナルである。さっそく青葉城方面の観光地

を巡る周遊バスに乗った。時間が限られているので、全てを回ることは断念して、

目的だけを目指した。中でも、伊達政宗の銅像は、テレビや雑誌で何回も見ている

し、数十年前に足元から見上げたこともある。そこで今回は、城址だけに絞った。

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