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1781年、天明元年に出版された「装剣奇賞」に記載された。 吉村周山の彫った根付の実例の一つに蹲踞姿勢の奇妙な怪人がいるんです。 このようになんの説明もされていず、いったいこれはなんなのかこの時点ではわかりません。 ただ、この意匠根付はいくつか現存しているようです。 ぼくの持っている、図録だと確認できるだけでも三体。 1998年の(財)富山佐藤美術館「根付彫刻江戸のしゃれ」に載る象牙製のもの、ちなみにこの図録には「インドネシアの悪魔」とある。 (株)提物屋の図録「だてくらべねつけのいろどり」には木製と象牙製の二体(内、象牙製の一体は既述した富山佐藤美術館の図録に載った物)ちなみにこちらは「インドネシアの魔除」 そして 2009年の(株)提物屋の図録にも、彩色された木製のものが掲載されている。こちらには「インドネシアの精霊」とある。 天明元年(1781年)の段階では、これはいったいなんなのか、まったくわからないのですが、1998年の図録には、ちゃんと名前が付いている。 ただ「インドネシアの悪魔」→「インドネシアの魔除」→「インドネシアの精霊」と微妙に変化はしているんですが。 しかし、これはいつ誰がこのようにインドネシアの形而上の生き物だと看破したのだろうか? 答えはレイモンド・ブッシェルというアメリカ人コレクターが1975年に上梓した ゛NETSUKE FAMILIAR AND UNFAMILIAR゛です。 日本語版の翻訳されたものによると「ジャワのクリスの柄」とあり、タガヤサン(鉄刀木)製とある。 クリスというのは、短刀のことで、外国製の短刀の柄を江戸時代に根付に転用したものと説明がある。 また、ブッシェル氏は、1781年の「装剣奇賞」にも言及があって、周山がこの短刀の柄にある意匠を根付意匠に取り入れたと仮説している風にとれ。おそらくその仮説は信憑性が高く的を得たものだろう。 調べてみると、どうもこれはインドネシアのバリ島に伝わるバロンと呼ばれる聖獣と思われる。 ジャワ島のクリスの柄からインドネシアの精霊としたのは正しい解釈と言える。 しかし、レイモンド・ブッシェルって人の凄さを改めて認識するとともに、根付芸術の鎖国状態の18世紀の日本に於いて、東南アジアの聖獣まで、意匠として貪欲に取り入れていく、そのバイタリティ・・・・そっちもかなり凄いです。 とにかく、あなどれません根付って・・・・
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