心の散歩道

小説、論文、評論、雑記など、思いつくままに書くつもりです。読後の評価をお願いします。厳しすぎても結構です・・・。

街娼ナナさん

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街娼 ナナ  6

 彼女は今夜も街角に立ち、通りすがりの男性を捕まえては、ホテルへ誘っ

ているに違いない。1回に2万円。時間だけで計算すれば、一夜の収入が

多くて6万円くらいだろうか。月を20日と捉えると、120万円の収入

になる。単純な計算では、年間で1千万円を越えることになる。だが、雨

の日もあれば、客が着かない日もある。病に伏せることだってあるだろう。

計算通りにいくはずはない。何しろ、来日から2年経過して、まだ街角に

立ち続けているのだ。

心残りなのは、何と言っても、返済を確実に認めあえる貸借関係になって

いないという、出資者との関係だった。

「この仕事を早くやめたい」

 この日以来、彼女の切実な気持ちが胸を突いてくるようになった。日本の

女性が彼女と街頭で出会ったなら、きっと蔑みの目で見るのだろう。同じ 

女性でありながら、同じ女性としての思いも持っていながら、やむを得ず 

街角に立つ人もいる世の中なのだ。蔑みの目を否定するわけではないが、 

こんな人でも切なさ辛さがあるのだと、心の片隅にでもいいから、わずか 

な同情を残して欲しい。

 そう言う私には、彼女を蔑む言葉も責める言葉もない。それは、決して男

だからではない。一日も早くナナさんの夢が叶い、胸を張って町を歩ける 

ようになることを祈っている。

「話し相手が欲しくなったら、連絡するんだよ。ナナさん」

                   完

街娼 ナナ  5

     何と言ったらいいのだろうか。こんな不安定な状態で、なお先が見えない

     暮らしをしている。それでも彼女は、明るく前向きに生きていて、将来へ

     の夢も持っているのだ。生い立ちを想像するに、学習に恵まれた環境では

     なかったらしい。それが社会的な知識不足を呼んだものか、はたまた、国

     の違いから来る社会性の違いなのか、ヤクザという言葉の感覚にも、大き

     な開きがあると感じた。暴力団とは違い、ヤミの商売をする人たちという

     程度なのかも知れない。日本のヤミ金業者よりいい加減な貸し金制度でも、

     彼女は肯定できているのだ。

     会話で向き合っている限りでは、決して知恵遅れとは感じられない。受け

     答えの内容を分析すると、質問からはみ出ることもなく、必要に応じて自

     らの考えを追加する点など、日本語に不安がある状態なのに、日本人以上

     にしっかりした返答だった。おそらく知能的に優れた素質の持ち主なのだ

     ろう。

街娼 ナナ  4

    今までに、日本のどこかへ旅行しましたか。

横浜から出たことありません。パスポート預けてあるから、身分証明書ありません。

遠くへ行くの不安です。借金返して自由になったら、この仕事やめます。

    そうだ、日本に来てからも、借金を返しているんだったね。

はい。毎月、おばさんの所、届けます。20万円の時も、10万円の時も、5万円の時もあります。

    2年間で、いくら返したの。

覚えてません。でも、返す時、おばさんが書いたもの見せてくれるから、大丈夫です。


    (彼女から、何回となく、ヤクザという言葉が出ている日本人が考えるヤ

     クザのイメージは、非常に暗いものだ。彼女の言うヤクザがどんな人た

     ちなのか、理解できていないことが、気になってならなかった)


    おばさんって、そのヤクザの組織の人でしょう。信用できるの。

事務所から頼まれて、お金を預かっている人です。信用する、他にありません。

ヤミで借りたから、領収書ありません。だから、あとどれだけ返せばいいか分かりません。

    なるほど、でも、それは不安だね。今までにいくら返したとか、借金があ
    とどれだけ残っているかなど、知りたいでしょう。

知りたいです。でも、おばさんに訊くと、困った顔になります。悪いから、私、訊くのやめます。だけ

ど、いい人だから大丈夫です。

街娼 ナナ  3

    どのくらい、返せたのですか。

はい。日本のお金でいうと、1万円借りたら、3ヶ月で2万円返す約束です。でも、たくさん借りたの

で、利子が少し安くなりました。それでも期限まで、2倍になります。5年の約束だったのですが、4年

目になって、父が癌で倒れました。借金、まだ、半分ありました。

    それで、どうしたの。

家族を守る、私だけです。私、ヤクザの事務所に行って、借金の借り換えを頼んだのです。前の借金と利

子、それから父の医療費や日本で働く準備金も合わせて、500万円になりました。

    どうして日本を選んだのですか。

ヤクザに、日本で働くなら貸すと言われたのです。その方が、早く返せると教えられました。

    その時に、日本でどんな仕事をするか、説明があったのですか。

いいえ。借金を返せるような仕事を、日本で探しなさい。先輩がいるから助けてくれると言われました。

私、何でもするから紹介してくれと頼みました。そう言わないと、借金も返せないし、父の医療費もあり

ませんでした。ヤクザは、日本にも事務所があるので、安心して働けるように連絡してあげると言いまし

た。

    ナナさんは、日本に来て、どのくらいになるの。

あと少しで2年です。

    たった2年で、そんなに日本語が上手になったんだ。

ありがとうございます。日本語は、香港のお店で、お客さんに教わりました。日本に来てから、日本語学

校で勉強しています。卒業の資格を取ったら、日本と香港に事務所がある会社で、働きたいです。

街娼 ナナ  2

    ナナさんが香港にいたときのことを教えて下さい。

私、香港に生まれ、香港で育ちました。日本へ来るまで、香港から出たことありません。学校出てから、

近くの店、手伝っていました。はい、日本の飲み屋みたいの店で、夜、男の人と一緒にお酒を飲む仕事で

す。両親と弟妹と5人で暮らしていました。兄がいますが、家を出て、香港より南にある島で農業してい

ます。姉もいますが、結婚して私たちと違うアパートにいます。

    すると、兄弟は5人なのですね。お兄さんが南の島で農業してるということは、あなたのお父さ

    んかお母さんが、昔、その島で農業をしていたのですか。

いいえ、違います。その島の土地を兄が見つけてきて、父に計画を話しました。父は、その土地を手に入

れるために、日本のお金で300万円くらい借金して、買ってあげたのです。

    ほう、借金をねえ・・。300万円ですか。大金ですね。お父さんには、大金を借りられるだけ

    の資産があったのですね。それを担保にして・・・ですか。

担保、分かりません。

    ああ、ごめんなさい。借金を返せなかったときに、代わりに差し出す財産のことです。

財産・・ありません。父の仕事は、建築作業のアルバイトでした。財産、持ってません。1日働いて何円

という生活でした。そのお金で、私たちは育ちました。

 兄が土地を見つけてきたとき、父は暮らしを変えるチャンスと決めました。父に出来なかった夢を、兄

で実現させたかったのです。でも、銀行は貧乏人を相手にしてくれません。島の土地を買うからと頼んで

も、貸してくれませんでした。それで、利子は高いけど仕方なく、地元のヤクザに頼んでお金を借りまし

た。

    そうですか。悔しかったでしょうね。

借金を返すために、私も協力しました。仕事を、夜遅くまでにして、男の人にお酒をいっぱい飲ませまし

た。お酒が嫌いなのに、飲まされることもありました。そんなに頑張っても、借金はなかなか少なくなり

ません。

    お兄さんのためなのに、ナナさんまで大変な思いをしたのですか。

はい。兄は、一家の中心になる人です。中心が仕事で成功すれば、みんな楽になれます。兄のためのこと

は、私のためのことと同じです。中国人、みんな同じ考えです。

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