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「私だって将来考えてるわ」 マリイが唐突におかしな台詞を口走ったが、こちらを睨み上げながら笑わないのは彼女が本気の時だと要一郎は知っていた。心理学を学んでいる同窓いわくの言葉を思い出して低く相手の言葉を引き継ぐ。 「将来考えているとは言ってもどういう意味でですか」 「愛人になりたいから」 「…そんなの、今でもしてるんでしょう。既婚者が混ざってるって言うのは公然の話だと聞いていますが」 要一郎は冗談にもせず突き放すように言った。 きゅうとマリイは眉をしかめて不機嫌そうな表情になり、「誰が言ってるのよ。今までそんな慰謝料請求されかねないようなあぶない橋、渡ったことないわよ」と愚痴るように言い、 「でも渡るつもりよ。私ってお金ばかりは与えられて育ったから、楽な仕事をして十五万前後の給料を戴くのも、こきつかわれて二十万の給料明細を見て寝てばかりの人生も耐えられないと思うもの」 理屈は通っているが甘えたことを言う。 「DVされてもお金があればいいんですか」
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