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母はカレーが好きな人でした。
専門店のカレーからレトルトのボンカレーまで、僕が作るカレーも喜んで食べ、
お皿にご飯は盛らなくていいからカレーだけを盛れ、と言うほどでした。
ご飯を食べるとその分、カレーを食べられなくなるのが嫌だったようで、
実際そのカレーだけのお皿をたいらげて、お代わりすることもありました。
僕も一時期カレー作りに凝り、タマネギを長時間炒めたり、お肉も長い時間煮込んで柔らかくし、市販のルーを何社か混ぜ合わせて好みの味を探したりもしました。
ただ、僕の父はカレーやシチュー、あとカツ丼や親子丼のように、ご飯とおかずが
一皿になっているのが嫌いな人で、
また母との関係が悪化していったこともあり、だんだんとカレーを作る回数は減り、
ここ5〜6年は一度も手間と時間をかけてカレーを作ったことはありませんでした。
数日前、たまたま冷蔵庫の奥に、特売品で買ってあったカレーのルーを見つけ、
その賞味期限が間近だったこともあり、数年ぶりに本格的にカレー作りをしてみました。
お肉には鶏の手羽元を、切り込みを入れ塩麹に三日くらい漬け込んでおきました。
タマネギはみじん切りにして炒め、それとは別に大き目に切ったタマネギは、
長い時間煮込むと溶けてなくなるので仕上げ間近に入れます。
ジャガイモは以前作っていた頃は全く入れませんでしたが、
母が好きだったこともあり、今回は入れることに。
どうしても一部が溶けて砕けて、ざらっとした食感になるのが苦手なので、
ひとくち大に切ったら、そのひとつひとつをピーラーで面取りしました。
ニンジンも母が好きだったので多めに切りました。
一時間くらいタマネギを炒めたらニンニクのスライスと生姜(チューブのしかなかった)と鶏肉とニンジンを一緒に炒め、水と赤ワインも少し、味の素とローリエも入れ
煮込み始めます。
いつもだとキューブのコンソメも入れるのですが、鶏肉を漬け込んだ塩麹の塩分が
あるので今回はやめました。
ジャガイモは10分くらい時間差をつけ、フライパンで炒めてから鍋へ。
更に煮込み、野菜が柔らかくなってきたら、冒頭で大き目に切っておいたタマネギを、鍋の中で浮いてきた油をすくい、その油を使って炒めました。
(そういえばアク取りを一度もしませんでしたが、アクの中には旨味も豊富にあり、
目の敵のように取り過ぎると鍋の旨味も捨ててしまうことになるそうです)
タマネギも鍋に入れ、一煮立ちしたくらいでカレールーを投入します。
今回はスープカレーという(発売当時)新製品だったため、様子を見ながら少しづつ投入。
全部入れても好みのドロドロにはなりませんでしたが、味見をする際の過去の失敗経験から、カレーだけでなく少量のご飯と一緒に食べてみて、
塩麹の影響もあり十分味は濃く、晴れて完成となりました。
まだ午前中、朝食前だったのですぐにでも食べたいのをこらえ、味の染みるの待って晩ご飯として食べることに。
ただ、夕方から深夜までいろいろ忙しく、夕飯を食べ始まったのは午前1時過ぎでした。
我ながら上手く出来たと感心しながら、あと一口くらいで食べ終わろうとした頃、
突然家の電話が鳴り響きました。
深夜の2時になろうという時間帯の間違い電話に腹を立てながら受話器を取ると、
母の入院先の病院から、母の呼吸が止まりかけているという連絡でした。
姉に連絡をし、身支度をしてから急ぎ病院へ向かいましたが、僕が到着した時には
もう呼吸も心臓も止まっていました。
僕より一足早くついた姉は、母の最後の一呼吸を聞いたそうです。
まだその身体は、暖かなままの母でした。
葬儀屋さんに連絡をし母をいったん斎場に引き取ってもらい、
父の時と同じようにまた母を家に迎え入れるための家の大掃除をするので、
式の打ち合わせはまた姉に任せ、僕は家に戻りました。
台所の僕の食べたカレーのお皿を見た時、ふと、家族の胃袋はつながっているという話を思い出しました。
カレー好きだった母が僕の胃袋を通じて、久しぶりのカレーをお腹一杯食べ、
満足し、幸せな気持ちまま旅立ったいったのではないか、そう思えてきました。
ただの偶然、僕の勝手な思い込みなのかもしれませんが、
お集まりの皆様にもそう思って頂けると、きっと母も喜ぶと思います。
以上長くなりましたが、献杯のご挨拶に代えさせて頂きたく思います。
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母の火葬を待つ間、精進落としの席での僕の挨拶(補完)でした。
お通夜と葬儀での挨拶は、身内だけの家族葬ということもありご住職にお任せし、
献杯の挨拶だけを喪主の僕が務めました。
2016年3月10日、午前3時51分が母の死亡時刻となりました。
(実際に息を引き取ったのはこの1時間近く前でしたが…)
死後2週間も経ってからのご報告となってしまい大変申し訳ありませんでした。
葬儀は無事に終わりましたが、直後そのまま彼岸の準備に入ったこともあり、
忙しさが続いたままで、自分の中では母の死が数日前のことのようです。
「昨日は晩ご飯にカレーを食べたんだよ」
カレーを作った翌日に母の見舞いに行ったら、母にそう告げるつもりでいたのを、
ふと思い出しました。。。
カレー好きだった母・終
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