|
「おまえは本当に非の打ち所がなく可愛い」 そう自分の作品に語りかけると、無生物とは思えないまでに気配を感じることを葛西は知っていた。 自らの気配を誇示するかのように無言に肩をそびやかす姿を見せてくれるのだと葛西は思う。実際それはどこの誰が間違っているといおうがハイハイと頷いて構わないことだ。 自分が判っていて他人にとやかく言われても少しも揺らがない完璧な確信を持って真実だ。 「自分でも非の打ち所がないと思うだろう?」 その通り判りきったことを聞くなと作品のすべてが鏡の中から自分を見上げている瞬間をまた味わい、葛西は林檎をしっとりと噛む感触に似ているとまた思う。何度経験しても飽きない快感だ。 今日の作品たちは特に美しい出来で、間違いなく完璧でとりあわせも絶妙である。 「まずこの白地の透け素材のワンピースの下に桜色のキャミソールを着てそれを覗かせて、円形の襟ぐりと見せてV字に近いところも完璧だ。 鎖骨を美しく見せる。そこに髪をアップにして少し垂らせばバランスが完璧になってイイ。王道だが王道はここまでだ」 すっと葛西は自分の指を伸ばし、ありまの頸を過ぎて鎖骨の窪みをなぞった。 ありまはチークをはたいた幼い顔立ちのなかで視線だけを反してきたが、それもすぐにあらぬ方向へ失せた。丁寧に化粧をしたマスカラにだまなどなく、伏せたままの睫毛は細く長く陰を落としている。 「頸に濃紺と白のリボンをネックレスのように巻けばイイ感じにハズシになるだろう? それでこのブーツ、皮製をアンティーク風にして作ったんだ。腐食時間も絶妙に美しいな? …なあ、ありま」 「そう、ですね」 「勿論おまえも完璧だよ。よく似合う」 心のそこからの賛美を贈ったが、ありまがむしろ迷惑そうにくしゃりと表情をしかめさせるのが鏡に映った。 しかしそれも一瞬で普段のどこか不機嫌そうな表情に戻った。葛西は自分の作品の出来に満足して作品を背後から抱きしめた。首筋に鼻をうずめてそのニオイを吸い込むと、山桜の上品な香りがしてなかなかだと感じた。 「やっぱりおまえ以上に俺の作品が似合う人間なんていない。おまえの表情も髪色も髪質も肌質も肌色も姿も手足の細さも長さもすべて完璧だよ。みんな喜ぶぞ? おまえをよく見つけたなと言って貰える」 葛西は少し身を起こし、ありまの白く幼いままの手は左手の中指に嵌った指輪に手を添えた。 ありまが摩訶不思議そうな表情になり、しかしすぐに淡々とした口調のまま言う。 「今日って―最近の彼女もおでましになんじゃねえんですか?」
|
全体表示
[ リスト ]



小説ですねw私は小説書けないので、凄いですねwこれからも頑張って下さいww
2007/1/27(土) 午前 3:24 [ annmonaito447 ]
わーいわーい褒められちゃいました★ 有り難うゴザイマス★ まあ小説まがいですが頑張って生きます…ウフフフ腐
2007/1/29(月) 午後 10:08 [ dokusyou7 ]