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イヌイットに狩られ、解体されたホッキョクグマの肉
北極で生きてきたイヌイットは、ホッキョクグマと共に生きてきた民族です。時にクマはイヌイットにとって貴重な資源であり、時に命を脅かされる脅威でもありました。
ホッキョクグマの毛皮は衣類(特にズボン)を作るために用いられます。肉は食べることもありますが、今ではあまり食べられることもなく、毛皮を取ると肉は犬にあげてしまったりします。
絶滅危惧種に指定されているホッキョクグマは、今では狩りをするのにも規制があります。カナダ北極圏であれば村ごとに年間に捕っていい頭数が決められていて、くじ引きで当たりを引いたイヌイットのみ狩ることができます。グリーンランドでは頭数制限はありませんが、狩りができるのはイヌイットの専業ハンターとして生きている者のみにしか権利は与えられません。
カナダ北極圏では、近年多くのスポーツハンターがやって来ます。スポーツハンターとは、趣味で野生動物の狩猟を行っている人たちで、北極に来るスポーツハンターの目当てはジャコウウシやホッキョクグマです。
前述のとおりにホッキョクグマの狩猟に関しては、現在厳しい規制があるわけですが、スポーツハンター達はどのようにホッキョクグマ狩りを行っているかといえば、抽選で当たりを引いたイヌイットからその権利を買い取ることで狩猟を行うのです。
そのシステムはすでに確立され、イヌイットの中にはスポーツハンターのガイドを専門に行っているチームもあります。
ちなみにその権利料、1〜2週間に及ぶガイド料、捕った毛皮の処理と輸送、それら一回のスポーツハンティングで数百万円の金が動き、イヌイットの元に現金が入ります。
スポーツハンティングが良い悪い、に関しては人によって意見は様々あると思います。
現在のイヌイットにとっては、あまり厳しい狩りに出るわけでもないのでホッキョクグマのズボンが生活必需品でもなくなっているので、毛皮の重要性は以前よりもありません。肉も食べるわけでもないので、だったら生活にとって最も必要である現金になった方がいいわけです。産業の無い北極において、補助金や少ない仕事で得られる現金以外の貴重な収入源になります。
イヌイットの文化が衰退してしまう、という見方もあるかもしれませんが、文化なんていうのは時代とともに変化するものです。外部の人間は「狩猟の文化が衰退してしまうのは悪である」と簡単に言ってしまいますが、本人たちにとって必要がなくなったものを守る余裕もなければ、意識もありません。
「文化」は保護されたり博物館に入るようになったらすでに終焉を迎えていると考えるべきでしょう。イヌイットに今から完全狩猟生活に戻れと言ってもそれは無理な話であって、我々日本人が日本の文化を守るために今から鎖国をして江戸時代の生活に戻れるわけもないでしょう。
守れるところは守る努力をしてしかるべきでしょうが、時代の自然な流れで衰退するものはあとは博物館で眺めて「こんな時代もあったんだね」と思うしかない、と私は思います。残念ですが。
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