北極冒険家荻田泰永のブログ 北極点を越えて

日本人初の北極点無補給単独徒歩到達を目指しています!

北極点無補給単独徒歩到達への道

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凍える海

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今日のNHK見ていただいてメッセージをよせてくれた皆様、ありがとうございました!がんばります!

今日は読んだ本の紹介と、読んだ上での感想と思うことを書かせてもらいます。

紹介する本は「凍える海」ヴァレリアン・アルバーノフ著 海津正彦訳 ヴィレッジブックス刊です。
ホームページでも以下と同内容で本の紹介をしています。

ざっと紹介すると以下の通り…。

1912年8月、ロシアの北極探検船、聖アンナ号は23名の乗員を乗せてサンクトペテルブルクを出発した。航海の目的は、北極海を通り抜けベーリング海峡に抜ける北東航路の歴史上2番目の通過だった。

しかし、出発後2カ月たらずで聖アンナ号はカラ海の厚い海氷に閉じ込められて身動きが取れなくなり、囚われた海氷から抜け出せないままに一年半、聖アンナ号は氷上を漂流した。

いよいよ食料や燃料の窮乏に陥ると、航海士として乗船していたアルバーノフは船長のブルシーロフと対立するようになる。囚われの聖アンナ号を下船し、海氷上を徒歩で陸地を目指すことを決意したアルバーノフは10名の同志とともにあり合わせの道具でソリやカヤックを作り出して決死の逃避行をはじめる。

当初、10日も進めば陸地を見つけ出せるだろうと目論んでいたアルバーノフ一行であったが、常に流れ動いている海氷に翻弄され思うように距離が伸びない。過酷な旅の中で次々と仲間は力尽きていく。
さあ、アルバーノフはどうなったのか?聖アンナ号はどうなったのか?それは読んでのお楽しみということで!

かつての北極探検は帆船を用いての数年がかりの探検が主流だった。その時代は一度出航してしまえば本国と連絡を取ることもままならず、約束の年月が経過しても帰ってこないという段になってはじめて捜索隊が派遣されるという時代であった。

このような昔の探検記を読むたびに、現在我々がおこなっているような冒険行は恵まれていると思う。
通信手段も発達し、何かトラブルが発生して命の危険が迫るような状況に陥れば衛星電話一本で飛行機が救助に訪れる。果たしてそのような体制を整えたうえでの冒険は真の「冒険」と呼べるのか?私も考えることはある。

まあ、その辺りの主張には各個々人の考え方によって差があると思うが、通信手段を持つことが悪いことだとは私は思わない。時代性を言い訳にするならば、通信手段を持つことは今の時代の責任でもある。もしも音信不通になってしまえばこちらに何の問題が無くとも、カナダやロシアなりの空軍やコーストガードが出動して捜索される事態になってしまう。
それでも、真に自分の力を120%発揮するような冒険行を行いたいのであれば、退路を断って通信手段も持たずに北極海に乗り出せば感じ方は違うかもしれない。

今から100年前の北極探検は、今の時代の火星探査のようなものだ。今現在、もし火星に人類が行くとしたら人智の及ぶ限りのあらゆる手段を講じて、最新の設備と道具を駆使して火星に臨むだろう。かつての北極探検隊は、その時代の最新の設備と、考えうる限りの最上の手段を講じて北極に臨んでいた。もしその時代に衛星電話があったら、アルバーノフもナンセンもピアリーもアムンゼンも、総じて持参したはずだ。

あらゆる道具が発達して、北極点に行くだけならある程度のお金を積めば誰にでも、明日にでも行くことが可能な現代では、冒険はいかに少ない道具で過酷な環境に自分の身を置き、しかも大きな目的を達するか?ということが「良い」とされるようになった。
その過程で、冒険や探検の持つ意義というのが、「国家の利益」「航路開発」「科学の発展」というものから「個人の名誉」に変わっていった。

私は思う。全ての退路を断って、自分の身一つで北極点に立ち、誰の援助も受けずに冒険を完結することは一見美しいようにも映るが、それは完全に一人称の行為であってそこに何の意義があるのか?自分が設定した目標を自分の力で達成して、自分の中で完結するだけの、まるで自慰行為のような旅ではないのか?

ひたすら内に向かう行為というのは、個人の行為としてはカッコいいかもしれないが、社会性はない。個人の時代の極みに来ているとも思える今だからこそ、冒険ももう一度原点に立ち返って「社会性」を意識する必要があるんじゃないか?と思う。
ただ、そうは言っても冒険をするうえで一番大切なのは、いかに自分自身が充実して臨めるか、ということだ。矛盾していると思われるかもしれないが、ベースにあるのは「個人の情熱」であるのはいつの時代も変わらない真実である。

「凍える海」のような、昔の探検記を読んでみると、かつての探検隊がどのような目的で旅をしていたのか?では自分自身は何を求めていま旅をしているのか?ということを省みる機会を与えてくれるのだ。


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荻田泰永 北極冒険家
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